「動悸で救急車を呼ぶ目安は?危険な症状と受診の判断基準【2026年版】」

はじめに

「急に心臓がドキドキして止まらない……」
「脈が飛ぶ感じがするけれど、救急車を呼ぶべき?」
「少し休めば治るのか、それとも病院へ行った方がいいのか分からない。」

このような経験をしたことはありませんか?

動悸は、多くの人が一度は経験する症状です。

運動をした後や緊張したとき、コーヒーを飲み過ぎたときなどにも起こるため、必ずしも病気とは限りません。

しかし一方で、命に関わる不整脈や心筋梗塞、大動脈解離などが原因となっている場合もあります。

私は約20年にわたり救急現場に携わる中で、「ただの動悸だと思っていたら重い心臓の病気だった」という傷病者を何度も経験してきました。

逆に、不安やストレス、一時的な脈の乱れによる動悸で、緊急性が低いケースも少なくありません。

重要なのは、

「危険な動悸」と「様子を見てもよい動悸」を見分けることです。

この記事では、

  • 動悸とは何か
  • 考えられる原因
  • 危険な動悸の特徴
  • 救急車を呼ぶ目安
  • 自宅で様子を見てもよいケース

について、一般の方にも分かりやすく解説します。


動悸とは?

動悸とは、

自分の心臓の鼓動を普段より強く感じたり、速く感じたり、脈が乱れているように感じたりする症状です。

通常、私たちは心臓が動いていても、その鼓動を意識することはほとんどありません。

しかし、

  • ドキドキする
  • バクバクする
  • 脈が飛ぶ
  • 胸がドンとする
  • 心臓が速く打つ

などの症状を自覚した状態を「動悸」と呼びます。

動悸そのものは病名ではなく、さまざまな病気や体の状態によって起こる症状です。


動悸の主な原因

動悸には、緊急性の低いものから命に関わるものまで、さまざまな原因があります。

生理的な動悸

誰にでも起こる可能性があります。

例えば、

  • 激しい運動
  • 緊張
  • ストレス
  • 驚いたとき
  • 興奮したとき

などでは、交感神経が働くため心拍数が増えます。

通常は原因がなくなれば自然に落ち着きます。


カフェイン・アルコール

コーヒーやエナジードリンクを大量に飲んだあと、

  • ドキドキする
  • 脈が速くなる

ことがあります。

また、

  • アルコール
  • 喫煙
  • 一部の市販薬

でも動悸を感じることがあります。


発熱・脱水

発熱すると体温が上がり、心拍数も増えます。

また、

  • 熱中症
  • 下痢
  • 嘔吐

などによる脱水でも心臓は速く拍動します。


貧血

酸素を運ぶ赤血球が不足すると、

不足した酸素を補うために心臓は一生懸命働きます。

その結果、

  • 動悸
  • 息切れ
  • 疲れやすい

などの症状が現れます。


不整脈

動悸の原因として特に重要なのが不整脈です。

不整脈とは、

心臓の電気信号が乱れ、脈が速くなったり、遅くなったり、不規則になったりする状態です。

代表的なものとして、

  • 心房細動
  • 発作性上室性頻拍(PSVT)
  • 心室頻拍
  • 心室細動

などがあります。

中には命に関わるものもあるため注意が必要です。


命に関わる病気が隠れていることもある

動悸は心臓そのものの病気だけではありません。

重大な病気の初期症状として現れることがあります。

心筋梗塞

心筋梗塞では、

  • 胸の痛み
  • 圧迫感

だけでなく、

  • 動悸
  • 冷や汗
  • 吐き気

だけが最初に現れる場合があります。

高齢者や糖尿病のある方では、胸痛が目立たないこともあるため注意が必要です。


大動脈解離

突然、

  • 背中

に激しい痛みが現れ、

ショック状態になると動悸を感じることがあります。

大動脈解離は一刻を争う病気であり、早期治療が必要です。


肺塞栓症

肺の血管が血の塊(血栓)で詰まる病気です。

特徴は、

  • 急な息切れ
  • 胸痛
  • 動悸
  • 呼吸困難

です。

長時間の移動や手術後などではリスクが高くなります。


心不全

心臓の働きが低下すると、

不足した血液を補うために心拍数が増えます。

その結果、

  • 動悸
  • 息切れ
  • 足のむくみ
  • 夜間の呼吸苦

などが現れることがあります。


ポイント

「動悸=心臓病」とは限りません。

一方で、「ただの動悸」と自己判断してしまうと、命に関わる病気を見逃すことがあります。

特に、

  • 初めて経験する強い動悸
  • 胸痛や息苦しさを伴う動悸
  • 意識が遠のくような動悸

は、速やかな受診や119番通報を検討することが重要です。

危険な動悸の見分け方

動悸があっても、すべてが救急車を必要とするわけではありません。

しかし、次のような症状を伴う場合は命に関わる病気が隠れている可能性があるため、早めに119番通報を検討してください。


119番を呼ぶべき危険な症状

強い胸の痛みを伴う

最も注意が必要なのが、

胸痛を伴う動悸です。

例えば、

  • 胸が締め付けられる
  • 胸を強く圧迫される
  • 胸が焼けるように痛い
  • 胸から肩・腕・あごへ痛みが広がる

このような症状は、

  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 大動脈解離

などが原因となっている可能性があります。

数分以上続く胸痛は救急車を呼ぶことを検討してください。


息苦しさや呼吸困難がある

動悸に加えて、

  • 息が苦しい
  • 呼吸が速い
  • 横になると苦しい
  • 少し動くだけで息切れする

場合は、

  • 心不全
  • 肺塞栓症
  • 重症不整脈

などが疑われます。

呼吸が苦しい状態は緊急性が高く、様子を見るべきではありません。


意識が遠のく・失神した

非常に危険なサインです。

  • 気を失った
  • 一瞬意識が飛んだ
  • 目の前が真っ白になった
  • 倒れそうになった

このような症状は、

命に関わる不整脈によって脳への血流が低下している可能性があります。

特に、

運動中や安静時に突然失神した場合は、すぐに119番通報してください。


脈が極端に速い、または遅い

通常、成人の安静時心拍数は1分間に60〜100回程度です。

次のような状態は注意が必要です。

  • 140〜150回以上の速い脈が続く
  • 40回未満でふらつきがある
  • 脈が極端に不規則

ただし、運動直後や発熱時は一時的に心拍数が増えることがあります。

重要なのは、

安静にしていても異常な脈が続くかどうかです。


冷や汗・顔色不良がある

動悸とともに、

  • 冷や汗
  • 顔色が真っ白
  • 手足が冷たい
  • 強い吐き気

がある場合は、

ショック状態や心筋梗塞などが疑われます。


持病がある人の動悸

次のような病気がある人は、軽い症状でも注意してください。

  • 心筋梗塞
  • 心不全
  • 心房細動
  • ペースメーカー植込み
  • 先天性心疾患

普段とは違う動悸があれば、早めに医療機関へ相談しましょう。


様子を見てもよいことが多いケース

以下のような場合は、比較的緊急性が低いことがあります。

ただし、症状が改善しない場合や繰り返す場合は医療機関を受診してください。

緊張やストレスが原因

例えば、

  • 人前で話した
  • 試験
  • 強い緊張
  • 不安

などが原因の場合は、

落ち着くことで改善することが多くあります。


運動直後

運動後は心拍数が増えるため、

しばらく休むことで元に戻れば心配ないことが多いでしょう。


カフェインの摂り過ぎ

  • コーヒー
  • エナジードリンク
  • 栄養ドリンク

を大量に飲んだ後に起こることがあります。

摂取を控え、安静にして改善するか様子をみます。


発熱中

発熱すると心拍数は自然に速くなります。

一般的に、体温が1℃上昇すると心拍数は1分間に約10回増えるとされています。

ただし、

  • 呼吸苦
  • 意識障害
  • 強い脱水

があれば救急受診が必要です。


動悸が起きたときの対処法

まずは落ち着いて行動しましょう。

安静にする

座る、または横になって休みます。

無理に歩き回らないようにしましょう。


脈を確認する

可能であれば、

  • 手首

で脈を触れ、

  • 規則正しいか
  • 速すぎないか

を確認します。

スマートウォッチなどで心拍数を確認できる場合は参考になりますが、異常を疑う症状がある場合は、機器の数値だけで判断せず受診を優先してください。


水分を補給する

脱水が疑われる場合は、

意識がはっきりしていて飲める状態であれば、水や経口補水液などで少しずつ水分を補給しましょう。

ただし、強い息苦しさや意識障害がある場合は無理に飲ませないでください。


症状を記録する

受診時には、

  • いつ始まったか
  • どのくらい続いたか
  • 心拍数
  • 一緒にあった症状

を伝えると診断の参考になります。


ここまでのポイント

  • 胸痛・息苦しさ・失神を伴う動悸は119番を検討する
  • 安静でも脈が極端に速い・遅い場合は注意
  • 心臓の持病がある人は早めの受診が重要
  • ストレスや運動による動悸は改善することも多い
  • 判断に迷う場合は自己判断せず医療機関へ相談する

病院ではどのような検査をする?

動悸で医療機関を受診すると、原因を調べるためにいくつかの検査が行われます。

症状や年齢、持病によって内容は異なりますが、代表的な検査は次のとおりです。


心電図(ECG)

最も基本となる検査です。

胸や手足に電極を付けて、心臓の電気的な活動を記録します。

心電図では、

  • 心房細動
  • 心室頻拍
  • 徐脈
  • 心筋梗塞
  • 虚血性変化

などを調べることができます。

ただし、受診時には症状が治まっている場合、不整脈が記録されないこともあります。


血液検査

動悸の原因となる病気がないか確認します。

例えば、

  • 貧血
  • 感染症
  • 脱水
  • 電解質異常
  • 甲状腺機能異常
  • 心筋障害

などを調べます。

胸痛を伴う場合には、心筋梗塞を疑って心筋逸脱酵素やトロポニンなどの検査が行われることもあります。


胸部X線検査

心臓の大きさや肺の状態を確認します。

心不全では肺に水がたまっている所見がみられることがあります。


心エコー検査

超音波を使って心臓の動きや弁の状態を調べます。

次のような病気の診断に役立ちます。

  • 心不全
  • 心筋症
  • 弁膜症
  • 心臓の収縮力低下

ホルター心電図

症状が毎日あるとは限らないため、24時間程度心電図を記録する検査を行うことがあります。

発作性の不整脈では、この検査で初めて原因が分かることも少なくありません。


よくある質問

Q. 動悸だけで救急車を呼んでもいいですか?

動悸だけでも、強い症状や危険なサインがあれば119番通報を検討してください。

特に、

  • 胸痛
  • 息苦しさ
  • 失神
  • 意識障害

を伴う場合は、命に関わる病気の可能性があります。

一方で、症状が軽く短時間で改善し、ほかに異常がなければ、落ち着いて医療機関を受診するという選択肢もあります。


Q. 心房細動は救急車を呼ぶ病気ですか?

心房細動そのものが必ず救急車を必要とするわけではありません。

しかし、

  • 初めて起きた
  • 胸痛がある
  • 息苦しい
  • 意識が遠のく

などの場合は、速やかに医療機関を受診してください。


Q. スマートウォッチの心拍数は信用できますか?

スマートウォッチは心拍数の目安として役立ちます。

ただし、

  • 装着状態
  • 動き
  • 機種

によって誤差が生じることがあります。

心拍数が正常でも危険な病気を否定できるわけではありません。

胸痛や息苦しさなどの症状がある場合は、数値にかかわらず受診を優先してください。


Q. 動悸が治まったら受診しなくても大丈夫ですか?

症状が改善しても、

  • 初めての動悸
  • 繰り返す動悸
  • 数分以上続いた動悸
  • 原因が分からない動悸

は、一度医療機関で相談することをおすすめします。

発作性の不整脈などは、症状がない時間帯でも検査が必要になる場合があります。


こんなときは迷わず119番

次のような場合は、様子を見るのではなく119番通報を検討してください。

  • 強い胸の痛みがある
  • 息苦しさや呼吸困難がある
  • 意識を失った、または失神しそうになった
  • 冷や汗や顔面蒼白を伴う
  • 安静にしても脈が非常に速い、または極端に遅い
  • 心臓の持病があり、普段と違う症状がある

これらは、心筋梗塞や重症不整脈、大動脈解離、肺塞栓症など、早急な治療が必要な病気の可能性があります。


まとめ

動悸は、ストレスや運動などの一時的な原因でも起こりますが、命に関わる病気のサインであることもあります。

大切なのは、「動悸だけ」と軽く考えず、一緒に現れている症状を確認することです。

覚えておきたいポイント

  • 動悸は症状であり、病名ではない
  • ストレスや運動だけでなく、不整脈や心筋梗塞などが原因のこともある
  • 胸痛・息苦しさ・失神を伴う動悸は119番を検討する
  • 安静でも脈が極端に速い、遅い、不規則な場合は早めに受診する
  • 症状が治まっても、初めての動悸や繰り返す動悸は医療機関で相談する

動悸の原因は自分では判断が難しい場合があります。

「少し様子を見よう」と迷っているうちに重症化する病気もあるため、危険な症状を伴う場合は早めに医療機関を受診し、必要に応じて119番通報をためらわないことが大切です。


監修・参考資料


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