高齢の家族が自宅で転倒したとき、
「救急車を呼んだほうがいい?」
「本人は大丈夫と言っているけど、様子を見てもいい?」
「すぐに起こして歩かせても大丈夫?」
と迷うことがあります。
高齢者の転倒は珍しいことではありません。
しかし、若い人なら軽い打撲で済むような転倒でも、高齢者では骨折などの大きなケガにつながることがあります。
さらに注意したいのが、見た目だけでは重症度を判断できないことがある点です。
転倒直後は普通に会話できていても、頭を打ったことで時間が経ってから症状が現れる場合があります。
また、安静にしているとそれほど痛がっていなくても、立とうとしたときに股関節周辺へ強い痛みが出て、骨折が分かることもあります。
そして、高齢者の転倒では、もう一つ重要な視点があります。
それが、
「転んだから具合が悪くなった」のか
それとも、
「具合が悪くなったから転んだ」のか
という違いです。
脳卒中や失神などが先に起こり、その結果として転倒している可能性もあります。
そのため、高齢者が転倒したときは「どこをケガしたか」だけで判断するのではなく、意識・呼吸・出血・痛み・手足の動き・転倒前の症状などを確認することが大切です。
この記事では、高齢者が転倒したときに、
- どのような場合に119番したほうがよいのか
- 転倒直後に何を確認すればよいのか
- すぐに起こしてよいのか
- 頭を打った場合は何に注意するのか
- 骨折を疑うポイント
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合の注意点
- 転倒の原因として注意したい病気
- 救急車を呼ばない場合の受診目安
- 119番したときに伝えること
- 救急車が到着するまでにできること
について分かりやすく解説します。
高齢者が転倒したら救急車を呼ぶべき?
結論からいうと、高齢者が転倒したからといって、すべてのケースで救急車が必要になるわけではありません。
一方で、
「転んだだけだから大丈夫」
と安易に判断するのも危険です。
救急車が必要か判断するときは、転倒したという事実だけではなく、転倒後にどのような症状があるのかを見ることが重要です。
特に次のような場合は119番を検討してください。
119番を考える8つの危険サイン
① 意識がおかしい・一時的に意識を失った
呼びかけても反応しない、会話がかみ合わない、いつもより明らかにぼんやりしているなどの場合は注意が必要です。
また、一時的でも意識を失っていた場合は、転倒による頭部外傷だけでなく、失神などが先に起こって転倒した可能性も考える必要があります。
② 普段どおりの呼吸ではない
反応がなく、普段どおりの呼吸をしていない、または呼吸しているか判断できない場合は、すぐに119番してください。
この場合は、骨折しているか、どこを打ったかを詳しく調べることよりも、生命を守る対応が最優先です。
通信指令員の指示に従い、必要であれば胸骨圧迫などの心肺蘇生を開始します。
③ 頭を打ったあとに様子がおかしい
頭を打ったあとに、
- 意識がおかしい
- 強い頭痛がある
- 繰り返し吐いている
- けいれんしている
- 時間とともに反応が悪くなっている
などがあれば注意が必要です。
頭から出血していなくても、頭蓋骨の内側で出血している可能性があります。
④ ろれつが回らない・片側の手足に力が入らない
突然、
- ろれつが回らなくなった
- 言葉が出てこない
- 顔の左右差がある
- 片方の腕や脚に力が入らない
などの症状が出ている場合は、脳卒中を疑う重要なサインです。
「転倒したから足が動かしにくくなった」とは限りません。
脳卒中によって足が動かしにくくなり、その結果として転倒した可能性もあります。
⑤ 転倒後に立てない・歩けない
転倒する前まで歩けていた人が、転倒後に強い痛みで立てなくなった場合は注意してください。
特に、
- 股関節が痛い
- 足の付け根が痛い
- 太ももの上のほうが痛い
- 足に体重をかけられない
といった場合は、大腿骨近位部骨折などの可能性があります。
「歩けるか試してみよう」と無理に立たせる必要はありません。
⑥ 手足が明らかに変形している・強い痛みがある
腕や脚が通常とは違う方向に曲がっているなど、明らかな変形がある場合は骨折を疑います。
変形した手足を家庭で元の位置へ戻そうとしてはいけません。
できるだけ動かさずに対応します。
⑦ 大量に出血している
転倒によって大きな傷ができ、出血している場合は、清潔なガーゼやタオルなどを傷口に当てて圧迫します。
圧迫しても出血が止まらない、出血量が多い、顔色が悪い、冷や汗をかいている、意識がおかしいなどの場合は119番を検討してください。
⑧ 胸痛・強い息苦しさなどがある
転倒前後に、
- 胸が痛い
- 強く息苦しい
- 動悸がする
- 冷や汗が出る
- 急に気分が悪くなった
などの症状がある場合は、単純な転倒ではない可能性があります。
何らかの病気によって身体の状態に異常が起こり、その結果として転倒した可能性も考える必要があります。
高齢者が転倒した直後に確認する5つのポイント
家族が床に倒れていると、すぐに身体を起こしたくなるかもしれません。
しかし、転倒直後はまず状態を確認してから動かすことが大切です。
次の5つを順番に確認しましょう。
① 意識
まず、
「大丈夫ですか?」
などと声をかけ、普段どおり反応するか確認します。
- 呼びかけても反応しない
- 目を開けない
- 会話がかみ合わない
- 自分の名前や場所が分からない
- いつもより明らかにぼんやりしている
といった変化があれば注意してください。
家族だからこそ分かる「いつもと違う」という変化も重要です。
② 呼吸
呼びかけに反応がなければ、普段どおりの呼吸をしているか確認します。
普段どおりの呼吸がない、または呼吸しているか判断できない場合は、すぐに119番してください。
③ 出血
頭や顔、腕、脚などから大量に出血していないか確認します。
出血している場所が分かる場合は、清潔なガーゼやタオルなどを当て、上から圧迫します。
④ 痛む場所
意識がしっかりしている場合は、
「どこが痛い?」
と確認します。
特に、
- 頭
- 首
- 背中
- 腰
- 股関節
- 太ももの付け根
- 肩
- 手首
などの痛みに注意してください。
痛みを確認するために、無理に手足を動かす必要はありません。
⑤ 手足の動きや普段との違い
片側だけ手足が動かしにくい、顔に左右差がある、ろれつが回らないといった症状がないか確認します。
一方、股関節などに強い痛みがある場合は、立てるか確認するために歩かせる必要はありません。
「転倒前には歩けていたのに、転倒後は立てない」
という変化そのものが重要な情報です。
強い痛みがあるときは無理に起こさない
転倒した家族を見ると、
「とりあえず椅子に座らせよう」
「ベッドまで連れていこう」
と考えるかもしれません。
しかし、
- 首が強く痛い
- 背中や腰が強く痛い
- 股関節や足の付け根が痛い
- 手足が明らかに変形している
- 痛くて立てない
といった場合は、無理に移動させないようにします。
骨折しているかどうかを家庭で確認するために歩かせる必要はありません。
本人が楽な姿勢をとれるのであれば、そのまま安静にして対応します。
高齢者の転倒で特に注意したい「頭部打撲」
高齢者の転倒で見逃したくないのが頭を打っているケースです。
頭から出血していなかったり、本人が普通に話していたりすると、
「頭は大丈夫そうだ」
と思うかもしれません。
しかし、頭部外傷では外から見える傷だけで重症度を判断することはできません。
頭蓋骨の内側で出血することもあります。
また、一人で転倒した場合などは、本人自身が頭を打ったことを覚えていない可能性もあります。
頭を打ったか分からない場合もある
例えば、
「大きな音がしたので部屋へ行ったら、床に倒れていた」
というケースです。
本人に、
「頭を打った?」
と聞いて、
「打っていない」
と言われたとしても、それだけで頭部打撲を完全には否定できません。
転倒時の記憶が曖昧だったり、一時的に意識を失っていたりする可能性もあるからです。
転倒する瞬間を誰も見ていない場合は、
- 頭に傷や腫れがないか
- 頭から出血していないか
- 頭痛がないか
- 吐き気や嘔吐がないか
- 転倒した状況を覚えているか
- 受け答えが普段と変わらないか
などを確認します。
頭を打ったあとに注意する6つの変化
① 意識状態の変化
いつもより眠そう、会話がおかしい、呼びかけへの反応が悪くなったなどの変化に注意します。
② 強い頭痛
頭を打ったあとに強い頭痛がある、または時間とともに頭痛が強くなる場合は注意が必要です。
③ 繰り返す嘔吐
頭部外傷後に繰り返し吐いている場合も慎重な対応が必要です。
④ けいれん
頭を打ったあとにけいれんが起こった場合は119番を検討してください。
⑤ ろれつや手足の異常
ろれつが回らない、片側の手足に力が入らないなどの神経症状がある場合は119番を検討してください。
⑥ 時間とともに悪化している
頭部外傷では、時間経過による変化も重要です。
「転倒直後は普通だった」
という理由だけで安心せず、
- 頭痛が強くなった
- 吐き始めた
- 反応が悪くなった
- 歩き方がおかしくなった
- 会話がおかしくなった
などの変化がないか注意してください。
高齢者の転倒で注意したい4つの骨折
高齢者では骨粗しょう症などによって骨が弱くなっていることがあり、比較的小さな転倒でも骨折することがあります。
特に注意したいのが次の4つです。
① 大腿骨近位部骨折
② 橈骨遠位端骨折
③ 上腕骨近位部骨折
④ 脊椎椎体骨折
① 大腿骨近位部骨折
高齢者の転倒で特に注意したい骨折の一つです。
股関節に近い大腿骨を骨折し、
- 股関節や足の付け根が痛い
- 足を動かすと強く痛む
- 足に体重をかけられない
- 転倒前は歩けたのに立てない・歩けない
といった症状がみられることがあります。
大切なのは、転倒前と比較してどう変わったかです。
また、
「少し足が動くから骨折していない」
とは判断できません。
自力で動けず、安全に医療機関まで移動することが難しい場合などは119番を検討してください。
② 橈骨遠位端骨折
転倒したときに手をつくことで起こることがある、手首付近の骨折です。
- 手首が強く痛む
- 腫れている
- 動かすと強く痛む
- 明らかに変形している
などの場合は骨折を疑います。
変形していても、自分で元へ戻そうとしないでください。
③ 上腕骨近位部骨折
肩から転倒した場合などに起こることがあります。
- 肩が強く痛い
- 腕を上げられない
- 肩周辺が腫れている
- 腕を動かすと強く痛む
などがみられる場合は、無理に腕を動かさず医療機関への受診を検討してください。
④ 脊椎椎体骨折
「ただ尻もちをついただけ」
という場合でも、骨粗しょう症などで骨が弱くなっている高齢者では背骨を骨折することがあります。
- 背中や腰が痛い
- 起き上がると痛い
- 寝返りで痛みが強くなる
- 立ったり座ったりすると痛い
などの場合は注意してください。
さらに、
- 足が動かしにくい
- 足の感覚がおかしい
- 強いしびれがある
などの神経症状がある場合は、より慎重な対応が必要です。
頭を打ったら「血液をサラサラにする薬」を確認する
高齢者が頭を打った場合は、普段飲んでいる薬も重要な情報になります。
心房細動や脳梗塞などの治療で、
- 抗凝固薬
- 抗血小板薬
などを服用している人がいます。
一般的に「血液をサラサラにする薬」と呼ばれることがあります。
代表的な抗凝固薬には、
- ワルファリン
- アピキサバン
- リバーロキサバン
- エドキサバン
- ダビガトラン
などがあります。
抗血小板薬には、
- アスピリン
- クロピドグレル
などがあります。
これらの薬を服用している人が頭を打った場合は、頭部外傷後の出血により注意が必要です。
ただし、
「血液をサラサラにする薬を飲んでいる=必ず救急車」
という意味ではありません。
意識状態、頭を打った状況、現在の症状などによって緊急度は異なります。
一方で、症状が目立たなくても、頭を打ったことと服用薬について医療機関や救急相談へ伝え、受診の必要性を相談することが大切です。
薬の名前が分からなければ、お薬手帳や普段飲んでいる薬を準備しておきましょう。
高齢者の転倒では「なぜ転んだのか」も重要
ここは、高齢者の転倒を考えるうえで非常に重要なポイントです。
転倒した人を見ると、
「転んでケガをした」
と考えがちです。
しかし実際には、
病気や身体の異常が起きる
↓
転倒する
↓
転倒によるケガをする
という順番の可能性もあります。
つまり、
「転んだから具合が悪くなったのか」
それとも、
「具合が悪くなったから転んだのか」
という視点が必要です。
本人や目撃者がいる場合は、
- 何につまずいたのか
- 転倒する瞬間を誰か見ていたか
- 一時的に意識を失っていなかったか
- 転倒前に胸痛や動悸、息苦しさ、めまいなどがなかったか
- 本人は転倒した理由を覚えているか
などを確認してください。
原因が分からなければ、
「転倒した原因は分からない」
とそのまま救急隊や医療機関へ伝えて構いません。
転倒の原因として注意したい病気
転倒の背景として特に見逃したくないのが、
① 失神
② 脳卒中
③ 胸痛・動悸・息苦しさなどを伴う状態
です。
もちろん、転倒の原因はこれだけではありません。
家庭で病名を判断する必要もありません。
大切なのは、転倒した原因に病気が隠れている可能性を考えることです。
① 失神して転倒した可能性
失神とは、一時的に脳への血流が低下することで意識を失い、通常は短時間で自然に回復する状態です。
失神すると身体を支えられなくなり、そのまま倒れることがあります。
このとき、
「転んで頭を打ったから意識を失った」
のか、
「先に意識を失ったから転んだ」
のか分からない場合があります。
特に、
- なぜ転倒したのか本人が覚えていない
- 周囲につまずく物がない
- 突然崩れるように倒れた
- 一時的に反応がなかった
- 転倒前に動悸・胸痛・気分不良などがあった
といった場合は、単なるつまずきとは分けて考える必要があります。
② 脳卒中によって転倒した可能性
脳卒中によって突然片方の足に力が入らなくなれば、その結果として転倒することがあります。
転倒後に、
① 顔の左右差がある
② 片方の腕や脚に力が入らない
③ ろれつが回らない・言葉が出ない
④ 症状が突然起こった
などの場合は注意してください。
肩や腕を転倒で負傷している場合は、麻痺を確認するために無理に腕を上げさせる必要はありません。
脳卒中が疑われる症状が突然起きている場合は119番してください。
また、最後に普段どおりだった時刻が分かれば覚えておき、救急隊へ伝えます。
③ 胸痛・動悸・息苦しさなどを伴う転倒
転倒する前に、
- 胸が痛かった
- 動悸がした
- 強く息苦しかった
- 冷や汗が出た
- 急に気分が悪くなった
などの症状があった場合も重要です。
特に、
- 強い胸痛が続いている
- 強い息苦しさがある
- 顔色が著しく悪い
- 意識状態がおかしい
- 再び意識を失いそうになる
などの場合は119番を検討してください。
高齢者の転倒では、
「どこをケガしたのか」
と同時に、
「なぜ転んだのか」
この2つの視点で考えることが重要です。
救急車を呼ばなくてもよい場合は?
高齢者が転倒したからといって、すべてのケースで119番が必要になるわけではありません。
例えば、
- 意識が普段どおり
- 呼吸に問題がない
- 大量の出血がない
- 強い痛みがない
- 手足に明らかな変形がない
- ろれつの異常や片側の手足の力が入りにくいなどの神経症状がない
- 転倒した原因が明確
- 転倒後も普段と大きく変わらず動ける
といった場合は、必ずしも救急車が必要とは限りません。
ただし、ここで大切なのは、
「救急車を呼ばない=病院へ行かなくてもよい」ではない
ということです。
転倒直後には症状が軽くても、時間が経ってから痛みや腫れが強くなることがあります。
頭を打っている場合には、その後に頭痛や嘔吐、意識状態の変化などが現れることもあります。
「救急車を呼ぶほどではなさそうだから何もしなくて大丈夫」
と考えるのではなく、必要に応じて医療機関への受診を検討してください。
医療機関への受診を考えたい6つのケース
明らかな緊急症状がなくても、次のような場合は医療機関への受診を検討してください。
① 転倒後の痛みが続いている
特に、
- 股関節
- 手首
- 肩
- 背中
- 腰
などの痛みが続く場合は、骨折などが隠れている可能性があります。
② 腫れや内出血が強くなってきた
転倒直後には目立たなくても、時間が経つにつれて腫れや皮下出血が強くなることがあります。
痛みも増している場合は受診を検討してください。
③ 歩けるが、転倒前より明らかに歩きにくい
「歩けるから骨折していない」
とは限りません。
例えば、
- 足を引きずる
- 痛みをかばって歩いている
- 歩く速度が極端に遅い
- 立ち上がると強く痛がる
など、転倒前との違いがある場合は注意してください。
④ 手首や肩を動かすと強く痛む
転倒時に手をついたり、肩から倒れたりした場合は、手首や肩周辺を骨折している可能性があります。
無理に動かして確認せず、痛みが続く場合は医療機関を受診しましょう。
⑤ 頭を打った可能性がある
頭を打ったあとに明らかな危険サインがなくても、その後の状態を慎重に見る必要があります。
特に、抗凝固薬や抗血小板薬などを服用している場合は、頭を打ったことと服用薬について医療機関や救急相談へ伝え、受診の必要性を相談してください。
⑥ 転倒を何度も繰り返している
繰り返す転倒には、
- 筋力低下
- バランス能力の低下
- 視力の低下
- めまい
- 薬の影響
など、さまざまな原因が関係することがあります。
かかりつけ医などへの相談を検討しましょう。
夜間に高齢者が転倒したらどうする?
夜間にトイレへ行こうとして転倒し、
「病院も閉まっているし、朝まで待っていいのかな?」
と迷うことがあります。
しかし、夜だからという理由だけで朝まで待つのはおすすめできません。
救急車が必要かどうかの判断は、昼間でも夜間でも基本的に同じです。
次のような場合は時間帯に関係なく119番を検討してください。
- 意識がおかしい
- 普段どおりの呼吸ではない
- 頭を打ったあとに様子がおかしい
- ろれつが回らない
- 片側の手足に力が入らない
- 強い痛みがあり、転倒後に立てない
- 大量に出血している
- 胸痛や強い息苦しさがある
一方で、
「今夜受診したほうがいいのか」
「朝まで様子を見てもよいのか」
と迷う場合は、地域の救急相談を利用する方法があります。

救急車を呼ぶか迷ったら「#7119」
救急車を呼ぶべきか判断に迷ったときに利用できるのが、救急安心センター事業(#7119)です。
急な病気やケガについて、
- 救急車を呼んだほうがよいのか
- 今すぐ医療機関を受診したほうがよいのか
- どのような医療機関を受診すればよいのか
などについて相談できます。
ただし、#7119は全国すべての地域で同じように利用できるわけではありません。
対象地域や受付時間などは、住んでいる地域の情報を確認してください。
また、
明らかに緊急性が高い場合に、119番より先に#7119へ相談する必要はありません。
意識がない、普段どおりの呼吸がない、脳卒中を疑う症状がある、大量に出血しているなどの場合は119番を優先してください。
消防庁の「Q助」も判断材料になる
総務省消防庁では、急な病気やケガの緊急度を判断するための全国版救急受診アプリ「Q助」を提供しています。
画面に表示される症状を選択していくことで、緊急度に応じた対応を確認できます。
「救急車を呼ぶべきか判断できない」
という場合の判断材料の一つとして利用できます。
ただし、Q助を操作することで119番通報が遅れないようにしてください。
意識や呼吸がおかしいなど、明らかに緊急性が高い場合は119番を優先します。
119番するときに伝えたい5つの情報
高齢者が転倒して119番すると、通信指令員から必要な情報を順番に聞かれます。
慌ててすべて説明する必要はありません。
分かる範囲で、質問されたことに答えてください。
① 場所
住所や建物名など、救急車が向かう場所を伝えます。
② 誰が、どのような状態なのか
例えば、
「80代の父が転倒して、股関節を痛がって立てません」
「高齢の母が頭を打って、受け答えがおかしいです」
などです。
③ 意識と呼吸
- 普通に会話できる
- 呼びかけへの反応が悪い
- 意識がない
- 呼吸している
- 呼吸がおかしい
など、分かる範囲で伝えます。
④ いつ・どのように転倒したのか
例えば、
「10分くらい前」
「トイレへ行こうとして転倒した」
「物音がして見に行ったら床に倒れていた」
などです。
転倒する瞬間を見ていなければ、
「見ていません」
とそのまま伝えてください。
⑤ 現在どのような症状があるのか
- 頭を打った
- 股関節が痛い
- 立てない
- 出血している
- ろれつが回らない
- 片側の手足が動かない
- 胸が痛い
- 息苦しい
などです。
分からないことを推測する必要はありません。
分かっている事実を正確に伝えることが大切です。
救急隊が来たら伝えてほしい6つの情報
救急隊が到着したら、可能であれば次の情報を伝えてください。
① 転倒した時刻
② 転倒する瞬間を見ていたか
③ 一時的に意識を失った可能性があるか
④ 転倒前に胸痛・動悸・息苦しさ・めまいなどがなかったか
⑤ 持病や普段飲んでいる薬
⑥ 普段はどの程度歩ける人なのか
特に、
「普段は一人で歩けていたのに、転倒後から立てない」
といった、普段との違いは重要な情報です。
救急車が到着するまでにする5つのこと
① 意識と呼吸の変化を見る
119番したときには会話できていても、その後に状態が変わる可能性があります。
反応が悪くなった、呼吸状態が変わったなどの場合は通信指令員へ伝えてください。
② 無理に立たせたり歩かせたりしない
股関節や腰などに強い痛みがある場合は、本人が楽な姿勢で待ちます。
「救急車が来るから玄関まで歩こう」
と無理に移動させる必要はありません。
③ 出血していれば圧迫する
出血している場所が分かる場合は、清潔なガーゼやタオルなどを傷口に当てて圧迫します。
④ お薬手帳などを準備する
可能であれば、
- お薬手帳
- 普段飲んでいる薬
- 受診に必要なもの
などを準備します。
特に抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合は、救急隊へ伝えてください。
⑤ 救急車が入りやすいようにする
玄関の鍵を開ける、夜間なら屋外の照明をつけるなど、救急隊が傷病者のところまで早く到着できるようにします。
転倒した高齢者にやってはいけない4つのこと
① 無理に立たせる
「立てるか確認するため」に立たせる必要はありません。
転倒後に強い痛みで立てないのであれば、その状態自体が重要な情報です。
② 変形した手足を元に戻す
手足が明らかに変形していても、自分で元の位置へ戻そうとしてはいけません。
できるだけ動かさずに対応します。
③ 意識がおかしい人に飲食させる
意識状態が悪い人に水、食べ物、内服薬などを無理に飲ませると、誤嚥する危険があります。
意識がおかしい場合は飲食させず、119番してください。
④ 「高齢だから転んだ」で済ませる
高齢になると転倒しやすくなります。
しかし、
「高齢だから転んだだけ」
と決めつけてはいけません。
脳卒中や失神など、病気が原因で転倒している可能性もあります。
高齢者の転倒についてよくある質問
Q1. 転倒しましたが、自分で歩けています。救急車は必要ですか?
歩けるという情報だけでは判断できません。
意識状態、頭部打撲、痛み、神経症状、胸痛や息苦しさ、転倒した原因などを含めて判断します。
明らかな危険サインがなく、普段と変わらず歩ける場合は、必ずしも救急車が必要とは限りません。
Q2. 頭を打ちましたが、本人は元気です。大丈夫ですか?
頭部外傷では、時間が経ってから症状が現れることがあります。
意識状態の変化、強い頭痛、繰り返す嘔吐、けいれん、ろれつや手足の異常などに注意してください。
抗凝固薬や抗血小板薬を服用している場合は、頭を打ったことと服用薬を医療機関や救急相談へ伝えてください。
Q3. 転倒後に立てません。救急車を呼んでもいいですか?
転倒前は歩けていた人が、転倒後に強い痛みで立てない場合は、骨折などが疑われます。
無理に立たせず、自力で安全に医療機関へ移動できない場合などは119番を検討してください。
Q4. 本人が「救急車はいらない」と言っています。
本人の意思は大切です。
ただし、意識状態が普段と違う、会話がおかしい、頭を打ってから様子がおかしいなどの場合は、本人が適切に判断できていない可能性もあります。
「本人が大丈夫と言っている」という理由だけで判断しないことが大切です。
Q5. 転倒したところを誰も見ていません。何を確認すればいいですか?
まず意識と呼吸を確認します。
そのうえで、
- 頭を打った形跡
- 出血
- 痛み
- 手足の動き
- ろれつの異常
- 胸痛や息苦しさ
- 転倒した理由を本人が覚えているか
などを確認してください。
Q6. 頭を打っていません。骨折もなさそうなら大丈夫ですか?
転倒によるケガが軽そうでも、転倒した原因が病気だった可能性があります。
突然倒れた、一時的に意識を失った、転倒した理由を覚えていない、転倒前に胸痛や動悸があったなどの場合は注意してください。
転倒を繰り返す場合は「次の転倒」を防ぐ
今回大きなケガがなかったとしても、転倒を繰り返している場合は原因を考えることが大切です。
高齢者の転倒には、
- 筋力やバランス能力の低下
- 視力の低下
- めまいやふらつき
- 薬の影響
- 室内の段差
- 滑りやすい床
- 暗い廊下
- 床に置かれた物やコード
など、さまざまな要因が関係します。
自宅では次のような点を確認してみましょう。
① 歩く場所に物を置かない
② 電源コードなどを整理する
③ 滑りやすいマットを見直す
④ 寝室からトイレまでなど、夜間の移動経路を明るくする
⑤ 転倒を繰り返している場合は、かかりつけ医などへ相談する
転倒を繰り返している場合は、単なる不注意だけとは限りません。
身体機能や薬の影響などについて確認することも大切です。
まとめ|高齢者の転倒は「ケガ」と「転んだ原因」の両方を見る

高齢者が転倒したからといって、すべてのケースで救急車が必要になるわけではありません。
しかし、
「ただ転んだだけ」
と安易に判断することも避ける必要があります。
119番を考える重要な症状を、最後にもう一度確認します。
① 意識がおかしい・一時的に意識を失った
② 普段どおりの呼吸ではない
③ 頭を打ったあとに様子がおかしい
④ ろれつが回らない・片側の手足に力が入らない
⑤ 転倒後に強い痛みがあり、立てない・歩けない
⑥ 手足が明らかに変形している
⑦ 大量に出血している
⑧ 胸痛や強い息苦しさなどがある
そして、高齢者の転倒では、
「転倒して何をケガしたのか」
だけでなく、
「なぜ転倒したのか」
を見ることも重要です。
脳卒中や失神などが先に起こり、その結果として転倒している可能性もあります。
高齢者が転倒したときに覚えておきたいのは次の3つです。
① 「転んだだけ」と決めつけない
② 強い痛みがある場合は無理に起こさない
③ 転倒前と比べて何が変わったのかを見る
救急車を呼ぶべきか迷った場合は、利用できる地域であれば#7119や消防庁のQ助なども判断材料になります。
ただし、意識や呼吸がおかしい、脳卒中を疑う症状がある、大量出血しているなど、明らかに緊急性が高い場合は相談窓口を経由せず119番してください。
高齢者の転倒では、目の前のケガだけを見るのではなく、全身の状態と転倒した原因の両方を見ることが大切です。
参考URL
この記事の作成にあたり、以下の公的機関等の情報を参考にしています。
総務省消防庁|救急車利用リーフレット(高齢者版)
高齢者において緊急性が高いと考えられる症状や、救急車を呼ぶ目安についてまとめられています。
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html
総務省消防庁|救急事故防止(高齢者用リーフレット)
高齢者の家庭内事故として多い「転倒」「転落」などについて、発生事例や事故防止のポイントがまとめられています。
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post4.html
総務省消防庁|全国版救急受診アプリ「Q助」
急な病気やケガをしたときに、症状を選択することで緊急度に応じた必要な対応を確認できます。
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate003.html
総務省消防庁|全国版救急受診ガイド「Q助」
救急車を呼ぶべきか、医療機関を受診すべきか迷った場合の判断材料として利用できます。
https://www.fdma.go.jp/relocation/neuter/topics/filedList9_6/kyukyu_app/kyukyu_app_web/index.html
総務省消防庁|救急安心センター事業(#7119)
急な病気やケガで「救急車を呼んだほうがよいのか」「今すぐ病院へ行ったほうがよいのか」など、判断に迷った場合に相談できる電話相談事業です。
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html
日本整形外科学会|大腿骨頚部骨折
高齢者の転倒で注意したい大腿骨頚部骨折について、症状・原因・診断・治療などが解説されています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/femoral_neck_fracture.html
日本整形外科学会|大腿骨近位部骨折
高齢者の転倒後に起こりやすい大腿骨近位部骨折について、足の付け根の痛み、立位・歩行困難などの特徴がまとめられています。
https://www.joa.or.jp/public/pdf/joa_028.pdf
日本整形外科学会|橈骨遠位端骨折(コレス骨折・スミス骨折)
転倒時に手をついた際に起こりやすい手首の骨折について、痛み・腫れ・変形などの症状が解説されています。
https://www.joa.or.jp/PUBLIC/SICK/CONDITION/DISTAL_RADIUS_FRACTURE.HTML
日本整形外科学会|脊椎椎体骨折
骨粗しょう症のある高齢者では、尻もちなどの比較的軽い外力でも脊椎椎体骨折が起こることが解説されています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/vertebral_compression_fracture.html
日本整形外科学会|骨粗鬆症(骨粗しょう症)
骨粗しょう症では骨が弱くなり、転倒などをきっかけに脊椎、手首、大腿骨頚部などを骨折しやすくなることが解説されています。
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html
厚生労働省|高齢者の医薬品適正使用の指針
高齢者における薬物療法の注意点がまとめられており、抗凝固薬使用時の出血リスクや、薬剤と転倒リスクについても解説されています。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4324&dataType=1&pageNo=1

