はじめに
救急現場では、意識障害の傷病者に遭遇する機会が多く、「一次性脳病変なのか、二次性脳病変なのか」を素早く見極めることが、搬送方向と生存率を左右します。また、脳出血やくも膜下出血などの重篤な疾患を疑う場合には、「緊急安静搬送(Hurry, But Gently)」が必要になる場面があります。
本記事では、
✔ 緊急安静搬送の意味・適応・注意点
✔ 一次性/二次性脳病変の鑑別ポイント
✔ 搬送中に起こりうる急変(神経原性肺水腫・たこつぼ型心筋症)
✔ 国家試験でも現場でも使えるチェックリスト
✔ ケーススタディによる理解強化
これらを丁寧に分かりやすくまとめています。
国家試験受験生・現場の救急隊員の双方に役立つ内容として構成しています。
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📚 おすすめの参考書籍
1️⃣ 『最新医学図解 詳しくわかる狭心症・心筋梗塞の治療と安心生活』
著者:上妻 謙 / 出版社:法研
狭心症や心筋梗塞の「発症から治療、再発予防まで」を図解でやさしく解説。専門用語をかみ砕いて説明しており、一般の方が基礎から学ぶのに最適です。
おすすめ用途:一般読者向けの入門書として。
2️⃣ 『心筋梗塞症(新 目でみる循環器病シリーズ 10)』
著者:吉野 秀朗 / 出版社:メジカルビュー社
心筋梗塞の病態・診断・治療・合併症までを、豊富な図版とともに体系的に整理。医療者・学生・救急隊員など、より深く理解したい人に適しています。
おすすめ用途:医療・救急従事者の学習用に。
3️⃣ 『狭心症・心筋梗塞 正しい治療がわかる本(EBMシリーズ)』
著者:野々木 宏 / 編集:福井 次矢 / 出版社:法研
最新のエビデンス(EBM)に基づく治療方針をわかりやすく紹介。現場から病院までの治療の流れが理解でき、救急救命士にも参考になります。
おすすめ用途:治療選択や対応の流れを整理したい方に。
1. 緊急安静搬送(Hurry, But Gently)とは?

◆ 言葉の意味
“Hurry”=急ぐ
“But Gently”=しかし慎重に・静かに・刺激を与えず
救急現場で最も誤解されやすいのは、
「急ぐ=揺らして良い」
「安静=ゆっくり運ぶ」
という極端な認識です。
実際には、
“急ぐ必要があるが、刺激を加えてはならない病態”
に対して行う専門的な搬送法です。
◆ 適応となる代表的な病態
緊急安静搬送が求められる主な疾患は以下です。
◎ 頭蓋内の急性疾患
- 脳出血
- くも膜下出血
- 小脳出血
- 頭部外傷後の急性硬膜外/硬膜下血腫
- 脳腫瘍の急性悪化
- てんかん重積の意識障害
◎ 心血管疾患
- 大動脈解離
- 急性心筋梗塞(重篤例)
- 血圧急上昇を伴う脳心連関のトラブル
◎ 呼吸器の重症疾患
- 高度の喘息発作
- 重度の自然気胸
◆ なぜ“安静”が必要なのか
脳出血やくも膜下出血では、次のような現象が起こります:
刺激(揺れ・声掛け・怒り・不安) → 血圧上昇 → 再出血・急変リスク増加
わずかな刺激が
✔ 脳ヘルニア
✔ 再出血
✔ 神経原性肺水腫
✔ たこつぼ型心筋症
を誘発する可能性があります。
だからこそ、搬送は
“丁寧かつ迅速”
でなければなりません。
2. 意識障害の原因は「一次性」と「二次性」に分けると一気に整理できる
意識障害は非常に多くの原因がありますが、もっとも実務で使われる整理方法が
「一次性脳病変」か「二次性脳病変」か
の分類です。
◆ 一次性脳病変(脳そのものに異常)
代表例
- 脳出血
- くも膜下出血
- 脳梗塞
- 頭部外傷
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
◆ 特徴(国家試験頻出)
- 突然発症:時間が明確に分かる
- 高血圧傾向
- 瞳孔不同や対光反射異常
- 痙攣や一側麻痺などの明確な神経症状
- 嘔吐(噴水様)
✔ 重要データ
- 収縮期血圧180mmHg以上 → くも膜下出血の尤度比約26
- 瞳孔不同 → 脳幹障害の尤度比約9
一次性なら、“緊急安静搬送”の適応に直結します。
◆ 二次性脳病変(脳以外が原因で意識が落ちる)
代表例
- 低血糖
- 低酸素
- CO₂ナルコーシス
- 肝性脳症
- 尿毒症
- 敗血症
- 中毒
- 脱水・ショック
- 体温異常(低体温・熱中症)
特徴
- 発症がゆっくり
- 低血圧を伴いやすい
- 末梢冷感・頻脈・多呼吸
- 発汗・脱水
- 体温異常
- 糖代謝や呼吸代謝の異常
✔ 尤度比データ
- 収縮期血圧90mmHg以下 → 二次性の尤度比約33
二次性では、まず“原因の補正(糖・酸素・体温・循環)”が優先されます。
3. 現場で行うべき初期評価 — 一次性と二次性を決める5つの超重要ポイント
救急現場では、医師と同じように診断する必要はありません。
しかし、
「どちらの方向性で悪化しているか」を判断する力が極めて重要です。
以下の5つを最優先で確認してください。
① 血糖測定
意識障害で最も救えるのが「低血糖」。
測定を後回しにすることは絶対にNG。
② バイタルサイン(特に血圧)
- 高血圧 → 一次性(脳卒中)を優先
- 低血圧 → 二次性(ショック・脱水・感染)を優先
③ 瞳孔・対光反射
最も重要な神経学的所見。
- 瞳孔不同
- 対光反射消失
これらは脳幹トラブルを示します。
④ 発症時間の聴取
聞き方のポイントは
- 「いつ倒れた?」ではなく
- 「最後に普通だったのはいつ?」(ラス)
脳卒中の治療方針に最も重要です。
⑤ 体温
- 低体温 → VFリスク
- 高体温 → DICや多臓器不全
体温異常は一刻を争う場合が多く、搬送先も三次医療機関が必要です。
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著者:上妻 謙 / 出版社:法研
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おすすめ用途:一般読者向けの入門書として。
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著者:吉野 秀朗 / 出版社:メジカルビュー社
心筋梗塞の病態・診断・治療・合併症までを、豊富な図版とともに体系的に整理。医療者・学生・救急隊員など、より深く理解したい人に適しています。
おすすめ用途:医療・救急従事者の学習用に。
3️⃣ 『狭心症・心筋梗塞 正しい治療がわかる本(EBMシリーズ)』
著者:野々木 宏 / 編集:福井 次矢 / 出版社:法研
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おすすめ用途:治療選択や対応の流れを整理したい方に。
4. 搬送中の重大な急変 — 神経原性肺水腫・たこつぼ型心筋症
脳卒中とくに「くも膜下出血」では、搬送中に以下が突然起こることがあります:
◆ 神経原性肺水腫
脳の急激な刺激 → 交感神経過剰 →
血管収縮 → 肺毛細血管圧上昇 →
泡沫状喀痰、急激な呼吸不全、血圧低下
これは救急車内で突然起こることがあり、Hurry, But Gently の徹底が欠かせません。
現場サイン
- ピンク色の泡沫状喀痰
- 強い湿性ラ音
- 急激な低酸素
- 冷汗・急激な血圧低下
◆ たこつぼ型心筋症
強いストレス・脳刺激により心機能が低下する現象。
特徴は、
- 胸痛
- ST変化
- ショック
を搬送中に合併することもあります。
5. 緊急安静搬送の具体的ポイント

以下は隊員が実践すべき要点です。
◆ ◎ 体位
- 基本は 頭部軽度挙上
- 無駄な体位変換を避ける
- 瞳孔観察に必要な最小限の刺激のみ
◆ ◎ 車内環境
- 揺れを最小限
- 急発進・急制動を避ける
- サイレンは状況に応じ調整(刺激を避けるため)
◆ ◎ 声掛け
- 過度な刺激は禁忌
- 必要最低限でOK
◆ ◎ 酸素投与
- SpO₂に関係なく、高流量で積極的に投与
(脳虚血を避けるため)
◆ ◎ 情報収集
- 発症時間
- 既往歴(高血圧・糖尿病・透析歴など)
- 家族の証言
これらは搬送中に必ず医療機関へ共有します。
6. ケーススタディ — 現場での判断が“見える”ようになる
■ ケース(実際の国家試験にも頻出するパターン)
76歳男性
・突然倒れた
・発症時間10分前
・収縮期血圧 200mmHg
・瞳孔不同
・反応なし
▼ 現場評価
✔ 瞬時に「一次性脳病変」を疑う
✔ くも膜下出血 or 脳出血の可能性
✔ 緊急安静搬送の適応
▼ 搬送判断
- 揺らさず
- 声掛け最小限
- 体位は頭部挙上
- 三次救命センターへ事前連絡
- 酸素を高流量で投与
- 泡沫状喀痰・湿性ラ音に注意
7. 国家試験で頻出するポイントまとめ(重要)
- 一次性=高血圧・神経徴候・突然発症
- 二次性=低血圧・ゆっくり・代謝異常
- 発症時間は「最後に正常だった時刻」
- 低血糖は必ず血糖測定
- 低体温=VFリスク
- 搬送中の急変は神経原性肺水腫に最も注意
- 脳卒中では安静搬送が必須
8. 現場に役立つチェックリスト(印刷推奨)
- 血糖を測定した
- 血圧・脈拍・体温を確認
- 瞳孔・対光反射
- 発症時間またはラス
- 体温異常の有無
- 搬送体位の安定
- 不必要な声掛けをしない
- 揺れを最小限
- 搬送先の事前連絡
9. まとめ

緊急安静搬送は「急ぐけれど、刺激を最小限に抑える」高度な搬送法です。
特に 一次性脳病変 の可能性がある傷病者では、わずかな刺激が再出血や急変の引き金となります。
そのため、
一次性か二次性かを見極める評価スキル+安静搬送技術
が救命率を大きく左右します。
この記事が、ブログ読者(一般・受験生・現場隊員)にとって
“すぐ使える現場知識”“国家試験に直結する理解”
となれば幸いです。
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