―「迷ったら呼んでいい」と「それは今じゃない」を正確に切り分ける―
はじめに|なぜこの話を“本音で”書くのか

「こんなことで救急車を呼んでいいのか分からなかった」
「呼ばなきゃよかったかもしれない…」
「周りに迷惑だと思われたくなかった」
救急現場で、私たち救急隊が何度も耳にする言葉です。
一方で現実には、
- 「明らかに危険なのに我慢してしまった」
- 「あと30分遅れていたら命に関わっていた」
- 「“様子を見る”を選んだ結果、重症化した」
そんなケースも少なくありません。
この記事では、
建前ではなく、救急隊の“本音”として
- 救急車を呼ばなくていいケース
- 絶対に呼ぶべきダメなケース
- 迷ったときの現実的な判断基準
を、徹底的に解説します。
結論から言う|救急隊の本音はこれ
最初に、誤解のないように結論を言います。
「本当に必要なときに呼ばれない」ことの方が、
「必要性が低いかもしれないのに呼ばれる」より、
はるかに危険で、はるかに困る
これが、救急隊の偽らざる本音です。
第1章|救急車を「呼ばなくていい」ケースとは
1-1 呼ばなくていい=「今すぐでなくても安全なケース」
まず重要なのは、
「呼ばなくていい」=「医療が不要」ではない
という点です。
以下は、緊急性が低く、救急車である必要性が乏しいと判断されやすいケースです。
1-2 救急車を呼ばなくていい可能性が高いケース
● 数日前から変化のない軽い症状
- 3日前から続く軽い腰痛
- 以前からある慢性的な肩こり
- 発熱はあるが元気で食事・水分が取れている
➡ 急激な悪化がなく、生活動作が保たれている
● 明らかな軽症外傷
- 転倒したが歩行可能
- 小さな切り傷で止血されている
- 腫れや痛みが軽度で増悪していない
● 病院・診療所に自力で行ける状態
- 会話が普通にできる
- 歩行・車移動が可能
- 呼吸苦・意識障害がない
● 不安が主な理由の場合
- 「なんとなく心配」
- 「念のため診てもらいたい」
- 「誰かに判断してほしい」
➡ この場合は #7119(救急相談窓口)が最適
1-3 救急隊が「これは救急車じゃなくていいな」と感じる瞬間
救急隊が現場で正直に思うのは、次のような状況です。
- 症状が数日前から全く変わっていない
- 痛みがあるが、本人は普通に歩いている
- 家族全員が冷静で緊迫感がない
👉 ただし
それでも「呼んだこと自体」を責めることはありません。
第2章|これはダメ|絶対に救急車を呼ぶべきケース
救急隊の現場でも重視するのは客観的な情報です。迷ったら、この4つがあれば判断材料になります。
📘 いざというときの救急・応急手当ガイド
夜間や休日など、すぐに医療機関へ相談できない場面で、
「救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいか」の判断を助けてくれる一冊。
一般の方にも分かりやすく、家庭に1冊あると安心です。
🧰 家庭用 救急セット(ファーストエイドキット)
軽いケガや体調不良時の応急対応に役立つ救急セット。
「様子を見る」判断になった場合でも、適切な初期対応ができます。
防災備蓄としてもおすすめです。
🩺 パルスオキシメーター(血中酸素濃度計)
息苦しさや発熱時にSpO₂(血中酸素飽和度)を確認でき、
「今すぐ受診すべきか」の判断材料になります。
高齢者のいる家庭では特に有用です。
ここからが本当に重要なパートです。
2-1 救急隊が一番怖いのは「我慢されたケース」
救急隊が最も嫌うのは、
「我慢して、遅れて、手遅れになること」
以下は、迷わず119番してほしい危険サインです。
2-2 これが出たら即119|危険サイン一覧

● 意識に異常がある
- 呼びかけに反応が鈍い
- 会話が噛み合わない
- 突然ぼーっとする
➡ 脳卒中・低血糖・重篤感染症の可能性
● 呼吸が苦しい
- 息が荒い
- 横になると苦しい
- 会話が途切れる
➡ 心不全・喘息重積・肺塞栓などの可能性
● 胸の痛み・圧迫感
- 冷汗を伴う
- 左腕・顎・背中に広がる痛み
- 「今までと違う」胸の違和感
➡ 急性冠症候群(心筋梗塞)を疑う
● 片側だけのしびれ・脱力
- 顔が歪む
- 片腕が上がらない
- 言葉が出ない
➡ 脳卒中(FASTサイン)
● 激しい頭痛・今までにない痛み
- バットで殴られたような頭痛
- 突然の激痛
➡ くも膜下出血の可能性
● 高齢者・乳幼児で様子が明らかにおかしい
- 元気がない
- 食事・水分が取れない
- ぐったりしている
第3章|「迷ったらどうする?」現実的な判断フロー
3-1 3つの質問で考えてほしい
迷ったら、次の3つを自分に問いかけてください。
- いつもと明らかに違うか?
- 時間とともに悪化しているか?
- 自力で病院に行けないか?
👉 1つでも「はい」なら、119番を検討してOK
3-2 #7119 と 119 の正しい使い分け
| 状況 | 適切な窓口 |
| 判断に迷う | #7119 |
| 明らかに危険 | 119 |
| 夜間・休日で不安 | #7119 |
| 意識・呼吸異常 | 119 |
内部リンク例
👉 #7119と119の判断基準を救急隊が解説
第4章|「呼ばなくていい」と「呼んではいけない」は違う
ここを混同している人が非常に多いです。
- ❌ 呼ばなくていい=呼んではいけない
- ⭕ 呼ばなくていい=緊急性が低い可能性が高い
救急車は**医師の診断前に使う“安全側の選択肢”**です。
第5章|救急隊が伝えたい本音メッセージ
5-1 私たちは「適正利用」を盾にしたいわけじゃない
救急隊が本当に伝えたいのは、
「遠慮せず、でも正しく迷ってほしい」
ということです。
5-2 救急隊はこういう通報を責めない
- 結果的に軽症だった
- 相談した結果、救急車になった
- 不安で判断できなかった
👉 これらはすべて“正しい使い方”
第6章|関連記事
- 救急車を呼んでいいのに“呼ばなかった人”が後悔した実例 — TETSU十郎/救急救命士/防災士
- 夜間・休日に「病院に行くべきか迷う症状」完全ガイド — TETSU十郎/救急救命士/防災士
- 突然「片側だけ」しびれる…救急車を呼ぶべき危険サインを救急隊が解説 — TETSU十郎/救急救命士/防災士
第7章|根拠となる公的情報リンク
- 総務省消防庁
https://www.fdma.go.jp/ - 日本救急医学会
https://www.jaam.jp/ - 厚生労働省「上手な医療のかかり方」
広報誌「厚生労働」|厚生労働省
まとめ|この記事で一番伝えたいこと

最後に、これだけ覚えておいてください。
「呼んでよかった」と後悔する人はいない
「呼ばなかった」後悔は、一生残ることがある
迷ったら、相談すること自体が正解です。


