■ はじめに
血圧が低下したとき、体はどう反応しているのでしょうか?
その鍵を握るのが「レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)」です。
この仕組みは、ショック時の循環調整や利尿薬の作用機序にも関わる、国家試験頻出の重要項目です。
■ RAA系の全体像
RAA系は、血圧の維持と体液量の調節を目的としたホルモン連鎖です。以下のように進行します。
【1】腎臓がレニンを分泌
- 腎臓の傍糸球体装置(特に顆粒細胞)からレニンが分泌される。
- レニン分泌の主なきっかけ:
- 血圧低下
- ナトリウム濃度の低下(遠位尿細管で感知)
- 交感神経刺激(β₁受容体)
【2】アンジオテンシンⅡが生成される
- レニンは、肝臓で産生されるアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変換。
- アンジオテンシンⅠは、肺の血管内皮に存在するACE(アンジオテンシン変換酵素)によってアンジオテンシンⅡへ変化。
【3】アンジオテンシンⅡの作用
- 血管平滑筋に作用して血管収縮 → 血圧上昇。
- 副腎皮質に作用し、アルドステロンの分泌を促進。
【4】アルドステロンの働き
- アルドステロンは腎臓の集合管に作用し、
- ナトリウムの再吸収
- 水の再吸収(間接的に)
- カリウムの排泄 を促進 → 血液量増加 → 血圧上昇。
■ 関連ホルモン・器官の整理
ホルモン/酵素名 | 分泌・産生部位 | 主な作用 |
アンジオテンシノーゲン | 肝臓 | アンジオテンシンⅠの前駆物質 |
レニン | 腎臓(傍糸球体装置) | アンジオテンシンⅠを作る |
ACE(アンジオテンシン変換酵素) | 肺(血管内皮) | アンジオテンシンⅡを作る |
アンジオテンシンⅡ | 血中 | 血管収縮・副腎刺激 |
アルドステロン | 副腎皮質 | Na・水の再吸収、K排泄 |
■ 国家試験のチェックポイント
✅ アンジオテンシノーゲンの産生は? → 肝臓
✅ ACEが存在する主な場所は? → 肺の血管内皮
✅ アンジオテンシンⅡの作用は? → 血管収縮・アルドステロン分泌
✅ アルドステロンの作用は? → Na再吸収・K排泄・水再吸収
■ 国家試験レベルの演習問題
Q1. RAA系に関する記述として正しいものはどれか。
- レニンは副腎から分泌される
- ACEは腎臓に存在する酵素である
- アルドステロンはナトリウム排泄を促進する
- アンジオテンシンⅡは血管を収縮させる
正解:4
→ アンジオテンシンⅡは血圧を上げるために血管収縮を起こす。その他はすべて誤り。
■ まとめ
- RAA系は「腎臓 → 肝臓 → 肺 → 副腎皮質」とホルモンが連携する循環調節システム。
- 血圧低下・ナトリウム低下・交感神経刺激がスタートスイッチ。
- 国家試験では「ホルモンの作用」「分泌部位」が狙われやすい!
RAA系は、ただの暗記ではなく「生体がどうやって血圧を回復させているか」を理解することが得点アップのカギです。実際の現場での薬剤作用の理解にもつながるため、しっかり押さえておきましょう!