必見:緊急安静搬送(Hurry, But Gently)の極意と、意識障害の一次性・二次性脳病変を見極めるための実践ガイド


はじめに

救急現場では、意識障害の傷病者に遭遇する機会が多く、「一次性脳病変なのか、二次性脳病変なのか」を素早く見極めることが、搬送方向と生存率を左右します。また、脳出血やくも膜下出血などの重篤な疾患を疑う場合には、「緊急安静搬送(Hurry, But Gently)」が必要になる場面があります。

本記事では、
緊急安静搬送の意味・適応・注意点
✔ 一次性/二次性脳病変の鑑別ポイント
✔ 搬送中に起こりうる急変(神経原性肺水腫・たこつぼ型心筋症)
✔ 国家試験でも現場でも使えるチェックリスト
✔ ケーススタディによる理解強化

これらを丁寧に分かりやすくまとめています。
国家試験受験生・現場の救急隊員の双方に役立つ内容として構成しています。

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1. 緊急安静搬送(Hurry, But Gently)とは?

言葉の意味

“Hurry”=急ぐ
“But Gently”=しかし慎重に・静かに・刺激を与えず

救急現場で最も誤解されやすいのは、
「急ぐ=揺らして良い」
「安静=ゆっくり運ぶ」

という極端な認識です。

実際には、
急ぐ必要があるが、刺激を加えてはならない病態”
に対して行う専門的な搬送法です。


適応となる代表的な病態

緊急安静搬送が求められる主な疾患は以下です。

頭蓋内の急性疾患

  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 小脳出血
  • 頭部外傷後の急性硬膜外/硬膜下血腫
  • 脳腫瘍の急性悪化
  • てんかん重積の意識障害

心血管疾患

  • 大動脈解離
  • 急性心筋梗塞(重篤例)
  • 血圧急上昇を伴う脳心連関のトラブル

呼吸器の重症疾患

  • 高度の喘息発作
  • 重度の自然気胸

なぜ“安静”が必要なのか

脳出血やくも膜下出血では、次のような現象が起こります:

刺激(揺れ・声掛け・怒り・不安) → 血圧上昇 → 再出血・急変リスク増加

わずかな刺激が
✔ 脳ヘルニア
✔ 再出血
✔ 神経原性肺水腫
✔ たこつぼ型心筋症
を誘発する可能性があります。

だからこそ、搬送は
丁寧かつ迅速”
でなければなりません。


2. 意識障害の原因は「一次性」と「二次性」に分けると一気に整理できる

意識障害は非常に多くの原因がありますが、もっとも実務で使われる整理方法が
「一次性脳病変」か「二次性脳病変」か
の分類です。


一次性脳病変(脳そのものに異常)

代表例

  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 脳梗塞
  • 頭部外傷
  • 脳腫瘍
  • 髄膜炎

特徴(国家試験頻出)

  • 突然発症:時間が明確に分かる
  • 高血圧傾向
  • 瞳孔不同対光反射異常
  • 痙攣や一側麻痺などの明確な神経症状
  • 嘔吐(噴水様)

重要データ

  • 収縮期血圧180mmHg以上 → くも膜下出血の尤度比約26
  • 瞳孔不同 → 脳幹障害の尤度比約9

一次性なら、“緊急安静搬送”の適応に直結します。


二次性脳病変(脳以外が原因で意識が落ちる)

代表例

  • 低血糖
  • 低酸素
  • CO₂ナルコーシス
  • 肝性脳症
  • 尿毒症
  • 敗血症
  • 中毒
  • 脱水・ショック
  • 体温異常(低体温・熱中症)

特徴

  • 発症がゆっくり
  • 低血圧を伴いやすい
  • 末梢冷感・頻脈・多呼吸
  • 発汗・脱水
  • 体温異常
  • 糖代謝や呼吸代謝の異常

尤度比データ

  • 収縮期血圧90mmHg以下 → 二次性の尤度比約33

二次性では、まず“原因の補正(糖・酸素・体温・循環)”が優先されます。


3. 現場で行うべき初期評価 — 一次性と二次性を決める5つの超重要ポイント

救急現場では、医師と同じように診断する必要はありません。
しかし、
「どちらの方向性で悪化しているか」を判断する力が極めて重要です。

以下の5つを最優先で確認してください。


血糖測定

意識障害で最も救えるのが「低血糖」。
測定を後回しにすることは絶対にNG。


バイタルサイン(特に血圧)

  • 高血圧 → 一次性(脳卒中)を優先
  • 低血圧 → 二次性(ショック・脱水・感染)を優先

瞳孔・対光反射

最も重要な神経学的所見。

  • 瞳孔不同
  • 対光反射消失

これらは脳幹トラブルを示します。


発症時間の聴取

聞き方のポイントは

  • 「いつ倒れた?」ではなく
  • 「最後に普通だったのはいつ?」(ラス)

脳卒中の治療方針に最も重要です。


体温

  • 低体温 → VFリスク
  • 高体温 → DICや多臓器不全

体温異常は一刻を争う場合が多く、搬送先も三次医療機関が必要です。

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4. 搬送中の重大な急変 — 神経原性肺水腫・たこつぼ型心筋症

脳卒中とくに「くも膜下出血」では、搬送中に以下が突然起こることがあります:


神経原性肺水腫

脳の急激な刺激 → 交感神経過剰 →
血管収縮 → 肺毛細血管圧上昇 →
泡沫状喀痰、急激な呼吸不全、血圧低下

これは救急車内で突然起こることがあり、Hurry, But Gently の徹底が欠かせません。

現場サイン

  • ピンク色の泡沫状喀痰
  • 強い湿性ラ音
  • 急激な低酸素
  • 冷汗・急激な血圧低下

たこつぼ型心筋症

強いストレス・脳刺激により心機能が低下する現象。
特徴は、

  • 胸痛
  • ST変化
  • ショック
    を搬送中に合併することもあります。

5. 緊急安静搬送の具体的ポイント

以下は隊員が実践すべき要点です。


◆ ◎ 体位

  • 基本は 頭部軽度挙上
  • 無駄な体位変換を避ける
  • 瞳孔観察に必要な最小限の刺激のみ

◆ ◎ 車内環境

  • 揺れを最小限
  • 急発進・急制動を避ける
  • サイレンは状況に応じ調整(刺激を避けるため)

◆ ◎ 声掛け

  • 過度な刺激は禁忌
  • 必要最低限でOK

◆ ◎ 酸素投与

  • SpO₂に関係なく、高流量で積極的に投与
    (脳虚血を避けるため)

◆ ◎ 情報収集

  • 発症時間
  • 既往歴(高血圧・糖尿病・透析歴など)
  • 家族の証言

これらは搬送中に必ず医療機関へ共有します。


6. ケーススタディ — 現場での判断が“見える”ようになる

ケース(実際の国家試験にも頻出するパターン)

76歳男性
・突然倒れた
・発症時間10分前
・収縮期血圧 200mmHg
・瞳孔不同
・反応なし


現場評価

✔ 瞬時に「一次性脳病変」を疑う
✔ くも膜下出血 or 脳出血の可能性
✔ 緊急安静搬送の適応


搬送判断

  • 揺らさず
  • 声掛け最小限
  • 体位は頭部挙上
  • 三次救命センターへ事前連絡
  • 酸素を高流量で投与
  • 泡沫状喀痰・湿性ラ音に注意

7. 国家試験で頻出するポイントまとめ(重要)

  • 一次性=高血圧・神経徴候・突然発症
  • 二次性=低血圧・ゆっくり・代謝異常
  • 発症時間は「最後に正常だった時刻」
  • 低血糖は必ず血糖測定
  • 低体温=VFリスク
  • 搬送中の急変は神経原性肺水腫に最も注意
  • 脳卒中では安静搬送が必須

8. 現場に役立つチェックリスト(印刷推奨)

  • 血糖を測定した
  • 血圧・脈拍・体温を確認
  • 瞳孔・対光反射
  • 発症時間またはラス
  • 体温異常の有無
  • 搬送体位の安定
  • 不必要な声掛けをしない
  • 揺れを最小限
  • 搬送先の事前連絡

9. まとめ

緊急安静搬送は「急ぐけれど、刺激を最小限に抑える」高度な搬送法です。
特に 一次性脳病変 の可能性がある傷病者では、わずかな刺激が再出血や急変の引き金となります。

そのため、
一次性か二次性かを見極める評価スキル+安静搬送技術
が救命率を大きく左右します。

この記事が、ブログ読者(一般・受験生・現場隊員)にとって
“すぐ使える現場知識”“国家試験に直結する理解”
となれば幸いです。

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By TETSU十郎

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