救急隊が本音で教える 119番通報で「本当に」伝えてほしい5つのこと

― その一言が、救急車の到着と命の行方を左右します ―

119番通報は、人生の中でそう何度も経験するものではありません。
突然、目の前で人が倒れた。家族が苦しみ始めた。事故に遭った。
そんな非常事態で冷静でいられる人は、ほとんどいないでしょう。

「何を言えばいいのか分からない」
「ちゃんと伝えられなかったらどうしよう」
「こんなことで呼んでいいのだろうか」

多くの方が、そうした不安を抱えながら119番に電話をかけています。

この記事では、**救急隊の立場から見て「これは本当に助かる」「これだけは伝えてほしい」**というポイントを、できる限り分かりやすく解説します。
専門知識は一切不要です。
ただし、知っているか知らないかで、結果が変わることは確かにあります。


119番通報は「救急活動のスタート地点」

まず知っておいてほしいのは、119番通報は単なる「救急車の呼び出し」ではない、ということです。

あなたが電話で伝えた内容は、次のような判断に直結します。

  • 救急車か、消防車か
  • 何人の隊員で向かうか
  • AED、酸素、気道管理器具など、どんな資器材を準備するか
  • 病院へ事前連絡が必要か
  • 医師の指示が必要な事案か

つまり、通報内容=現場対応の設計図なのです。

この設計図が正確であるほど、救急隊は迅速かつ適切に行動できます。

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何よりも最優先で「場所」を伝えてください

救急隊が最も困るのは「場所が特定できないこと」

救急の現場で、実は最も時間を奪われるのが「場所の特定」です。

どれほど重篤な症状でも、
救急車は場所が分からなければ到着できません。

そのため、119番通報では必ず最初に「場所」を確認されます。

伝えてほしい情報の順番

理想的なのは、次のような順です。

  • 市町村名
  • 住所(番地まで)
  • 建物名・施設名
  • 集合住宅の場合は部屋番号

例:
「〇〇市〇〇町1丁目2番3号、〇〇マンションの302号室です」

住所が分からない場合はどうすればいい?

住所が分からなくても、慌てる必要はありません。

  • 近くの目印(コンビニ、学校、スーパー)
  • 交差点名
  • 国道・県道・高速道路
  • 山、川、海などの地形
  • スマートフォンの現在地表示

分からない場合は、正直に「分かりません」と伝えてください。
無理に曖昧な住所を言うより、はるかに助けになります。


「何が起きたのか」をそのまま教えてください

次に重要なのが、**何が起きたか(状況)**です。

ここで必要なのは、医療的な判断ではありません。
見たまま、起きたままを伝えることが大切です。

良い伝え方の例

  • 「父が急に倒れて動きません」
  • 「胸を押さえて苦しいと言っています」
  • 「交通事故で、バイクの人が倒れています」
  • 「階段から落ちて動けません」

専門用語は不要です。

避けてほしい表現

  • 「多分大丈夫だと思います」
  • 「よく分からないけど」
  • 「前にも同じことがありました」

救急隊が必要としているのは、
今この瞬間の状態です。


「意識があるかどうか」は極めて重要です

救急活動において、意識の有無は非常に大きな判断材料になります。

意識の有無の簡単な判断方法

難しく考える必要はありません。

  • 名前を呼んで返事がある → 意識あり
  • 声は出ないが目を開ける → 意識あり
  • うめき声のみ → 意識障害あり
  • まったく反応しない → 意識なし

分からない場合は、

「呼んでも返事がありません」

この一言で十分です。

救急車を呼ぶ判断に迷う背景には、

「適正利用」への誤解や、

「様子見して後悔した事例」があります。

▶ 救急車の適正利用と「迷ったら119番通報」

▶ 救急車を呼んでいいのに“呼ばなかった人”が後悔した実例


呼吸の様子を伝えてください

意識と並んで重要なのが、呼吸の有無・状態です。

呼吸確認のポイント

  • 胸やお腹が上下しているか
  • 息の音が聞こえるか
  • 呼吸が極端に速い、遅い
  • 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」していないか

正常かどうかは判断できなくて構いません。

「息はしているようです」
「呼吸が浅くて苦しそうです」

この情報だけで、救急隊の準備内容は大きく変わります。


電話は切らず、指示があれば従ってください

119番通報中、通信指令員から次のような指示が出ることがあります。

  • 「そのまま電話をつないでください」
  • 「横向きに寝かせてください」
  • 「胸を押してください」
  • 「大きな声で呼びかけてください」

これは口頭による応急処置指導です。

救急隊が到着するまでの間、
あなたの行動が命をつなぐ可能性があります。


「自分には何もできない」と思わなくていい

多くの方が、こう言います。

「何もできなくてすみませんでした」

しかし、救急隊の立場から言わせてもらうと、

  • 正確に通報した
  • 指示を聞いて行動した
  • 落ち着いて対応した

これだけで、十分すぎるほどの協力です。


よくある誤解と注意点

軽そうだから呼ばなくていい

→ 判断は救急隊がします

自分で病院に連れて行く

→ 移動中に急変するケースがあります

通報後に電話を切る

→ 追加情報が伝えられません


救急車を呼ぶことは「迷惑」ではありません

「こんなことで救急車を呼んでいいのか」

この迷いが、通報を遅らせてしまうことがあります。

結果的に救急車が不要であったとしても、
通報したこと自体が間違いだったということはありません。


まとめ|119番通報で覚えておいてほしい5つのこと

最後に、もう一度まとめます。

  1. 場所を正確に伝える
  2. 何が起きたかをそのまま伝える
  3. 意識の有無を伝える
  4. 呼吸の様子を伝える
  5. 電話を切らず、指示に従う

この5つを意識するだけで、
あなたの通報は「非常に質の高い通報」になります。

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参考・参照URL

本記事は、以下の公的機関・信頼性の高い情報を参考にしつつ、救急現場の一般的な知見をもとに構成しています。

総務省消防庁

救急・119番通報に関する公式情報

総務省消防庁

119番通報の適正利用・通報時のポイント

東京消防庁

119番通報のかけ方・救急要請時の注意点

  • https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kyuuadv/kysoudan.htm

日本赤十字社

応急手当・救命処置の基礎

  • https://www.jrc.or.jp/activity/saigai/firstaid/

日本救急医学会

救急医療に関する一般向け情報

※本記事は、消防庁・東京消防庁・日本赤十字社等の公開情報および、一般的な救急対応の考え方を参考に作成しています。実際の通報時は、通信指令員の指示に従って行動してください。

もっと医療情報を知りたい方はこちら👉呼吸苦(息苦しさ)の原因は4つだけ|呼吸器・心臓・血液・自律神経を徹底解説する総合ガイド(救急 × 国家試験 × 一般) — TETSU十郎/救急救命士/防災士

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救急車を呼ぶ判断に迷う背景には、

「適正利用」への誤解や、

「様子見して後悔した事例」があります。

▶ 救急車の適正利用と「迷ったら119番通報」

▶ 救急車を呼んでいいのに“呼ばなかった人”が後悔した実例