「救急隊が見落としがちな“お腹の風邪”──ウイルス性胃腸炎の鑑別と現場対応」

🧠 国家試験・現場両対応の「強化相」4冊

• ①『救急救命士標準テキスト 改訂第11版』（へるす出版）
  国家試験対策の“基礎の基礎”。感染症の章ではウイルス性胃腸炎やノロウイルスの取り扱い、防護策が明確に解説されています。
  ➡︎ 「体系的な理解」「国家試験に出る文言」を押さえるなら必携の1冊。
• ②『これだけやれば大丈夫！救急救命士国家試験対策問題集2026』（UGUIDE編集部）
  知識を「点から線」に変える定番問題集。感染症・消化器系の過去問や類題が豊富で、国試レベルの問い方に慣れることができます。
  ➡︎ ノロ・ロタなどの出題パターン整理に最適。
• ③『微生物学・感染症学（系統看護学講座）』（医学書院）
  感染症の病原体を深く掘り下げたい人におすすめ。ウイルス構造・複製・消毒薬感受性など、現場応用に強い科学的知識が得られます。
  ➡︎ 「アルコールが効かない理由」を理論で理解できる。
• ④感染対策超入門: 成功の秘訣
  現場目線で感染防御を考える実践書。嘔吐物処理・防護具着脱など、即現場で役立つ方法を豊富に解説。
  ➡︎感染対策の成功の秘訣は、本質を正しく理解することを学べる。

6. 治療：ウイルスには薬が効かない！

ウイルス性胃腸炎に対しては特効薬が存在しません。
したがって、治療の中心は**対症療法（症状を和らげるケア）**です。

🔹主な治療方針

• 水分と電解質の補給（ORS・輸液）
• 食事は回復してから再開（おかゆやバナナなど消化の良いもの）
• 整腸剤（乳酸菌製剤）を使用する場合もある
• 制吐剤・止瀉薬は原則使わない（ウイルス排出を妨げるため）

7. 感染予防の基本と現場の注意点

🧼 ① 手洗いは「流水＋石けん」が最強

アルコールでは不十分なウイルスも多い。
石けんを使い、少なくとも30秒以上しっかり洗い流すことが重要です。

🧴 ② 嘔吐物・便の処理

• 使い捨て手袋・マスク・エプロンを着用
• 使い捨てペーパーで拭き取り
• 次亜塩素酸ナトリウム（0.1〜0.5％）で消毒
• 使用済みタオルや衣類は85℃以上で1分以上の熱水洗浄

🍽 ③ 食品衛生

• 二枚貝などは中心温度85〜90℃・90秒以上加熱
• 調理器具・まな板は熱湯または塩素系漂白剤で消毒

🚑 ④ 救急・医療現場での対応

• 嘔吐した患者を搬送する場合、防護具（PPE）着用
• 車内は搬送後すぐに換気・消毒
• ストレッチャー・器具類は使い捨てカバーまたは塩素系で処理
• 隊員間の交差汚染を防ぐ動線管理が重要

8. 鑑別すべき疾患（国家試験で狙われるポイント）

9. 国家試験対策まとめ

10. 救急現場の実際：見落としやすいポイント

ウイルス性胃腸炎の搬送事案は、「単なる下痢」と軽視されがちですが、
実際には脱水性ショックや意識障害を伴うケースもあります。

特に高齢者では、嘔吐による誤嚥や、便秘・腸閉塞との鑑別が重要です。
また、嘔吐物処理時の感染防護を怠ると、隊員自身が感染源となることも。

現場で最も大切なのは、

「感染を拡げない意識と行動」。
一人のミスが、チーム全体の感染リスクに直結します。

11. おわりに：知識が“予防の最前線”

ウイルス性胃腸炎は、どんな医療従事者でも避けて通れない感染症です。
しかし、正しい知識を持っていれば恐れる必要はありません。

• 石けんでの手洗い
• 十分な加熱
• 嘔吐物の正しい処理

たったこれだけの積み重ねが、感染拡大を防ぐ最大の防御となります。

「感染対策は地味だけど、最も確実な命の守り方」

国家試験を目指す皆さんも、現場で働く皆さんも、
“お腹の風邪”を軽く見ず、正しい理解と行動で、冬の感染シーズンを乗り切りましょう。