子どもに多い「熱せん妄」はなぜ起きる?症状・原因・対処・受診の目安を徹底解説(国家試験対策にも)

さらに医療情報を知りたい方はこちら👉【素朴な疑問シリーズ】なんで熱が出るとけいれんするの?〜子どもの熱性けいれんのヒミツ〜


はじめに

「子どもが急に意味不明なことを言い始めた」「熱が出た後に夜中に起きて泣き叫ぶ」「親の顔を忘れたように怯えている」──。
そんな“急な混乱”が起きたとき、多くの保護者が真っ先に心配するのが 「熱せん妄(熱性せん妄)」 です。

熱せん妄は、発熱をきっかけに子どもに見られることが多く、
救急外来でも頻度が高い症状 のひとつです。
国家試験でも“せん妄(delirium)”は頻出。
基礎を正しく理解しておくことで、実務でも試験でも役立ちます。

この記事では、

  • 熱せん妄とは?
  • どんな症状が出る?
  • なぜ発熱で起きるの?
  • 脳炎・けいれんとの違い
  • 受診が必要な危険サイン
  • 救急隊や医療者が現場で確認するポイント
  • 国家試験で押さえるべき項目

を、一般読者にもわかりやすく、かつ国家試験勉強にも対応する深さで 解説します。


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熱せん妄とは?(定義)

発熱に伴って一時的に意識が混乱し、異常な言動や情緒不安定が出る状態 を指します。
せん妄(delirium)の一種であり、特に 小児に多い のが特徴です。

多くは38〜40℃の発熱時、夜間・眠りかけの時間帯 に見られます。

典型的な年齢

  • 3〜10歳に多い
  • 特に 5歳前後がピーク

持続時間

  • 数分〜1時間程度
  • 翌朝にはケロッと治っていることが多い

後遺症

  • 残らない

熱せん妄と聞くと怖く感じますが、大半は自然に改善する良性の経過 です。


熱せん妄で見られる主な症状

熱せん妄では、以下のような症状がみられます。


意識・認知の混乱

  • 人が誰か分からない
  • 場所が分からない
  • 夢と現実が混ざったような言動
  • つじつまの合わない発言

幻覚・妄想

  • 「虫がいる!」
  • 「怖い人が来る!」
  • 「誰かに呼ばれた」

など、視覚・聴覚の幻覚 がよく見られます。


行動異常

  • 急に立ち上がる
  • 意味のない徘徊
  • 泣き叫ぶ
  • 親を叩く・暴れる
  • 何かに怯える

感情の高ぶり

  • 不安
  • 恐怖
  • 大泣き
  • パニック状態

睡眠—覚醒リズムの崩れ

  • 夜間に突然起きて泣き叫ぶ
  • 入眠直後に混乱する

なぜ熱せん妄が起きるの?(原因をわかりやすく)

熱せん妄のメカニズムは完全には解明されていませんが、以下の要因が重なって起こると考えられています。


高熱による脳の機能低下

発熱により、

  • 脳の代謝亢進
  • 神経伝達の乱れ
  • 自律神経の異常興奮

などが起こり、意識レベルの調整が不安定になる。


子どもの脳は未成熟で影響を受けやすい

小児は大人より脳の制御系が未熟なため、
発熱による“揺さぶられやすさ”が大きい

特に

  • 松果体
  • 脳幹網様体
  • 自律神経系

などの “覚醒調整系” が未成熟で、異常な覚醒反応が出やすい。


睡眠不足・疲労

夜間に多いのは、睡眠リズムが崩れやすいため


脱水

小児は体表面積が広く、発熱時に 脱水になりやすい
脱水は脳の血流低下を招き、せん妄の誘因となる。


不安・ストレス

体調不良そのものがストレスとなり、
交感神経が過度に興奮してせん妄を誘発

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熱せん妄と間違えやすい病気(鑑別)

救急現場でも重要なのが 「熱せん妄で良いのか?もっと危険な病気では?」 という判断です。

以下は国家試験でも要注意。


熱性けいれん

最も重要な鑑別
熱せん妄とは全く異なる病態。

項目熱せん妄熱性けいれん
主症状意識の混乱・異常言動けいれん(手足の硬直・ガクガク)
意識ある程度保たれるけいれん後は混濁
持続数分〜1時間通常5分以内
後遺症なしなし

脳炎・髄膜炎(危険)

以下があれば即受診・救急要請

  • 頭痛が強い
  • ぐったりして目が合わない
  • 嘔吐を繰り返す
  • けいれんが長い
  • 光を嫌がる
  • 呼びかけに反応しない
  • 首が硬い(髄膜刺激症状)

熱せん妄とは異なり、脳に炎症が起きている重篤な病気


脱水・電解質異常

発熱時の水分不足でせん妄が悪化することも。


解熱剤の副作用

まれにNSAIDsなどで幻覚・錯乱が起きることがある。


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家庭でできる対処法(一般読者向け)

熱せん妄は「正しく落ち着いて対応すれば問題なし」。
ポイントは 安全確保 + 落ち着いた声かけ


安全を確保する

  • ベッドから落ちないか
  • 階段・窓に近づかない
  • 走り出さないように見守る

無理に押さえつけない

興奮は悪化し、恐怖がさらに強くなる。


落ち着いた声かけ

  • 「大丈夫だよ」
  • 「ママ(パパ)いるよ」

など、短く優しい声かけを。


可能なら水分を少し飲ませる

脱水を改善することで、症状が軽くなりやすい。


解熱剤の使用

  • アセトアミノフェン推奨
  • NSAIDsは慎重に(副作用の報告あり)

医療機関を受診すべき危険サイン

以下のような症状がある場合、熱せん妄以外の重症疾患の可能性があります。

この場合は救急車要請

  • 呼びかけに反応しない
  • 意識が戻らない
  • けいれんが5分以上続く
  • 呼吸が悪い
  • 嘔吐が激しい
  • 顔色不良(チアノーゼなど)

救急隊・医療者が現場で確認するポイント(国家試験にも有用)

国家試験では「せん妄=意識障害」「急性発症」「注意障害」がキーワード。


いつ発熱した?

発症時間の特定は重要。


睡眠・脱水状況

せん妄の誘因となる。


けいれんの有無

  • 全身性?
  • 持続時間?
  • 眼球偏倚?

バイタルサイン

  • 体温
  • 呼吸数
  • 心拍数
  • 意識(JCS)
  • SpO₂

行動内容の把握

  • 幻覚・妄想の有無
  • 徘徊・暴れる
  • 錯乱の程度

既往歴・内服歴

解熱剤副作用などの確認。


熱せん妄を防ぐためにできること(予防)

  • 発熱時のこまめな水分補給
  • 睡眠をしっかり確保
  • 部屋を静かに、暗くして寝かせる
  • 夜中に起きたとき落ち着いて対応する
  • 熱性けいれんの既往があれば、早めの解熱剤使用を検討

国家試験でよく問われるポイントまとめ

せん妄は内科・精神科・老年医学で頻出。
熱せん妄そのものは国家試験の直接出題は少ないですが、
「せん妄の特徴」として問われる範囲に完全に一致します。


【国家試験で押さえるべき点】

  • せん妄=急性の意識障害
  • 見当識障害・注意障害
  • 睡眠—覚醒リズムの障害
  • 夜間に悪化しやすい(夜間せん妄)
  • 原因:薬物、感染、脱水、疼痛、環境変化
  • 高齢者・小児で起こりやすい
  • 誘因を除去すると改善
  • 原因疾患の治療が最重要

熱せん妄は“せん妄の典型的パターン”として理解することで、試験に対応できます。


まとめ

  • 高熱
  • 脱水
  • 睡眠不足
  • 子どもの脳の未成熟

などが原因となり、夜間に突然異常な言動が出ることがあります。

多くは自然に治り、後遺症もありません。
ただし、危険サインがあれば脳炎やけいれんを疑い早期受診 が必要です。

一般の方が“慌てずに対応できる知識”として、
また国家試験を目指す方にとっての“せん妄理解の基礎”として、
この記事が役に立つ形でまとめました。

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By TETSU十郎

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