― 救急隊の現場判断をもとに、今すぐ受診すべきサインを整理 ―
はじめに|なぜ「夜間・休日」は判断が難しいのか

夜間や休日に体調が悪くなると、多くの人が次のように迷います。
- 夜中に病院へ行くほどではない気がする
- でも、朝まで待って悪化したらどうしよう
- 救急車を呼ぶのは大げさではないか
この「迷い」そのものが、受診や通報を遅らせる最大の原因です。
実際、救急現場では
「もう少し早ければ軽症で済んだ」
「様子を見た結果、重症化していた」
というケースを何度も経験します。
本記事では、
- 夜間・休日に特に迷いやすい症状
- 自宅で様子を見てよいケース
- 今すぐ受診・通報すべき危険サイン
- #7119 と 119 の正しい使い分け
を、症状別・行動別に整理します。
大前提|夜間・休日の判断で最も重要な考え方
原則①「原因が分からない強い症状」は待たない
- 突然出現した
- いつもと明らかに違う
- 説明できない
この3つが揃う症状は、時間経過がリスクになることがあります。
原則②「我慢できる=安全」ではない
- 痛みに強い人
- 高齢者
- 糖尿病・心疾患・脳血管疾患の既往がある人
これらの方は、症状が軽く見えても重症が隠れていることがあります。
原則③ 迷った時点で相談してよい
「迷う=判断材料が足りない状態」です。
その時点で相談する行動は間違いではありません。
症状別|夜間・休日に迷いやすい代表例と判断基準

救急隊の現場でも重視するのは客観的な情報です。夜間・休日に迷ったら、この4つがあれば判断材料になります。
📘 いざというときの救急・応急手当ガイド
夜間や休日など、すぐに医療機関へ相談できない場面で、
「救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいか」の判断を助けてくれる一冊。
一般の方にも分かりやすく、家庭に1冊あると安心です。
🧰 家庭用 救急セット(ファーストエイドキット)
軽いケガや体調不良時の応急対応に役立つ救急セット。
「様子を見る」判断になった場合でも、適切な初期対応ができます。
防災備蓄としてもおすすめです。
🩺 パルスオキシメーター(血中酸素濃度計)
息苦しさや発熱時にSpO₂(血中酸素飽和度)を確認でき、
「今すぐ受診すべきか」の判断材料になります。
高齢者のいる家庭では特に有用です。
① 発熱(特に夜間の急な発熱)
様子を見てもよい目安
- 38℃未満
- 意識がはっきりしている
- 水分が取れる
- 呼吸が苦しくない
受診・相談を考えるサイン
- 39℃以上の高熱が続く
- 意識がぼんやりしている
- 呼吸が早い・苦しそう
- 高齢者・乳幼児
すぐ受診・通報すべきサイン
- 意識障害
- けいれん
- 呼吸困難
- 発疹+高熱(髄膜炎などの可能性)
② 胸の痛み・圧迫感・違和感
危険な特徴
- 突然始まった
- 締め付けられる感じ
- 冷汗・吐き気を伴う
- 左肩・背中・顎に放散する痛み
これらは心筋梗塞や大動脈解離などを否定できません。
👉 夜間・休日を理由に様子を見るべきではありません。
③ 息苦しさ・呼吸が浅い感じ
特に危険
- 会話が途切れる
- 横になると苦しい
- 呼吸音がゼーゼーする
- SpO₂を測ると低下している
呼吸の異常は時間との勝負です。
④ 頭痛(いつもと違う・突然)
危険サイン
- 今までで一番強い頭痛
- 突然ガンときた
- 吐き気・嘔吐を伴う
- 手足のしびれ、ろれつ不良
👉 くも膜下出血などを否定できません。
⑤ 片側だけのしびれ・力が入らない
- 顔が歪む
- 片腕が上がらない
- 言葉が出ない
これは脳卒中の典型的初期症状です。
夜間でも119一択です。
⑥ 腹痛・嘔吐・下痢
注意が必要なケース
- 強い腹痛が持続
- 黒色便・血便
- 発熱を伴う腹痛
- 高齢者の腹痛
「胃腸炎だと思った」が、腸閉塞・穿孔だった例は珍しくありません。
#7119 と 119 の正しい使い分け
#7119 が向いている場面
- 症状はあるが判断に迷う
- 今すぐ命の危険はなさそう
- 受診すべきか相談したい
119 をためらわない場面
- 意識障害
- 呼吸困難
- 強い胸痛
- 片側麻痺
- けいれん
👉 #7119は相談、119は要請です。
詳しい使い分けは、こちらの記事で整理しています。
▶ 内部リンク:
「#7119に電話すべき?119に電話すべき?救急隊が教える判断基準」
#7119に電話すべき?119に電話すべき? — TETSU十郎/救急救命士/防災士
「呼ばなかった後悔」は実際に多い
救急現場でよく聞く言葉があります。
- 「朝まで待てばよかったと思った」
- 「救急車を呼ぶのは申し訳ないと思った」
結果として、後悔につながるケースは少なくありません。
▶ 関連記事(内部リンク):
救急車を呼ばなかった人が後悔した共通点
救急車を呼ばなかった人が後悔する5つの共通点 — TETSU十郎/救急救命士/防災士
迷ったときの最終チェックリスト(保存推奨)
- いつもと違う症状か
- 時間とともに悪化しているか
- 原因を説明できるか
- 一人で対処できる状態か
1つでも不安が残るなら相談・受診してよい。
まとめ|夜間・休日の判断で最も大切なこと

- 迷うこと自体は悪くない
- 迷ったまま何もしないことが危険
- 救急医療は「ためらわず使う」ためにある
あなたや家族の「その判断」が、
未来の後悔を防ぐ分かれ道になります。
根拠・参考リンク(公的・信頼性資料)
- 総務省消防庁「救急車の適正利用」
救急車の適時・適切な利用(適正利用) | 総務省消防庁 - 厚生労働省「夜間・休日の医療体制」
厚生労働省委託事業「夜間・休日ワンストップ窓口」のご案内|厚生労働省 - 日本救急医学会
https://www.jaam.jp/ - #7119(救急相談窓口)案内
救急安心センター事業(♯7119)ってナニ? | 救急車の適時・適切な利用(適正利用) | 総務省消防庁


