迷走神経反射(Vasovagal Reflex)および迷走神経失神(Vasovagal Syncope)は、日常の様々な場面で比較的よく起こる「気絶」の代表的な原因です。
救急現場においても頻繁に遭遇するだけでなく、救急救命士国家試験においても毎年のように問われる重要なテーマです。

本記事では、一般の読者の方にも理解していただけるよう、また国家試験受験生にとっても得点源になるよう、迷走神経反射と迷走神経失神を 医学的背景・仕組み・症状・鑑別・現場での対応・予防方法 の観点から丁寧に解説いたします。

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1. 迷走神経とは? ― 体を落ち着かせる神経

迷走神経(vagus nerve)は「副交感神経」の代表格であり、身体をリラックス状態へ導く働きがあります。
副交感神経は交感神経(“緊張” を作る神経)と対になり、体のバランスを整えています。

迷走神経の主な働き

  • 心拍数を下げる
  • 血圧を下げる(血管拡張作用)
  • 胃腸の動きを促進する
  • 気道を狭める
  • 唾液分泌を増やす

つまり、迷走神経が刺激されすぎると 脈がゆっくりになり、血圧が下がる という状態になります。
この反応が強く出ることが 迷走神経反射 の基本的な仕組みです。


2. 迷走神経反射とは? ― 身体の「守りの反応」が強すぎた状態

迷走神経反射(Vasovagal Reflex)とは、何らかのストレスや痛み・精神的緊張により、迷走神経が急激に強く働く状態です。

よくみられる誘因(非常に重要)

  • 採血や注射の恐怖
  • 血液を見たとき
  • 急激な痛み
  • 立ち続けている状態
  • 脱水・空腹・睡眠不足
  • 強い精神的ストレス
  • 排便時のいきみ(排便失神)

これらの刺激により、副交感神経が一気に優位になると、

  • 心拍数の急低下(徐脈)
  • 血圧の低下(血管拡張)
  • 脳への血流不足

が起こり、症状として現れてきます。

典型的には、

「顔面蒼白 → 冷や汗 → 吐き気 → 失神」

という流れで、救急現場でも頻繁に遭遇します。


3. 迷走神経失神とは? ― 迷走神経反射による“一時的な意識喪失”

迷走神経失神(Vasovagal Syncope)は、迷走神経反射によって引き起こされる 一過性の意識消失 です。
脳への血流が一時的に低下することで、短時間の気絶が起こります。

大半は短時間で回復しますが、倒れ方によっては外傷を伴うことがあり、救急の現場では注意が必要です。

発症の典型的な流れ

  1. 痛み・恐怖・ストレス・脱水などの誘因
  2. 迷走神経が急激に刺激される
  3. 血圧低下・徐脈
  4. 脳血流不足
  5. 意識消失
  6. すぐに回復するが、倦怠感がしばらく残ることもある

4. 前兆症状 ― 迷走神経失神の最大の特徴

迷走神経失神には、他の危険な失神とは違って「前兆」があることが非常に重要です。
国家試験でも頻出ポイントとなります。

前駆症状(非常に典型)

  • めまい
  • 耳鳴り
  • 目の前が暗くなる
  • 手足のしびれ
  • 冷や汗
  • 悪心(吐き気)
  • あくびが出る
  • 顔面蒼白
  • 動悸(初期)

これらの症状が出た時点で、横になる・水分を摂るなどの対策を行えば失神を防げることがあります。


5. 失神後の状態 ― 回復は速いが油断は禁物

迷走神経失神は、倒れて頭の位置が低くなることで脳血流が回復しやすく、意識が速く戻るのが特徴です。

失神後の典型

  • 数秒~1分程度で意識が戻る
  • しばらく倦怠感・悪心が残る
  • 再発の可能性がある(同じ刺激で再燃しやすい)

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6. 鑑別すべき危険な失神 ― 国家試験の超頻出ポイント

失神はすべてが良性というわけではありません。
迷走神経失神と見た目が似ていても、命に関わる疾患が隠れていることがあります。

鑑別が必要な「危険な失神」

疾患特徴
心原性失神(不整脈)前兆がない・突然倒れる・すぐ戻らない
大動脈弁狭窄症労作時の失神
肥大型心筋症若年でもあり得る・運動時
肺血栓塞栓症呼吸困難を伴う
低血糖発汗・意識障害が長い
脳卒中片麻痺・構音障害など随伴症状あり

国家試験では、

“前兆がある失神 → 迷走神経失神の可能性が高い”
と覚えておくと得点につながります。

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7. 発生のメカニズム(深掘り) ― 国家試験対策にも必須

迷走神経反射のメカニズムは “副交感神経の過剰反射” が中心ですが、もう少し深く見てみましょう。

● ① 心臓の機械受容器が誤作動する

精神的ストレスや痛みによって、
心臓の受容器が「血圧が上がりすぎた」と誤って判断します。

● ② 中枢で副交感神経が強く優位に

その結果、副交感神経が急激に刺激され、交感神経は抑制されます。

● ③ 徐脈+血管拡張 → 血圧低下

  • 心拍数低下(徐脈)
  • 血管拡張による血圧低下

この2つが同時に起こることが 脳血流低下 → 失神 の原因となります。

この反射を「ベゾルド–ヤーリッシュ反射」と呼ぶ

国家試験に出ることがあります。


8. 救急現場での対応 ― 最も重要なのは“姿勢”

迷走神経失神の多くは、適切な対応で重症化を避けられます。

● ① 安全確保・転倒防止

倒れると頭部外傷などにつながるため、
前兆を感じた時点で “横になること” が最も重要です。

● ② 体位

  • 仰臥位(横になる)
  • 足を軽く挙上(下肢挙上位)

これにより、脳への血流が早期に改善します。

● ③ バイタルサインの確認

  • 徐脈の有無
  • 血圧の低下
  • SpO₂
  • 意識の改善状況

● ④ 外傷のチェック

倒れた際に頭を打っている可能性があり要注意です。

● ⑤ 水分補給(脱水が疑われる場合)

経口摂取が可能であれば効果的です。

● ⑥ 救急要請が必要なケース

  • 意識がなかなか戻らない
  • 胸痛や息苦しさを伴う
  • 頭部を強く打っている
  • 初めての失神で原因不明
  • 心疾患の既往がある
  • 高齢者や妊婦の場合

9. 予防方法 ― 誘因を避ければ多くは防げる

迷走神経反射は、誘因を知れば予防できる場合が多いです。

予防のポイント

  • 脱水を避け、こまめに水分補給する
  • 長時間の立位を避ける
  • 採血・注射前に深呼吸を行う
  • 朝の急な立ち上がりを避ける
  • 不安が強い場合は座った姿勢で処置を受ける
  • 食事を抜かない(低血糖防止)

特に国家試験では、
「誘因 → 血管迷走神経反射 → 徐脈 → 失神」
という流れを理解することが重要です。


10. 国家試験のまとめポイント

以下は試験に非常に出やすい内容です。

  • 迷走神経失神は 前駆症状 がある
  • 失神後は速やかに回復する
  • 誘因は「痛み・恐怖・脱水・長時間立位」
  • 徐脈・血圧低下が起こる
  • ベゾルド–ヤーリッシュ反射が関与
  • 鑑別すべきは心原性失神(前兆なし・突然)

11. 一般の方へのまとめ

迷走神経失神は命に関わることはほとんどありませんが、
“転倒による怪我” がもっとも大きなリスクです。

そのため、

  • 前兆を感じたらすぐ座る・横になる
  • 水分を摂る
  • 無理をしない

これらを意識していただくことで予防につながります。


12. まとめ

迷走神経反射と迷走神経失神は、多くの人が経験し得る一般的な症状でありながら、
救急現場ではきちんと鑑別すべき重要なテーマです。
国家試験の出題頻度も高く、正確な知識が必要になります。

  • 迷走神経が過剰に働くことにより、血圧と脈拍が低下
  • 誘因は痛み・恐怖・脱水など
  • 前兆を察知すれば予防可能
  • 危険な失神(心原性など)との鑑別が重要
  • 救急対応は “体位の確保” が最優先

迷走神経失神は正しく理解すれば怖いものではありません。
知っておくことで、ご自身や周囲の安全確保に役立ちます。

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By TETSU十郎

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