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救急救命士になりたい。
その気持ちだけで走り始めた僕は、最初から正しい勉強法を知っていたわけではない。

テキストをひたすらノートに書き写す。
それが「勉強」だと思っていた。

しかし、その学び方は国家試験には通用しない。
まして、現場で命を扱う僕たちには到底足りない。

そんな僕が“理解で戦う勉強法”にたどり着いた背景には、
人生を左右した 選抜試験 と、
研修所での経験、そして何より、人体そのものが持つ「物語性」があった。

最初のページから最後のページまで、僕が歩んできた物語を、
今この記事として残していきます。

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  • ■ 1. 勉強のスタートは「ノートを書くだけの勉強」だった

    救急救命士の国家試験に向けて勉強を始めたばかりの頃、
    僕の勉強法は典型的な“非効率な方法”だった。

    • テキストを丸写しにする
    • 覚えた“気になる”だけ
    • 頭の中は全く整理されていない
    • 理由が分からないまま言葉だけが積み重なる

    書けば覚えられると思い込んでいた。

    でも、それはただの作業だった。
    勉強をしているように見えて、理解は全く伴っていなかった。

    国家試験の問題は、ただ暗記していれば解けるほど甘くない。
    問い方が変われば手も足も出なくなる。

    僕はそれにすら気づかず、ノートを埋めることに安心していた。

    気づけば勉強時間ばかりが積み重なり、
    理解は少しも前に進んでいなかった。

    そんな僕の勉強観を変えたのは、ある試験だった。


    ■ 2. 人生で一度しか挑戦できない「選抜試験」が始まりだった

    消防署に入って数年後
    救急救命士養成課程に進むための “選抜試験” の案内が来た。

    条件を見て、血の気が引いた。

    年齢制限ギリギリ。今回が最初で最後のチャンス。

    もし落ちれば、もう二度と受験できない。
    一生、救急救命士にはなれない。

    さらに——
    ライバルは数十人もいる。
    腕も知識も体力もある優秀な隊員ばかり。

    選ばれるのは たった1人。

    この状況で僕は覚悟を決めた。

    「絶対に合格する。ここで終わるわけにはいかない。選抜されるには満点を取るしかない。」

    そう決めた瞬間、僕の勉強が変わり始めた。


    ■ 3. 書く勉強では勝てないと悟り、“理解で戦う勉強”へ切り替えた

    今までの「書いて覚える」勉強では、
    ライバルたちには絶対に勝てない。

    そもそも、ノートに写したところで、
    内容の理解はゼロなのだ。

    そこから僕は、勉強法をゼロから作り直した。

    • なぜこの症状が出るのか
    • 臓器の構造はどうなっているのか
    • 働きが壊れるとどんな影響が出るのか

    そういった“理由の理解”を第一にした。

    すると、今まで散らばっていた知識がつながり、
    確かな理解となって定着していくのを感じた。

    そして迎えた選抜試験本番。

    僕は 見事に合格 を勝ち取った。

    努力が報われる瞬間だった。


    ■ 4. 研修所で確信した「理屈で理解の勉強法は強い」

    選抜試験を通過したあと、僕は研修所に入った。

    全国から集まった300人の仲間たちは皆ハイレベルで、
    講義についていけるのか不安もあった。

    しかし、勉強法を理解型に切り替えていた僕は、
    次々と知識が結びついていくのを実感した。

    結果、成績は 300人中10位以内

    特別な才能があったわけではない。
    暗記が苦手な僕だからこそ、
    “構造と理屈”で覚える方法が最強だった。

    この時、僕の中で確信が生まれた。

    理屈で覚える勉強は、一生使える。


    ■ 5. 解剖 → 生理 → 病態で覚えると、人体が“物語”として見えてくる

    僕の勉強法の核は、
    解剖 → 生理 → 病態 の順で覚えること。

    これはただの順番ではなく、
    人体の中で実際に起きている“流れ”そのものだ。

    • どんな形で
    • どんな働きをして
    • どんな理由で壊れるのか

    この三段階がつながったとき、
    人体が一本の“物語”として理解できるようになる。

    そして、この“物語として覚える”という発想が
    勉強の質を根本から変えてくれる。


    ■ 6. ストーリー記憶──臓器を“登場人物”として覚えると忘れない

    ここからが今回の新しいポイント。

    僕はあるとき気づいた。

    人体は、物語として覚えると忘れにくい。

    脳科学的にも、人間は

    • 因果関係
    • 登場人物
    • 起承転結
      のある情報を強く記憶する。

    つまり、臓器やホルモンを“登場人物”にして
    病態を“事件”として覚えると、
    忘れにくいどころか、むしろ自然に思い出せる。


    ▼ ● 例:腎臓をストーリーにすると…

    腎臓は“工場”だ。
    血液という材料を受け取り、
    ゴミを仕分けし、
    必要なものは再吸収し、
    残りは尿にして出荷する。

    ところが工場のフィルター(糸球体)が詰まると、
    ゴミが溜まり、
    電解質が狂い、
    浮腫が起こる。

    これはもう完全に“事件”の流れだ。

    丸暗記ではなく、物語として理解できる。


    ストーリー記憶の効果

    • 忘れにくい
    • 状況が変わっても応用できる
    • 病態が自然につながる
    • 現場で説明できる
    • 国家試験の推論問題に強くなる

    つまり、
    理解型勉強法 × ストーリー記憶
    この組み合わせは最強だ。

    試験でも現場でも揺るがない“軸”になる。


    僕が後輩に伝えている言葉

    「臓器の気持ちになれ」
    「体の中で起きているドラマを想像しろ」

    こう言うと、
    難しい病態が一気に理解に変わる。

    そしてこの理解は、
    国家試験だけでなく、
    救急現場の“判断力”という武器に変わる。

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      ■ 7. ストーリーで覚えた知識は、現場で“瞬間的に使える武器”になる

      国家試験を突破し、救急現場に出るようになると、
      僕はある瞬間に気づくようになった。

      「あ、ここでストーリー記憶が生きる。」

      救急現場では教科書どおりの症状は出ないし、
      患者は皆、違う背景・違う生活・違う病態を持つ。

      そんな中で強いのは、
      単語を覚えた人ではなく、“流れ”を理解している人。

      例えば呼吸苦。

      ぜんそくか、心不全か、肺炎か、COPDか、
      現場では誰も教えてくれない。

      でも、
      肺という“舞台”の中で
      何が起きているかを物語のように理解していれば、
      情報が少ない現場でも推測ができる。

      「この音、この症状、この背景…
       体の中ではこういう流れが起きているな。」

      理解型・ストーリー型の勉強をしていると、
      まるで映像のように病態が頭に浮かぶ。

      これは丸暗記の勉強では絶対に得られない感覚だ。


      ■ 8. 「覚えた知識」ではなく「理解した知識」が仲間を救う

      現場では自分だけでなく、
      後輩や隊員の判断も支える必要がある。

      そんなとき、
      ただ「それは違うよ」「こうらしいよ」と答えるだけでは弱い。

      後輩が最も力をつけるのは、
      理由を説明してもらったとき”。

      後輩「この症状、何が原因なんですか?」
      僕 「心臓はこういう構造で、こう動いて、今これが壊れてるから…」

      こう説明していくと、後輩ははっきり言う。

      「なるほど…!そういう流れなんですね!」

      このときの「理解できた」という瞬間は強烈で、
      その後の判断や知識の定着が全く違う。

      理由で覚えた知識は、
      後輩の脳にもストーリーとして刻み込まれる。

      そして、
      その理解が現場で誰かの命を救うことだってある。

      だから僕は、理由を説明できる人間でありたいし、
      後輩にもそうなってほしいと強く思っている。


      ■ 9. 現場で求められる力は“正解を知っている人”ではない

      国家試験は「正解」を選ぶ試験だ。
      だけど現場は違う。

      正解が一つとは限らない。
      むしろ、状況に応じて“最善”が変わる。

      だから現場で求められるのは——

      正解を覚えている人ではなく、
      “理屈で考えられる人”。

      理屈で考えるためには、
      理解の土台が必要だ。

      解剖→生理→病態
      この流れを押さえているだけで、
      未知の症状にも柔軟に対応できる。

      これは国家試験を突破しただけの人にはできない。
      “理解で勉強した人間”だけが持つ力だ。


      ■ 10. 「理解で学べば一生戦える」──僕がたどり着いた答え

      国家試験はゴールではない。
      救急救命士のスタートラインだ。

      その先には、
      毎日の出動、
      まったく予測できない状況、
      患者と家族の人生、
      切迫した現場の判断が待っている。

      だからこそ、僕は断言できる。

      理解で学んだ知識は一生モノだ。

      • 推理できる
      • 応用できる
      • 説明できる
      • 自信になる
      • 仲間を導ける
      • 患者の命を救う判断につながる

      暗記型の勉強では、
      この“強さ”は絶対に育たない。

      理解型の勉強こそが、
      救急救命士が最も磨くべき力なのだ。


      ■ 11. 最後に──選抜試験の僕に言ってやりたい言葉

      あの時、年齢制限ギリギリで挑んだ選抜試験。
      何十人の中から1人だけ選ばれる試験。

      一度きりのチャンス。
      落ちたら次はない。

      あの日の僕は必死だった。

      でも今ならあの頃の自分に、
      こう言ってやりたい。

      「理屈で覚えた知識は、一生お前を裏切らない」
      「物語として覚えた知識は、現場でお前を助けてくれる」
      「今日の努力は必ず誰かの“生きる”につながる」

      そしてもうひとつ。

      「理屈で理解した知識は、命を救う力になる」

      これが、僕がたどり着いた勉強法のすべてだ。

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By TETSU十郎

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