突然ですが、もしあなたの目の前で人が倒れたら、あなたはどう動きますか?
誰かが苦しんでいる場面――職場、学校、家庭、街角――。その際に、**「何をすべきか」「どう動けば良いか」**を知っているかどうかで、命を救える可能性が大きく変わります。
そしてその「知る・動ける」力を身につけられるのが、一般市民向けに開かれた救命講習、すなわち 普通救命講習 です。
本記事では、普通救命講習の意義、内容、受講方法、そして受けることで得られるものを丁寧に解説します。これを読めば、なぜ“自分には関係ない”ではなく“関係ある”と思うべきなのかがきっと見えてきます。
① 普通救命講習とは何か?
普通救命講習とは、市民が身近に起こり得る傷病・事故に遭遇したとき、初期対応(応急手当)を行えるようになるための講習です。
日常の中で、「突然倒れた・呼吸が止まった」「子どもが誤って喉に何か詰まらせた」「大出血が起きた」などの緊急場面が起こる可能性は、誰にも否定できません。そんなとき、「ただ見守る」だけでなく、「手を出せる」人が一人でもいれば、その人の命は確実に救われる可能性が高まります。
講習は、主に各自治体の消防署や消防本部が実施しており、一般市民なら誰でも参加可能です。”自分には関係ない”と思わずに、むしろ“いつか誰かのために”備えておくべき講習です。 Tetsujuro Fire
さらに、講習には大きく三種類があり、目的や対象によって内容が多少異なります。 Tetsujuro Fire
- 普通救命講習Ⅰ:成人を対象/時間:約3時間/内容:成人の心肺蘇生法・AED操作・異物除去・止血法。 Tetsujuro Fire
- 普通救命講習Ⅱ:時間:約4時間/Ⅰの内容に加えてより実践的な訓練を含む。 Tetsujuro Fire
- 普通救命講習Ⅲ:時間:約3時間/乳幼児を対象にした心肺蘇生法・AED操作・異物除去など。 Tetsujuro Fire
修了すると「修了証」が交付され、緊急時の行動力を一つ備える証ともなります。 Tetsujuro Fire
② 講習の内容:何を学ぶのか?
普通救命講習では、以下の主な応急手当の技術を学びます。これらは、「命をつなぐ」ための最初のアクションです。
1. 心肺蘇生法 (CPR:Cardiopulmonary Resuscitation)
心停止状態の人に対して、胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を組み合わせて行います。具体的には:
- 胸骨圧迫:胸の中央を1分間に100〜120回のリズムで押す(深さは約5 cm) Tetsujuro Fire
- 人工呼吸:可能であれば2回の吹き込みを行う Tetsujuro Fire
なお、状況によっては「胸骨圧迫のみ(ハンズオンリーCPR)」という選択肢もあります。 Tetsujuro Fire
この対応が迅速に行われるかどうかが、傷病者の蘇生率に大きく関わります。
2. AED(自動体外式除細動器)の使い方
AEDは、心臓の異常リズムを正常化する医療機器です。講習では、次のような手順を学びます:
- 電源を入れる → 電極パッドを貼る → 機器の音声指示・表示に従い電気ショックを行う Tetsujuro Fire
- 重要なのは、「音声案内を聞くこと」です。使用経験のない人も、案内に従えば操作が可能です。 Tetsujuro Fire
街中にAEDが増えている今、「触らず見送る」ではなく「使える可能性を持つ人」になることが大切です。
3. 気道異物除去
「喉に食べ物・異物が詰まった」時の対処法を学びます。状況によっては迅速な対応が命を左右します。主な技術は:
- 背部叩打法:背中を叩いて異物を除去する Tetsujuro Fire
- 腹部突き上げ法(ハイムリック法):腹部を圧迫して異物を吐き出させる Tetsujuro Fire
特に子どもや高齢者では、異物誤飲/誤嚥のリスクが高いため、周囲の人が知っておくべき技術です。
4. 止血法
大出血が起きた場合、迅速に止血しなければショックを招く恐れがあります。講習では「直接圧迫止血法」などを学びます:
- 出血部位を清潔なガーゼ等で圧迫し、止血を図る Tetsujuro Fire
この知識があると、日常の怪我・事故時の応急対応も格段に安心になります。
③ 受講までの流れ・手順
普通救命講習を受けるには以下の流れで進みます。
- 申込み
各自治体の消防署または消防本部のウェブサイトで開催情報を確認し、申し込みます。 Tetsujuro Fire
応募多数の場合は抽選や事前登録制のケースもあります。 - 講習の受講
講義+実技の形式で行われます。講師は消防職員・救急救命士など、現場経験者が務めることが多いです。 Tetsujuro Fire
実技では、ダミー人形を用いた胸骨圧迫・AED操作・止血・異物除去などを体験します。 - 修了証の交付
講習を正常に修了すると「普通救命講習修了証」が交付されます。 Tetsujuro Fire
この証明書は、消防団入団やイベント救護ボランティアなど、応急手当関連活動でも活用されることがあります。
④ なぜ受講すべきか?メリットと視点
普通救命講習を受ける価値は、単に「スキルを身につける」だけではありません。以下のような利点があります。
- いざという時に「動ける自分」になる
知識だけでなく、実技を通じて「手を出せる自分」に変わることができます。命の危機に直面した時、迷っている時間が命取りになることがあります。 - 社会的・地域的責任の意識を持てる
日常生活・職場・地域で、誰かが倒れても「見過ごさない」態度が身につきます。これは“自分事”として救命を考える力です。 - 職場/ボランティア活動での信頼を高める
修了証を取得しておくことで、防災訓練・イベント救護・学校行事など、応急手当が必要な場面で「任せられる人」として評価されます。 - 学び直し・アップデートの機会として
応急手当のガイドラインは定期的に更新されます(例えば胸骨圧迫の回数・深さ、AED指示の変化など)。定期受講することで、最新情報を身につけ続けられます。 Tetsujuro Fire
⑤ 受講者として知っておきたいポイント・留意点
普通救命講習を最大限に活用するために、以下の点を押さえておきましょう。
- 実技に臨む心構えを持つ
人形を相手にした訓練でも、真剣に受けることで実際の場面で動ける自信となります。 - 復習・反復がカギ
講習を受けた後、「忘れないうちに」自分で動画を見たり、職場/家庭で話し合ったりすることが効果的です。 - 最新ガイドラインをチェックする
心肺蘇生・AED・止血法などは国内外でガイドラインが更新されており、5年・10年で手順が変わることもあります。定期的に受講・確認を。 Tetsujuro Fire - 受講のハードルを下げておく
「時間ない」「自分には関係ない」と思っていると、受講のタイミングを逃しがちです。職場・地域の開催予定をチェックしておきましょう。 - 実践の機会も探す
学校・職場・地域での防災訓練やAED設置備品の確認など、講習だけで終わらせず「活かす」機会を作ることが理想です。
⑥ まとめ:いざというときの「一歩」を手に入れよう
普通救命講習は、“誰かの命を救うかもしれない”という可能性を、あなたの手の中にそっと置いてくれます。
「自分には関係ない」「自分には無理」と思ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ自分にこそ関係があると考えてみてください。
倒れた人を見て「どうしよう」と思うだけなのか、あるいは「この人を助けよう」と動けるか。
その違いは、定期的な受講と実践準備によって生まれます。
ぜひ一度、地域の消防署や自治体の普通救命講習に参加してみてください。
その3〜4時間が、万が一の時に「誰かを助けた人」になる鍵となるかもしれません。
知っておくこと。できること。そして動けること。
この三つが備われば、あなたはもう「ただの傍観者」ではありません。