こんにちは。今回は「肝臓の生理学」について、『救急救命士標準テキスト第11版』をもとに詳しく解説します。
肝臓は「人体最大の化学工場」と呼ばれるほど多機能な臓器で、代謝・解毒・胆汁生成・貯蔵など生命維持に欠かせない働きをしています。
国家試験でも頻出分野のひとつであり、現場での病態理解にも直結する重要テーマです。
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◆ 肝臓の構造と特徴
肝臓は横隔膜のすぐ下、右上腹部に位置し、重さは成人で約1.2〜1.5kg。右葉と左葉に分かれ、さらに小葉構造(肝小葉)で構成されています。
肝小葉の中心には中心静脈があり、周囲に放射状に肝細胞が並びます。肝細胞の間を流れる血液は、類洞(sinusoid)という特殊な毛細血管を通過します。
肝臓は特徴的に二重血流(肝動脈+門脈)を受けます。
- 肝動脈:心臓からの酸素豊富な血液(約25%)
- 門脈:消化管・脾臓からの栄養に富む血液(約75%)
この二重の血流により、肝臓は「栄養処理」と「エネルギー供給」を同時に行える仕組みを持っています。
◆ 肝臓の主な働き
① 代謝機能(糖・脂質・タンパク質)
肝臓は栄養素の中継点として、体内のエネルギーバランスを調整しています。
- 糖代謝:余分なブドウ糖をグリコーゲンとして蓄える。必要に応じてグリコーゲン分解や糖新生を行い、血糖値を安定化。
- 脂質代謝:脂肪酸のβ酸化によってエネルギーを産生し、中性脂肪・コレステロール・リン脂質を合成。
- タンパク質代謝:アミノ酸からアルブミンや凝固因子を合成。アンモニアを尿素回路で無害化する。
ゴロ:「糖・脂・タン、解毒・胆」で肝臓の主な5機能を覚えましょう。
② 解毒機能
肝臓は体内に入った薬物・アルコール・アンモニアなどの有害物質を分解します。
アルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)→アセトアルデヒド→酢酸へと代謝。
また、薬物代謝酵素の代表格であるチトクロームP450系が、薬剤や毒素を代謝し胆汁または尿へ排泄します。
③ 胆汁の生成と分泌
肝細胞で生成された胆汁は、脂質の消化・吸収を助けます。胆汁中には胆汁酸・コレステロール・ビリルビンが含まれます。
胆汁酸は脂肪を乳化し、リパーゼによる分解を促進。ビリルビンは赤血球の代謝産物です。
◆ ビリルビン代謝と黄疸の仕組み
赤血球の寿命(約120日)が尽きると、脾臓で破壊され、ヘモグロビンが間接ビリルビンになります(脂溶性)。
この間接ビリルビンは肝臓でグルクロン酸抱合されて直接ビリルビン(水溶性)に変化。胆汁として排泄されます。
黄疸の分類:
- 前肝性(溶血性)→ 間接ビリルビン上昇
- 肝性(肝障害)→ 両方上昇
- 後肝性(閉塞性)→ 直接ビリルビン上昇
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◆ 肝機能検査の見方(国家試験でも重要)
- AST(GOT)・ALT(GPT):肝細胞障害の指標。ALTが特に肝臓特異性が高い。
- ALP・γ-GTP:胆道系障害を示唆。
- ビリルビン:黄疸の原因鑑別。
- アルブミン:肝の合成能の指標。
- PT(プロトロンビン時間):凝固因子合成低下を反映。
これらをセットで理解しておくと、国家試験でも臨床判断問題に強くなります。
◆ 救急現場での肝障害サインと対応
救急現場では、以下のサインを見逃さないことが大切です。
- 皮膚や眼球の黄染(黄疸)
- 腹部膨満や腹水(アルブミン低下)
- 出血傾向(凝固因子低下)
- 羽ばたき振戦・意識障害(肝性脳症)
肝性脳症ではアンモニアが中枢に作用し、意識障害・せん妄・昏睡を引き起こすため、臭気・発語・姿勢変化の観察が重要です。
◆ 肝臓と他臓器との関係
肝臓は腎臓・膵臓・循環系と密接に連携しています。
– 腎臓:肝性腎症により尿量減少や高アンモニア血症を誘発。
– 膵臓:胆汁うっ滞により膵炎を誘発することがある。
– 循環系:肝うっ血は右心不全時に出現し、肝腫大や腹水を生じる。
◆ 国家試験で狙われるポイントと出題例
- 肝動脈血と門脈血の割合(3:1)
- グリコーゲン・糖新生のメカニズム
- ビリルビン代謝経路の障害部位
- AST・ALTの上昇パターン
- アルブミン低下による浮腫形成
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◆ まとめ
肝臓は「代謝」「解毒」「胆汁生成」「貯蔵」「合成」という5大機能を持ち、全身の恒常性維持に不可欠です。
救急現場では、肝性脳症・ショック・薬物中毒など、肝機能の低下が直接的に生命を左右することもあります。
国家試験では「代謝経路」や「黄疸の鑑別」などが繰り返し出題されており、理解しておくことが合格・現場力向上の両方につながります。
次回は「胆嚢と膵臓の生理学」について詳しく解説予定です。
