はじめに
救急救命士は、救急現場で重篤な傷病者に対して高度な救急処置を行う専門職です。病院に到着する前の医療(プレホスピタルケア)を担い、患者の命を守る重要な役割を果たします。
日本では、救急車の出動件数が年々増加しており、迅速で適切な救急処置が求められています。救急救命士は、その最前線で活躍する医療従事者として、心停止や重度外傷、急性疾患など多様な症例に対応しています。
救急救命士の役割
救急救命士の役割は、主に以下の3つに分類されます。
① 基本的な救命処置(BLS:Basic Life Support)
救急救命士は、以下の基本的な処置を実施します。
- 気道確保(気道異物除去、エアウェイ挿入など)
- 人工呼吸(バッグマスク換気を含む)
- 胸骨圧迫(心肺蘇生)
- 酸素投与
- AED(自動体外式除細動器)の使用
② 特定行為(ALS:Advanced Life Support)
一定の研修と実務経験を経た救急救命士は、医師の指示のもとで以下の高度な医療行為を実施できます。
- 静脈路確保・輸液(脱水やショック状態の患者に対する輸液)
- 薬剤投与(アドレナリン、ブドウ糖、ニトログリセリンなど)
- 気管挿管(高度な気道管理を必要とする患者への対応)
- 心電図解析(12誘導心電図の記録・送信)
- 除細動(手動式除細動器を用いた処置)
これらの処置を適切に実施することで、病院到着前の救命率向上を図ります。
③ 患者評価・病院選定
救急救命士は、患者の状態を迅速に評価し、適切な病院へ搬送する判断を行います。特に脳卒中や心筋梗塞、外傷などの重篤な疾患では、専門的な治療が可能な病院を選定することが重要です。
救急救命士になるには
① 資格取得の流れ
救急救命士になるためには、以下のステップを踏む必要があります。
- 養成校で学ぶ
- 専門学校、大学、短大 などの 救急救命士養成課程(2~4年)を修了
- 国家試験に合格
- 毎年3月に実施される 救急救命士国家試験 に合格
- 救急隊へ就職
- 消防署、民間の救急搬送会社 などで勤務
- 実務経験を積む
- 特定行為を実施するためには 実務経験と追加研修 が必要
また、救急救命士資格を取得後も 継続的な研修 が求められ、最新の医療技術や知識を習得することが不可欠です。
救急救命士の活躍の場
① 消防署(救急隊)
約9割の救急救命士が 消防署の救急隊 に所属し、救急車での出動 を担当しています。全国各地の消防本部に配属され、24時間体制での救急対応を行います。
② 医療機関(病院・ドクターカー)
一部の救急救命士は、病院の救急外来やドクターカーのスタッフ として活躍しています。特にドクターカーは、医師と連携して現場での高度な医療処置を実施 できるため、より専門的な対応が可能です。
③ 海外・特殊環境
- 海外の医療機関(国際救急チーム、医療派遣など)
- 企業の安全管理部門(工場、建設現場などでの医療対応)
- イベント医療スタッフ(スポーツ大会やコンサートなど)
まとめ
救急救命士は 「病院前の医療の最前線」 で活躍する専門職です。国家資格を取得し、日々の訓練を積むことで、救急現場での適切な処置を行い、多くの命を救う役割を担っています。
また、救急救命士の活躍の場は消防署だけでなく、病院や特殊な環境にも広がっており、さらなるスキルアップやキャリア形成の可能性もあります。
救急救命士を目指す方にとって、この情報が役立てば幸いです。