こんにちは!今回は救急救命士国家試験対策として、現場でもよく出会う「CO₂ナルコーシス(高CO₂血症による意識障害)」について解説していきます。
「酸素投与してるのに、なんで意識が悪くなるの…?」
そんな疑問を持ったこと、ありませんか?
◆ CO₂ナルコーシスってなに?
まず、「ナルコーシス」とは“昏睡”や“傾眠状態”を意味する言葉です。そして「CO₂ナルコーシス」は、体内に二酸化炭素(CO₂)がたまりすぎることによって、意識障害などの中枢神経症状が出る状態を指します。
CO₂は血液脳関門を通過しやすく、脳に入るとpHを酸性に傾け、神経系の活動を抑えてしまうんです。その結果として、
- 頭痛(初期症状)
- 意識障害、傾眠
- 昏睡、痙攣
…といった症状が進行していきます。
◆ どうしてCO₂がたまるの?
CO₂ナルコーシスの原因はいくつかありますが、特に重要なのが慢性呼吸不全の傷病者への酸素投与。
通常、私たちの呼吸は「CO₂が増えたら呼吸が促進される」ようにコントロールされています(これをCO₂ドライブと言います)。
でも、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などで長期間高CO₂状態に慣れてしまった傷病者では、CO₂ドライブが効かなくなっています。代わりに、「O₂が減ったら呼吸する」という低酸素ドライブに頼っているのです。
この状態で高濃度の酸素を投与してしまうと──
→「酸素足りてるじゃん」と体が勘違い
→ 呼吸が止まりがちに
→ CO₂がさらに蓄積
→ CO₂ナルコーシス発症
…というメカニズムです。
◆ 症状はどんな感じ?
CO₂ナルコーシスの症状は、CO₂の上昇度合いや速さに左右されます。
初期症状:
- 頭痛(脳の血管拡張による)
- めまい、倦怠感
- 眠気、不安感
進行すると:
- 意識障害(混乱→昏睡)
- 呼吸数の減少、呼吸が浅くなる
- 瞳孔縮小、反射低下
- 血圧や心拍の変動(交感神経の抑制)
- 最終的には呼吸停止、循環不全へ…
◆ どうやって診断するの?
臨床的に意識障害があり、「CO₂ナルコーシスが疑われる」ときは、**動脈血ガス分析(ABG)**を行います。※救急救命士の処置に該当しませんが、病院側の治療方法を知っておくとよいと思います。
- PaCO₂↑(高二酸化炭素血症)
- pH↓(アシドーシス)
- HCO₃⁻は慢性なら↑、急性なら変化少ない
◆ 治療と対応
ここ、試験にも出やすいポイントです!
- 酸素投与は慎重に
→ COPDなどの患者には低濃度・低流量で酸素を開始! - 人工呼吸器の使用
→ 酸素投与でCO₂が下がらない、意識が低下する場合は、換気補助が必要 - 原因疾患の治療
→ 呼吸不全の原因(COPD、肺水腫など)にアプローチ
◆ まとめ
- CO₂ナルコーシスは、高CO₂血症によって脳が抑制される病態
- 特に慢性呼吸不全の傷病者に対する酸素投与で起こりやすい
- 低酸素ドライブを理解して、酸素投与は慎重に!
- 試験でも「呼吸不全+酸素投与+意識障害」のパターンは要注意!