救急救命士国家試験では、肝臓の位置・構造・血流・機能に関する問題が頻出です。
特に「門脈」「肝静脈」「肝小葉」といったキーワードは、出題率が非常に高い領域。
今回はその中でも、解剖学(構造)だけに焦点を当て、理解を深めていきましょう。
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◆肝臓の基本構造と位置
肝臓(liver)は人体で最大の実質臓器であり、成人では体重の約2%(約1.2〜1.5kg)を占めます。
右上腹部に位置し、横隔膜のすぐ下にあります。腹腔内では主に右上腹部〜心窩部を占め、
**肋骨弓の内側(第5〜10肋骨付近)**に隠れるように存在します。
右葉が大きく、左葉は比較的小さい。
肉眼的には大きく右葉・左葉・尾状葉・方形葉の4葉に区分されます。
👉 語呂で覚える:
「右が主役の肝臓くん、左・方形・尾がサポート!」
(右葉が圧倒的に大きいことをイメージ)
◆肝臓を包む膜構造
肝臓は**グリソン鞘(Glisson鞘)**という結合組織に包まれています。
この鞘の中には、門脈・肝動脈・胆管が一緒に走っています。
これら3つの構造をまとめて「グリソン3つ組(Glisson’s triad)」と呼びます。
👉 語呂:
「グリソン3つ組、動・静・胆(どうじたん)」
→「肝動脈・門脈・胆管」がセット!
この構造は肝臓の機能単位である**肝小葉(liver lobule)**の外側に存在し、
そこから肝細胞へ血液や胆汁が出入りします。
◆肝小葉の構造を図でイメージ!
肝臓は小さな単位「肝小葉(liver lobule)」の集合体でできています。
1つの肝小葉は六角形をしており、その中心に**中心静脈(central vein)**があります。
肝小葉の辺の角に「グリソン3つ組」が存在し、そこから
- 門脈血(消化管由来の血液)
- 肝動脈血(酸素豊富な血液)
が入り、肝細胞を通って中心静脈へ流れ出す構造になっています。
👉 語呂で覚える:
「門と動から入って、中心に静まる肝小葉」
(=門脈・肝動脈が流入し、中心静脈に集まる)
◆肝臓への血液の流れ(解剖学的経路)
肝臓の血流経路は非常に重要です。
肝臓には「二重血行支配」があります。
すなわち、
- 肝動脈(酸素を運ぶ)
- 門脈(栄養を運ぶ)
の2系統から血液が流入します。
およそ
➡ 肝動脈:全体の25%(酸素供給)
➡ 門脈:全体の75%(栄養供給)
この二つの血液が肝細胞で混ざり合い、
中心静脈 → 肝静脈 → 下大静脈へと流出します。
👉 語呂:
「門(75)くぐって動(25)く肝臓」
→ 門脈75%、肝動脈25%をセットで覚える!
◆門脈とは?
肝臓に流れ込む「門脈(portal vein)」は、消化管や脾臓から集めた静脈血を運んでいます。
つまり、栄養分に富むが酸素は少ない血液です。
門脈は主に以下の静脈から集まります。
- 上腸間膜静脈(小腸・右結腸などから)
- 下腸間膜静脈(左結腸・直腸などから)
- 脾静脈(脾臓・胃から)
これらが合流して肝門部に入り、肝臓内部で細かく分かれて肝小葉周囲へ血液を送ります。
👉 語呂:
「門(もん)をくぐるは上・下・脾(じょう・か・ひ)」
→ 門脈を構成する3本を覚える!
◆肝門と肝静脈の違いに注意!
国家試験で混乱しやすいポイントが「肝門(かんもん)」と「肝静脈」の違いです。
| 項目 | 肝門 | 肝静脈 |
|---|---|---|
| 流れ | 血液が流入する場所 | 血液が流出する場所 |
| 構造 | 門脈・肝動脈・胆管が通る | 中心静脈→合流して下大静脈へ |
| 位置 | 肝臓の下面中央部 | 肝臓の背側(上面近く) |
👉 語呂:
「門から入り、静かに出る」
→ 肝門=入口、肝静脈=出口
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◆肝臓の表面解剖と隣接臓器
肝臓の表面は腹膜で覆われていますが、一部覆われない部分があります。
この部分を裸区(らく)=bare areaと呼び、横隔膜と直接接しています。
また、肝臓の下方にはいくつかの臓器が接しています。
- 胆嚢(たんのう)
- 胃
- 十二指腸
- 右腎・右副腎
救急現場では肝損傷などの腹部外傷で、これらの臓器損傷を合併することが多いため、
隣接関係を理解しておくことは非常に重要です。
👉 語呂:
「**たん(胆嚢)・じゅう(十二指腸)・けん(腎)・い(胃)・ふく(副腎)**の下で肝さん休む」
→ 肝臓の下で休む(接している)臓器を順に覚える!
◆肝臓の区域解剖(臨床に直結!)
肝臓は血流と胆汁の流れに基づいて、機能的に**8区域(Couinaud分類)**に分けられます。
これは手術や画像診断(CT、エコー)で用いられる区分です。
右葉・左葉を境界づけるのは「中肝静脈」。
また、右肝静脈・左肝静脈がそれぞれ葉を分けています。
臨床的には、たとえば肝損傷で「右葉損傷」「左葉損傷」と記録される場合、
この静脈の走行が基準になっています。
◆肝臓のまとめゴロ集!
国家試験直前に覚えるならこれ!
| 項目 | 語呂 |
|---|---|
| グリソン3つ組 | 「どうじたん(動・静・胆)」 |
| 肝小葉の血流 | 「門と動から入って、中心に静まる」 |
| 血流割合 | 「門(75)くぐって動(25)く肝臓」 |
| 門脈構成 | 「門をくぐるは上・下・脾」 |
| 肝門と肝静脈 | 「門から入り、静かに出る」 |
| 接する臓器 | 「たん・じゅう・けん・い・ふく」 |
◆国家試験でよく出る出題パターン
✅ 肝臓の血流に関して正しい組み合わせはどれか?
✅ グリソン鞘に含まれないものはどれか?
✅ 肝小葉の中心にある構造は?
✅ 肝門を通るものの組み合わせは?
いずれも「構造の理解」で確実に得点できる問題です。
ゴロだけでなく、血液の流れを頭の中で描けるかがポイントです。
◆まとめ
肝臓の解剖は、生理学や病態学の理解の土台になります。
例えば、肝硬変や肝損傷、門脈圧亢進などは、この構造が理解できていないと正しく判断できません。
国家試験では「肝臓の血流」と「構造(肝小葉・グリソン鞘・肝門)」を軸に整理しておくと、
得点源になる分野です。
👉 最後にもう一度:
「どうじたん・門と動・中心静・門75動25」
このセットを唱えながら、血流の流れをイメージできれば完璧です!
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次回予告:
次の記事では「肝臓の生理学(代謝・解毒・胆汁産生)」を、今回の構造を踏まえて徹底解説します。
構造を理解した今こそ、機能を覚えるチャンスです!
