「モバイルバッテリーが前より膨らんでいる」
「充電していたら、いつもと違う熱さになった」
「煙が出た。水をかけていいの?それとも逃げる?」
モバイルバッテリーは、外出時や災害時に役立つ身近な道具です。しかし、膨張や異常な発熱がある製品を、そのまま使い続けてはいけません。
まず、目の前の状態に合わせて行動してください。煙や炎が出ている場合は、この記事を読み進めるより、安全確保と119番通報を優先します。
・膨張や変形がある:使用と充電をやめ、製造事業者や販売店に相談する。煙や火花、炎が出たら、避難と119番通報を優先する。
・煙、火花、炎が出ている:近づかず、周囲に知らせ、安全な場所へ避難して119番通報する。
・一度発火したが、見える炎は消えた:片づけず、119番で発火した事実と現在の状況を伝える。
・膨張はないが、普段より明らかに熱い:使用と充電をやめ、製造事業者や販売店に相談する。急に熱さが増す、異音が続くなど、状況が悪化して安全を保てない場合は、離れて119番通報を検討してください。
・不要になった、または膨張して処分したい:他のごみに混ぜず、自治体や製造事業者に回収方法を確認する。
充電中に少し温かくなることだけでは、正常か異常かは判断できません。以前との違いや取扱説明書の注意事項を確認し、異常を感じたら使い続けないでください。煙や炎が噴き出している製品には近づかず、安全な場所へ離れます。
この記事では、一般的な小型モバイルバッテリーを中心に、異常に気づいたときの対処、発火時の判断、捨て方、日頃の予防を解説します。ポータブル電源や住宅用蓄電池など、大きな電池を使う製品の消火手順として、そのまま当てはめないでください。
1 膨張や異常発熱に気づいたら使用と充電をやめる

東京消防庁は、膨張、充電できない、電池の減りが早くなった、充電中に熱くなるなどの異常がある場合、使用をやめて製造事業者や販売店に相談するよう案内しています。
参考:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kasai/lithium_bt.html
確認したい変化は、次のようなものです。
・本体の厚みが増した、ケースに隙間ができた。
・以前と違う熱さになった。
・充電ができない、途中で止まるなどの不具合が出た。
・電池の減り方が急に変わった。
・普段はしない音やにおいがある。
異常のある製品がいつ発火するかは分かりません。膨らみの大きさや使用できる日数で安全を判断せず、製造事業者や販売店へ相談してください。
相談するときは、いつから、どのように変わったかを分かる範囲で伝えてください。
温度を確かめるために本体を触り続けたり、顔を近づけたりしないでください。強い熱さや煙、異音に気づいたら、詳しく調べようとせず距離を取ります。
家庭で充電中に異常に気づいたとき
家庭のコンセントから充電している場合は、バッテリーや煙に近づかずに操作でき、充電器とコンセントに発熱・変形・焦げ臭さなどの異常がなければ、充電器の差し込みプラグをコンセントから抜いて充電を止めます。熱い本体や変形した本体の端子は、無理に抜かないでください。充電器やコンセントにも異常がある、煙や火花が出ている、操作するために危険な場所へ近づく必要がある場合は、抜こうとせず離れます。
関連するコンセントや電源タップにも焦げ臭さ、変形、異常な熱さがある場合は、バッテリーだけの問題と決めつけないことも大切です。
関連記事:コンセントが焦げ臭い・熱いときはどうする?電気火災を防ぐ対処と119番の目安
2 膨らんだ製品を押したり分解したりしない
膨張したケースを押し戻したり、廃棄のために中身を取り出したりしないでください。異常のある製品は、そのままの状態で相談します。
東京消防庁は、衝撃や分解などの誤った取り扱いによる出火について注意喚起しています。ケースの形を戻そうとしたり、内部を確かめたりするために、さらに力を加えないでください。
避けたい行動は、次のとおりです。
・膨らんだ部分を押しつぶす。
・工具でケースを開ける。
・穴を開ける、切る、折り曲げる。
・充電できるか何度も試す。
・捨てる前に電池を使い切ろうとして、異常があるまま使用する。
膨張・異常発熱・故障のある製品は、捨てる前に残量を減らそうとして使い続けないでください。使用と充電をやめ、回収先へ状態を伝えて、取り扱いを確認してください。
モバイルバッテリーは、本体を分解せずに回収する仕組みがあります。JBRCも、対象となるモバイルバッテリーから電池を取り出さないよう案内しています。
一時的に冷めても、膨張や故障が解消したとは判断できません。自己判断で使用を再開しないでください。
3 煙や火花や炎が出たら安全な場所へ離れて119番通報
モバイルバッテリーから煙や炎が噴き出しているときは、近づかないでください。NITE(製品評価技術基盤機構)は、発火時の対処資料でこの点を明示しています。
①「バッテリーから煙が出ている」「火事です」と周囲に知らせる。
②火や煙から離れ、安全な場所へ避難する。
③119番に、場所と起きていることを伝える。

子どもや自力で避難しにくい人がいる場合は、通報時にそのことも伝えてください。一人の場合は安全な場所へ離れてから通報します。消火と通報を両方行おうとして、危険な場所にとどまらないでください。
発火したものを外に出そうとして、持ち上げないでください。かばんの中で煙が出た場合も、原因を確認するために顔を近づけたり、手を入れて本体を探したりしないことが重要です。
119番では、原因を専門的に説明する必要はありません。例えば、次のように伝えます。
「火事です。自宅でモバイルバッテリーから煙と炎が出ています。住所は○○です。家族は外へ避難しています」
すでに炎が見えなくなった場合は、「先ほどモバイルバッテリーが発火しました。今は炎が見えません」と伝えてください。
住所、建物名、階や部屋、煙や炎の状態、逃げ遅れた人やけが人の有無を、分かる範囲で伝えます。製品名や型番、詳しい状況を確認するために戻る必要はありません。分からない点は分からないと答え、指令員の質問や指示に従ってください。
4 小型モバイルバッテリーに水を使う場合の注意
小型モバイルバッテリーの火災では、水を使う方法が公的機関から示されています。ただし、消火を試みるために近づいてよい状況とは限りません。
NITEは、ポケットに入るような小型モバイルバッテリーについて、煙や炎が噴き出す間は近づかず、火花が収まった後に大量の水で消火できると説明しています。消費者庁も、発火時はまず安全を確保し、可能であれば大量の水で消火するよう案内しています。
参考:NITE https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/poster/kaden/20240626.html
これは、一般的な小型モバイルバッテリーを対象とした説明です。ポータブル電源や住宅用蓄電池の消火方法として、そのまま当てはめないでください。
実際に消火を試みる前には、次の点も確認が必要です。以下は、上記の説明を踏まえて本記事で整理した注意事項であり、安全を保証する条件ではありません。

①煙や炎が噴き出していないか、火花が収まっているか。噴出が続いている間は近づかない。
②煙に巻かれず、退路を確保できるか。安全に対応できない場合は消火を試みず避難する。
③製品をつかんだり、流し台や浴室へ運んだりせずに対応できるか。消火のために燃えている製品を持ち上げない。
④周囲の通電中の充電器、電源タップ、コンセントなどに、水がかかる危険がないか。小型バッテリーへの説明を、電気設備全体へ水をかけてよいという意味に受け取らない。
判断に迷う場合や安全に対応できない場合は、離れて119番通報してください。消火を試みる場合も、周囲への知らせと通報を後回しにせず、水を用意するために危険な場所へとどまらないことが大切です。
NITEの資料は「大量の水」としており、必要な量を一律のリットル数では示していません。少量の水をかけただけで、安全になったとは判断しないでください。
消火器を使う場合も、退路を確保し、製品の適応火災と使用方法に従います。煙が増えたり、周囲へ燃え広がったりしたら、消火を続けず離れてください。炎が消えた後の取り扱いは、次の項目で説明します。
防火用の袋やケースは、用途と注意事項を確認して使うものです。発火した製品を入れるために近づいたり、手でつかんだりしないでください。
住宅火災全体の初期消火と避難の判断は、次の記事でも解説しています。
関連記事:家で火事が起きたらどうする?初期消火・119番・避難の正しい判断と行動
5 炎が消えてもそのまま片づけない
目に見える炎が消えると、「もう終わった」と感じるかもしれません。しかし、見える炎がなくなったことだけで、バッテリーの安全を判断しないでください。
NITEは、小型モバイルバッテリーの消火後について、可能な限り水没させた状態で消防機関へ通報するよう案内しています。
熱い製品をつかんだり、無理に運んだりしてまで水没させないでください。安全にできない場合は触らず、119番で状況を伝え、取り扱いの指示を受けます。水没させるまで通報を待つ必要はありません。
発火した製品は、消防に状況を確認してもらう前に、次のような取り扱いをしないでください。
・ごみ袋に入れる。
・かばんや引き出しへ戻す。
・段ボールに詰める。
・車に載せて回収場所へ運ぶ。
・再び充電し、動くか確かめる。
通報が済んでいる場合は、炎が消えたことも指令員へ伝えます。消防が来るまでの取り扱いを確認し、自己判断で片づけたり回収先へ運んだりしないでください。
なお、発火していない膨張品を、予防のためにすべて水へ浸すよう勧めているわけではありません。異常品の保管や回収方法は、製造事業者や自治体などの案内に従ってください。
6 外出先で煙や炎が出たときの知らせ方
モバイルバッテリーは、自宅以外でも使います。電車、駅、店舗、職場などで異常が起きた場合は、その場の人にも危険を知らせる必要があります。
煙や炎が出たら、周囲に「バッテリーから煙が出ています」と知らせ、安全な場所から119番通報します。係員にも連絡し、係員を探すために通報や退避を遅らせないでください。
公共交通機関では、非常通報装置などの設備や、乗務員・係員の指示に従います。自分で解決しようとして、煙の出ているかばんを持ち歩いたり、危険な場所へ移動したりしないことが大切です。
通報では、自宅の住所に代わって、施設名、階、店舗名、駅名、乗っている路線など、現在地を分かる範囲で説明します。
その場にいた人へ助けを求める場合は、「誰かお願いします」よりも、「そちらの方、係員を呼んでください」「119番をお願いします」と、具体的に頼むと役割を伝えやすくなります。
移動中に膨張や異常発熱に気づいた場合も、そのまま使い続けず、使用を中止して相談します。煙や火花が出始めたら、回収先を探す段階ではなく、安全確保と通報が必要な状況です。
7 膨らんだモバイルバッテリーの処分先を確認する
不要なモバイルバッテリーを、他のごみと一緒に捨てないでください。リチウムイオン電池がごみ収集や処理の過程で押しつぶされ、火災につながる問題が起きています。
自治体ごとに回収方法が異なるため、「全国どこでもこの分別でよい」とは言えません。環境省も、家庭から出る製品は、住んでいる市区町村のルールに従って処分するよう案内しています。
まず、自治体の公式サイトやごみの相談窓口で、モバイルバッテリーの回収方法を確認します。その際、正常な使用済み製品なのか、膨張・破損・水濡れがあるのかを区別して伝えてください。
JBRCは、小型充電式電池の回収・リサイクルを行う団体です。回収対象には、会員企業の製品であること、電池の種類が明確であること、膨張・破損・水濡れなどの異常がないことなどの条件があります。モバイルバッテリーならすべて回収できるわけではありません。
参考:JBRC https://www.jbrc.com/general/recycle_flow/
そのため、膨張した製品を、確認せず店頭の回収ボックスへ入れてはいけません。リサイクルマークがあるから受け入れてもらえるとも限りません。
処分の相談では、次の4点を伝えると状況を整理できます。
①モバイルバッテリーであること。
②メーカー名や型番。安全に確認できなければ不明と伝える。
③膨張、破損、水濡れなどの状態。
④発熱、発煙、発火したことがあるか。
相談する言い方の例は、次のとおりです。
「家庭で使っていたモバイルバッテリーが膨らんでいます。今は煙や炎はありません。回収できますか。持ち込む場合の方法と、それまでの取り扱いを教えてください」

自治体で回収できないと言われた場合は、膨張品について相談できる窓口や回収先があるか確認します。製造事業者や販売店にも、膨張した製品であることを伝えて相談してください。
返送や持ち込みが必要な場合は、受け入れ先に状態を伝えてから、受付場所、持ち込める状態、運搬・梱包の方法、回収までの保管方法を確認します。相談前に自己判断で郵送したり、回収場所まで運んだりしないでください。発熱が急に強くなる、発煙するなどの変化がある場合は、運搬せず安全確保を優先します。
正常な使用済み品と膨張品では、受け入れ条件が異なる場合があります。回収先が見つからなくても、他のごみには混ぜず、製品の状態に合った対応を相談してください。
8 事故を防ぐために見直したい5つの習慣
普段の充電と保管は、次の5点を見直してください。使う前の外観確認、取扱説明書に沿った使用、購入後のリコール確認を組み合わせることが大切です。
①高温になる場所へ置かない
NITEや消費者庁は、高温になる場所での使用・保管を避けるよう注意喚起しています。車内や直射日光の当たる場所に置きっぱなしにしないでください。
「電源を切った」「充電していない」という理由だけで、置き場所の確認を省かないことが大切です。保管中も取扱説明書に示された条件を守ります。
②強い衝撃や圧力を加えない
落とす、踏む、重い荷物の下に入れるなど、強い力が加わる取り扱いを避けます。落とした後にケースが割れた、変形した、動作がおかしい場合は、使い続けず相談してください。
③寝具や燃えやすい物のそばで充電しない
消費者庁は、安全な場所で、なるべく起きているときに充電するよう案内しています。枕元、布団の上、衣類や紙が重なった場所など、周囲に燃えやすい物がある環境を見直しましょう。
就寝前に充電する習慣がある場合は、起きている時間帯に充電する方法を検討しましょう。充電中に熱がこもらず、周囲に燃えやすい物がない場所を選び、取扱説明書の注意事項に従ってください。
④説明書に合った充電器や使い方を守る
端子が接続できることだけで、すべての組み合わせが適切とは限りません。製造事業者が案内する充電方法、対応する充電器、使用条件を確認します。
本体だけでなく、端子や充電器にも注意してください。国民生活センターは、充電端子が熱くなったり、異臭がしたりするなどの異常がある場合、直ちに使用を中止するよう案内しています。端子の異常に気づいた場合も、充電を続けず相談してください。
参考:国民生活センター https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210318_1.html
⑤購入後もリコール情報を確認する
購入時は、製造販売元、型番、仕様、問い合わせ先が明確か確認してください。国民生活センターは、これらが不明確な製品の購入を避けるよう案内しています。購入後も、メーカーや公的なリコール情報を確認します。
リコール対象かどうかは、見た目の印象だけで判断せず、型番や対象となる製造番号などを照合してください。製品に異常が見えなくても、対象となる場合は事業者の案内に従います。
災害用に保管している製品も、備蓄を見直すときに外観とリコール情報を確認します。長く使っていないから安全と決めつけず、保管中の点検や充電は取扱説明書に従ってください。異常が見つかった場合は、動作確認のために充電せず相談します。
9 よくある疑問
充電中に少し温かくなるだけでも危険ですか
A.温かいという情報だけでは、その製品が正常か異常かは判断できません。取扱説明書を確認し、以前と比べて明らかに熱い、膨張している、不具合がある場合は、使用を中止してください。確認のために熱い本体へ触れ続ける必要はありません。
膨らんでいるだけなら、すぐに火が出ますか
A.いつ発火するかは分かりません。「必ずすぐに発火する」とも「しばらく使っても大丈夫」とも言えません。使用と充電をやめ、製造事業者や販売店に相談してください。
充電をやめれば、もう安全ですか
A.充電をやめたことだけでは、安全と判断できません。東京消防庁の資料では、リチウムイオン電池搭載製品が充電していないときに出火した例も示されています。膨張などの異常がある製品は使用を再開せず、取り扱いを相談してください。
煙が少し出ただけでも119番ですか
A.製品から煙が出ている場合は、離れて119番通報してください。少量かどうかだけで、内部の状態や今後の変化は判断できません。通報では、今見えている状況をそのまま伝えます。
火が消えた後に119番してもいいですか
A.発火した製品は、自分だけで安全と判断せず消防へ通報してください。「発火したが、今は炎が見えない」と伝え、取り扱いを確認します。
膨らんだ製品を家電量販店へ持っていけば、必ず回収してもらえますか
A.必ず回収してもらえるとは限りません。JBRCの通常回収では膨張品などは対象外です。持ち込む前に、メーカー、状態、発火の有無を伝え、受け入れ条件を確認してください。
スマートフォンやポータブル電源にも同じ対応でよいですか
A.異常があれば使用を中止し、煙や炎が出たら安全確保を優先する点は共通します。ただし、この記事の水による消火の説明は一般的な小型モバイルバッテリーが対象です。ポータブル電源や住宅用蓄電池などは、製品や接続状況が異なるため、同じ手順で対応できるとは判断できません。
10 家族で共有しておきたい異常時の対応
家族で、普段の充電場所と、異常に気づいたときの行動を確認しておきましょう。子どもには、膨張や強い熱さに気づいたら触ったり分解したりせず大人へ知らせること、煙や炎が出たら近づかず離れることを共有してください。
膨張や普段と違う発熱があれば、使用と充電をやめて相談する。煙、火花、炎が出たら、製品へ近づかず、安全な場所へ離れて119番通報する。不要になったら、他のごみへ混ぜず、製品の状態に合った回収方法を確認する。
今日確認したいのは、充電場所に燃えやすい物がないか、本体に膨張や変形がないか、製品がリコール対象になっていないかの3点です。家族で充電場所を見直し、異常時の行動も共有しておきましょう。
参考資料
・NITE「モバイルバッテリー『8.異常・発火時はどうする?』」
・消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」
・国民生活センター「リチウムイオン電池及び充電器の使用に関する注意」

