はじめに

「朝、寝返りを打った瞬間に天井がグルグル回る」
「数十秒で治まるけど、また頭を動かすと起こる」

こうした症状がある場合、**良性発作性頭位めまい症(BPPV:Benign Paroxysmal Positional Vertigo)**の可能性があります。
耳の奥にある小さな“石”(耳石)が原因となる代表的なめまいの一つで、救急現場でも遭遇頻度が高い疾患です。

この記事では、一般の方にもわかりやすく、かつ救急救命士や医療職が国家試験対策にも使えるように、BPPVの原因・症状・診断・治療・救急対応まで徹底解説します。


📚めまい・メニエール病の理解を深めるおすすめ書籍

📚参考図書(めまい・平衡障害の理解を深めるために)

※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。
救急隊員・医療従事者・国家試験受験者の“めまい対応スキル”を高める参考書としてご活用ください。

内耳のしくみを知ろう

めまいを理解するには、まず「平衡感覚を司る器官」を知ることが大切です。

内耳には、

  • 三半規管(回転を感じる)
  • 耳石器(卵形嚢・球形嚢)(直線加速度を感じる)

という2つの平衡感覚器があります。

三半規管の中はリンパ液で満たされており、頭が動くと液体が流れ、その動きを感知します。
一方、耳石器には「耳石(カルシウムの粒)」があり、重力や傾きを感知します。


BPPVの原因

BPPVは、耳石が本来あるべき耳石器からはがれて、三半規管の中に入り込むことで起こります。

この耳石が三半規管内で動くことで、感覚毛が誤って刺激され、「実際には動いていないのに動いている」と脳が勘違いし、強い回転性めまいを感じます。

耳石が剥がれる原因

  • 加齢による変性
  • 頭部外傷
  • 長期間の寝たきり・安静
  • 内耳炎の後遺症
  • 特発性(原因不明)

特に中高年女性に多く見られます。


症状の特徴

BPPVのめまいには、次のような特徴があります。

特徴内容
発作性めまいは数秒〜1分程度で自然に治まる
頭位依存性頭の向きや姿勢を変えたときに誘発される
反復性同じ動作で繰り返し起こる
伴随症状吐き気・嘔吐・眼振を伴うことが多い
聴覚症状難聴や耳鳴りは伴わない(重要)

耳鳴りや難聴を伴う場合は、メニエール病など他疾患を疑います。


📚めまい・メニエール病の理解を深めるおすすめ書籍

📚参考図書(めまい・平衡障害の理解を深めるために)

※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。
救急隊員・医療従事者・国家試験受験者の“めまい対応スキル”を高める参考書としてご活用ください。

国家試験対策ポイント①:鑑別

救急救命士国家試験でよく問われるのは「鑑別」と「特徴の違い」です。

疾患名めまいの性状聴覚症状原因部位
BPPV頭位で誘発、短時間なし三半規管(耳石)
メニエール病数十分〜数時間続くあり内リンパ水腫
前庭神経炎数日間持続なし前庭神経
脳幹・小脳障害持続性・歩行障害あり得る中枢性

この表を覚えておくだけで、国家試験の「めまい」分野は一気に得点源になります。


診断のキーポイント

⇒ ディックス・ホールパイク法(Dix–Hallpike test)

代表的な誘発検査です。
患者を座位から素早く仰臥位に倒して頭を回転させると、特徴的な**眼振(回旋性・遅発性・疲労性)**が出現します。

⇒眼振の方向で、どの半規管が障害されているかを推測できます。

国家試験でも頻出です。


治療とリハビリ

⇒ エプレー法(Epley法)

最も有名な耳石置換法です。
頭を順に動かすことで、三半規管に迷い込んだ耳石を元の耳石器に戻します。
救急救命士でも知っておくべき代表的な手技名です。

薬物療法

  • 抗めまい薬(メクリジンなど)
  • 吐き気止め(メトクロプラミドなど)
  • 血流改善薬(ベタヒスチンなど)

症状が強い時に一時的に使用します。


救急現場での対応

BPPVは生命に直結する疾患ではありませんが、脳卒中との鑑別が極めて重要です。

救急現場での評価ポイント

  • 発症様式(急か?徐々にか?)
  • 持続時間(秒か、分〜時間か?)
  • 神経症状(麻痺・構音障害・複視)
  • 既往(高血圧・糖尿病・脳梗塞など)

⇒一見BPPVでも、中枢性めまい(脳梗塞や小脳出血)を見逃すと重篤化するため、「少しでも違和感があれば病院搬送」が鉄則です。


国家試験対策ポイント②:眼振の特徴

  • 外向き+上向き回旋性眼振 → 後半規管型BPPV
  • 水平性眼振 → 外側半規管型BPPV

BPPVは「遅発性・疲労性・誘発性」が特徴です。
この3つのキーワードを覚えましょう。


予防と生活の工夫

  • 朝起きる時はゆっくり頭を起こす
  • 急な頭の動きを避ける
  • 長期間の寝たきりを防ぐ(リハビリ重要)
  • 枕の高さを調整して首への負担を減らす

国家試験頻出ポイントまとめ

  • 原因:耳石の迷入(三半規管内)
  • 症状:頭位依存性・短時間の回転性めまい
  • 眼振:遅発性・疲労性・誘発性
  • 聴覚症状:なし
  • 鑑別:メニエール病との違い
  • 検査:Dix–Hallpike
  • 治療:Epley法

📚めまい・メニエール病の理解を深めるおすすめ書籍

📚参考図書(めまい・平衡障害の理解を深めるために)

※上記リンクはAmazonアソシエイトを利用しています。
救急隊員・医療従事者・国家試験受験者の“めまい対応スキル”を高める参考書としてご活用ください。


まとめ

BPPVは、耳の中の“耳石”という小さな粒が動くだけで、激しいめまいを引き起こす病気です。
ほとんどは自然軽快しますが、再発も多いため正しい理解が大切です。

また、国家試験では「めまいの分類」「特徴」「眼振の性状」「鑑別」が定番の出題分野。
ここを押さえれば、確実に点が取れるテーマです。

By TETSU十郎

https://gravatar.com/patroldifferent1a0b6e1b63