1. リスボン宣言とは?

○リスボン宣言は、1981年に世界医師会(WMA)が採択した「患者の権利」に関する国際的な倫理指針であり、その後も改訂が重ねられています。この宣言は、患者が適切な医療を受ける権利や自己決定権を持つことを強調しており、医療従事者が患者を尊重する姿勢を求めています。

○救急救命士も医療従事者として、患者の権利を尊重し、適切な判断と行動をとることが求められます。

2. リスボン宣言の主な内容(試験対策ポイント)

① 医療を受ける権利

すべての患者は適切な医療を公平に受ける権利を持つ。

どのような社会的立場、経済状況、人種、宗教、国籍であっても、公平に医療を受けることができる。

救急救命士として、トリアージや搬送の判断も公平性を考慮する必要がある。

② 自己決定権(オートノミー)

患者は自らの治療について決定する権利を持つ。

治療方針を選ぶことも、拒否することもできる。

救急救命士としては、意識がある患者の意思を尊重しながらも、生命に危険がある場合は慎重に対応することが求められる。

③ インフォームド・コンセント(説明と同意)

医療行為を行う前に、十分な説明を受け、理解した上で同意する権利がある。

救急救命士は応急処置を行うが、可能な範囲で傷病者や家族に説明し、納得を得ることが重要。

意識のない患者に対しては、緊急時の対応として適切な判断をする必要がある。

④ プライバシーと機密保持の権利

診療情報や個人情報は保護されるべきであり、無断で第三者に提供してはならない。

救急救命士も、現場で知り得た情報をSNSなどで発信することは厳禁。

医療従事者としての倫理観を持ち、患者の情報管理を徹底することが求められる。

⑤ 尊厳を持って扱われる権利

すべての患者は人として尊厳を持って扱われる権利を持つ。

医療者は患者に対して敬意を持って接し、安心感を与える対応をするべき。

救急救命士も、傷病者に対して適切な言葉遣いや態度を意識し、尊厳を損なわないようにすることが重要。

3. 国家試験の出題傾向

○国家試験では、「リスボン宣言」という言葉自体が問われることは少ないですが、以下のような患者の権利に関する問題が出題される可能性があります。

【例題】

患者の権利に関する国際的な倫理指針として最も適切なものはどれか?

A. ジュネーブ宣言

B. ヘルシンキ宣言

C. リスボン宣言

D. ヒポクラテスの誓い

正解:C(リスボン宣言)

○また、次のような患者の権利に関するケース問題も出題されることがあります。

【例題】

意識がある患者が「搬送を拒否した」場合、救急救命士が取るべき対応として適切なのはどれか?

A. 患者の意思を尊重し、同意が得られない限り搬送しない

B. 家族の意向を優先し、患者の意思に関係なく搬送する

C. 意識のある患者であっても、救急隊の判断で強制搬送する

D. プライバシー保護のため、患者の情報を家族にも伝えない

正解:A(患者の自己決定権を尊重する)

4. まとめ(国家試験対策ポイント)

○リスボン宣言は、「患者の権利」に関する国際的な倫理指針であり、救急救命士としても重要な考え方。

①患者の自己決定権を尊重する(意識がある患者の意思を最優先)

➁公平な医療の提供を心がける(人種・宗教・経済状況に関係なく対応)

③インフォームド・コンセントを意識する(説明と同意を大切にする)

④プライバシーを守る(患者情報を慎重に取り扱う)

⑤尊厳を大切にする(敬意を持った対応を心がける)

○救急現場では、傷病者の意思を尊重しつつ、救命のために適切な判断をすることが求められる。国家試験では、患者の権利を理解した上で、「医療者として倫理的に正しい行動」を選択できるようにしておこう!

By TETSU十郎

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