腹痛で救急車を呼ぶべき?119番する症状と自宅で様子を見られる目安

「急にお腹が痛くなったけれど、救急車を呼ぶほどなのか分からない」

「夜中だから、朝まで様子を見ても大丈夫?」

「腹痛だけで119番してもいいの?」

腹痛は、食べ過ぎや便秘、胃腸炎などでも起こる身近な症状です。

一方で、腹部大動脈瘤破裂や消化管穿孔、腸閉塞など、緊急治療が必要な病気の症状として現れることもあります。

大切なのは、「お腹がどれくらい痛いか」だけで判断しないことです。

特に、

・突然発症した
・激しい痛みが続いている
・意識がおかしい
・冷や汗や顔面蒼白がある
・吐血や血便がある
・胸や背中まで激しく痛む
・お腹が硬い
・妊娠の可能性があり強い腹痛がある

といった症状がないかを確認してください。

この記事では腹痛が起きたときに、

①119番通報を検討する状態
②救急車までは必要なくても早めに病院を受診する状態
③自宅で様子を見られる可能性がある状態

の3段階に分けて解説します。


結論|腹痛は「痛みの強さ」だけで判断しない

腹痛があっても、すべてのケースで救急車が必要なわけではありません。

しかし、腹痛の原因は自宅では判断できないことも多く、軽そうに見えても重い病気が隠れている場合があります。

判断するときに特に重要なのが、

「発症の仕方」「腹痛以外の症状」「全身状態」

です。

① こんな腹痛は119番通報を検討してください

次のような症状がある場合は、緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。

・突然始まった激しい腹痛
・激しい腹痛が続いている
・冷や汗や顔面蒼白がある
・意識がぼんやりしている、反応がおかしい
・支えなしでは立てない、急に動けなくなった
・お腹が硬くなっている
・血を吐いた
・便に血が混じる、または真っ黒な便が出た
・胸や背中にも激しい痛みがある
・息苦しさを伴っている
・妊娠中、または妊娠の可能性があり、強い腹痛や出血がある

このような場合には、腹部大動脈瘤破裂、大動脈解離、消化管穿孔、腸管の血流障害など、緊急治療が必要な病気も考えられます。

「もう少し様子を見よう」と無理に我慢せず、119番通報を検討してください。

救急車を呼ぶべきか判断に迷っている方は、こちらの記事も参考にしてください。
→「救急車を呼ぶか迷ったら|119番する症状と判断の目安」

腹痛と血便を伴う場合は、便の色や量だけでなく、腹痛の強さや全身状態も重要です。
→「血便で救急車を呼ぶべき?119番する症状と受診の目安」

② 救急車までは必要なくても、早めに受診した方がよい腹痛

119番を検討する危険な症状には当てはまらなくても、次のような場合は医療機関への受診を検討してください。

・腹痛が続いている
・時間とともに痛みが強くなっている
・発熱を伴っている
・嘔吐を繰り返している
・水分や食事が十分に取れない
・下痢が続いている
・お腹が張っている
・便やおならが出ない
・みぞおち付近から右下腹部へ痛みが移ってきた
・排尿時の痛みや血尿を伴う
・同じような腹痛を繰り返している

「救急車を呼ぶほどではなさそう=受診しなくてよい」ではありません。

救急車が必要かどうかと、病院を受診する必要があるかどうかは別です。

症状が続く、悪化する、普段と違うと感じる場合は、早めの受診を検討してください。

腹痛と一緒に血尿が出ている場合は、血尿の緊急性についても確認してください。
→「血尿で救急車を呼ぶべき?119番する症状と受診の目安」

③ 自宅で様子を見られる可能性がある腹痛

119番や早めの受診を検討する症状がなく、次のような状態であれば、自宅で経過をみられることもあります。

・痛みが軽く、時間とともに改善している
・水分が取れている
・嘔吐を繰り返していない
・血便や吐血がない
・意識や呼吸に異常がない
・普段どおり動くことができる
・強い発熱がない
・お腹が硬くなっていない
・前述した危険なサインがない

ただし、これは「重い病気ではない」と断定するための基準ではありません。

腹痛は時間の経過とともに症状が変化することがあります。

一度軽くなったとしても、

痛みが強くなる・長く続く・新しい症状が出る・全身状態が悪くなる

といった変化があれば、受診を検討してください。


腹痛に嘔吐や下痢を伴う場合

腹痛と一緒に嘔吐や下痢がある場合は、胃腸炎や食中毒などでもみられます。

ただし、

・水分を飲んでも吐いてしまう
・嘔吐や下痢を何度も繰り返す
・血便が出る
・強い腹痛が続く
・ぐったりしている
・意識の様子がおかしい

といった場合は注意が必要です。

特に、強い腹痛と血便を伴う場合は、単なる下痢と考えて様子を見続けないことが大切です。

腹痛だけでなく、脱水や全身状態も含めて判断してください。

食事のあとに腹痛や嘔吐、下痢などが起きた場合は、食中毒の可能性もあります。
→「食中毒で救急車を呼ぶべき?119番する症状と受診の目安」

嘔吐を繰り返している場合は、腹痛だけでなく脱水や全身状態にも注意が必要です。
→「嘔吐で救急車を呼ぶべき?119番する症状と自宅で様子を見られる目安」

下痢が続いている場合は、回数だけでなく血便や腹痛、脱水症状なども確認してください。
→「下痢で救急車を呼ぶべき?119番する症状と自宅で様子を見られる目安」


腹痛では「どこが・いつから・どのように痛むか」も重要

腹痛は単純に「胃が悪いから痛い」というものではありません。

胃や腸だけでなく、胆嚢、膵臓、血管、尿路、婦人科疾患、さらには心臓の病気でも腹痛として感じることがあります。

そのため、痛みの場所だけではなく、いつ始まったのか、どのような痛みなのか、痛む場所が変化しているのかなども重要です。

痛みの種類|内臓痛・体性痛・関連痛

腹痛は医学的に「内臓痛」「体性痛」「関連痛」に分けて考えることがあります。

内臓痛

胃や腸などの臓器が引き伸ばされたり、強く収縮したりすることなどによって起こる痛みです。

・場所がはっきりしない
・お腹全体が痛いように感じる
・鈍く重い
・痛みに波がある
・吐き気や冷や汗を伴う

などの特徴があります。

胃腸炎、胆石発作、尿管結石、初期の虫垂炎、腸閉塞などでみられることがあります。

体性痛

腹膜が刺激されることで起こる痛みです。

・痛む場所が比較的はっきりしている
・動くと痛い
・咳や振動で痛む
・強い痛みが持続する
・お腹が硬くなることがある

などの特徴があります。

消化管穿孔、腹膜炎、進行した虫垂炎などでみられることがあります。

関連痛

内臓の異常による痛みを、本来とは違う場所の痛みとして感じることがあります。

例えば、

・胆道系の病気 → 右肩周辺
・急性膵炎 → 背中
・心筋梗塞 → みぞおち
・大動脈解離 → 背中
・尿管結石 → 鼠径部周辺

などです。

「お腹が痛い=お腹の臓器だけの病気」とは限りません。


腹痛で受診するときに伝えたい「OPQRST」

腹痛で病院を受診したり救急車を要請したりしたときは、痛みの経過を伝えることが重要です。

医療現場では、症状を整理する方法の一つとして「OPQRST」が使われます。

O(Onset)|発症

いつから痛いのか。突然始まったのか、徐々に始まったのか。

P(Provocation / Palliation)|増悪・軽減

何をすると痛みが強くなるのか。何をすると楽になるのか。

Q(Quality)|痛みの性質

刺すような痛み、締め付けられる痛み、鈍い痛みなど。

R(Region / Radiation)|場所・放散

どこが痛いのか。背中、肩、腰、鼠径部などへ広がっていないか。

S(Severity)|痛みの強さ

0を「痛くない」、10を「想像できる最も強い痛み」とした場合、どの程度なのか。

T(Time)|時間経過

痛みがずっと続いているのか、波があるのか。時間とともに悪化しているのか。

すべて覚える必要はありません。

「いつから・どこが・どのように・どれくらい痛いか」「痛みがどう変化したか」

を伝えられると、診察や救急隊の観察の重要な手掛かりになります。


お腹の痛む場所から考えられる代表的な病気

腹部には多くの臓器があるため、痛む場所によって考えられる病気も変わります。

みぞおち

胃炎、胃・十二指腸潰瘍、急性膵炎など。

ただし、心筋梗塞など心臓の病気でも、みぞおちの痛みとして感じることがあります。

右上腹部

胆石症、胆嚢炎、胆管炎など。

左上腹部

胃、膵臓、脾臓などの病気。

右下腹部

虫垂炎、尿管結石、婦人科疾患など。

左下腹部

憩室炎、虚血性腸炎、婦人科疾患など。

お腹全体

胃腸炎、腸閉塞、腹膜炎など。

重篤な血管疾患でも広い範囲の腹痛が起こることがあります。

痛む場所だけで病気を決めつけることはできません。

痛む場所が移動してきた場合にも注意

虫垂炎では、最初から右下腹部が痛むとは限りません。

初期にはみぞおちやおへその周囲が痛み、その後、右下腹部へ痛みが移動してくることがあります。

「最初に痛かった場所」と「現在痛い場所」が違う場合は、その経過も受診時に伝えてください。


命に関わることがある腹痛の原因

腹痛の原因の中には、迅速な診断や治療が必要な病気があります。

代表的なものを知っておきましょう。

腹部大動脈瘤破裂

腹部を通る大動脈にできた「こぶ」が破裂し、大量出血を起こす非常に危険な状態です。

突然の激しい腹痛や腰・背中の痛み、冷や汗、顔面蒼白、意識状態の悪化などを伴うことがあります。

大動脈解離

大動脈の壁が裂ける病気です。

突然の胸痛や背部痛が代表的ですが、解離する場所によっては腹痛として現れることもあります。

「突然始まった」「非常に強い」「胸や背中にも痛みがある」といった場合は注意が必要です。

消化管穿孔・腹膜炎

胃や腸などに穴が開くと、消化管の内容物が腹腔内へ漏れ、腹膜炎を起こすことがあります。

突然の強い腹痛、持続する痛み、お腹が硬くなる、動くと強く痛むなどがみられることがあります。

腸閉塞

腸の内容物が先へ進めなくなった状態です。

・お腹が張る
・吐き気や嘔吐
・便やおならが出ない

などを伴うことがあります。

過去に腹部の手術を受けたことがある人などでは注意が必要です。

腸管の血流障害

腸へ流れる血液が不足すると、腸管が障害されることがあります。

強い腹痛を起こし、緊急治療が必要になる場合があります。

特に高齢者や心血管系の病気がある人では注意が必要です。

急性胆管炎

胆管に感染が起こる病気です。

右上腹部やみぞおちの痛み、発熱、黄疸などがみられることがあります。

重症化すると全身状態が悪化することがあります。

急性膵炎

みぞおち付近の強い痛みが特徴で、背中まで痛むことがあります。

吐き気や嘔吐を伴うこともあります。

重症化する場合があるため、強い痛みが続く場合は受診が必要です。

婦人科系の緊急疾患

異所性妊娠や卵巣茎捻転などでも強い腹痛が起こることがあります。

妊娠の可能性があり、

・強い腹痛
・性器出血
・冷や汗
・ふらつき
・意識状態の悪化

などがある場合は、緊急性を考える必要があります。


高齢者の腹痛は「痛みの強さ」だけで判断しない

高齢者では、重い病気があっても典型的な症状がそろわない場合があります。

「痛みがそれほど強くないから大丈夫」と決めつけず、

・普段より元気がない
・食事や水分が取れない
・ぼんやりしている
・急にふらつく、立っていられない
・顔色が明らかに悪い

など、普段との違いも確認してください。

特に、意識がおかしい、急に立てなくなった、顔色が明らかに悪いなど、全身状態に異常がある場合は119番通報を検討してください。


子どもの腹痛で119番を考える症状

子どもは症状をうまく言葉で説明できないことがあります。

特に、

・激しい腹痛で苦しがっている
・嘔吐が止まらない
・便に血が混じる
・激しい嘔吐や下痢で水分が取れず、意識がはっきりしない
・顔色が明らかに悪い
・呼吸が苦しそう、呼吸が弱い

などがある場合は119番通報を検討してください。

それ以外でも、

・ぐったりしている
・水分が取れない
・尿が極端に少ない
・腹痛が続く、悪化する

などがあれば、早めの受診を検討します。

特に小さな子どもでは、本人が痛みを正確に説明できないことがあります。

症状だけでなく、「いつもと明らかに様子が違う」という家族の気づきも重要です。


救急車を呼ぶべきか迷ったら

腹痛は原因が非常に多く、自宅で緊急性を完全に判断することは困難です。

119番するべきか、病院を受診するべきか判断に迷う場合には、地域によっては救急相談窓口「#7119」を利用できます。

#7119では、医師・看護師などの専門家に「救急車を呼ぶべきか」「すぐに病院を受診するべきか」などを相談できます。

ただし、

・意識がおかしい
・呼吸がおかしい
・突然の激しい腹痛
・激しい腹痛が続いている
・冷や汗や顔面蒼白がある
・吐血や血便、黒い便がある
・急速に状態が悪化している

など、明らかな危険サインがある場合は、相談を挟まず119番通報を検討してください。


まとめ|腹痛は「痛み+全身状態」で判断する

腹痛が起きたときに重要なのは、痛みの強さだけではありません。

突然発症したか、痛みが続いているか、意識や呼吸に異常がないか、冷や汗や顔面蒼白がないか、吐血・血便がないか、胸や背中にも痛みがないか

などを確認してください。

119番通報を検討

突然の激しい腹痛、激しい腹痛が続く、意識の変化、冷や汗・顔面蒼白、吐血・血便・黒い便、胸や背中まで及ぶ激痛など。

早めに受診

腹痛が続く・悪化する、発熱、繰り返す嘔吐、お腹の張り、水分が取れない、排尿時痛や血尿など。

自宅で様子を見られる可能性

危険な症状がなく、腹痛が軽く改善傾向で、水分が取れ、全身状態が良好な場合。

ただし、腹痛の原因を症状だけで完全に見分けることはできません。

「いつもの腹痛と違う」「時間とともに悪化している」「何かおかしい」

と感じる場合は、無理に我慢せず医療機関への受診を検討してください。

参考・根拠

この記事は、以下の公的機関・医学会の情報を参考に作成しています。

・厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」

・総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」

・日本循環器学会「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」

・日本消化器病学会「一般のみなさまへ/消化器のひろば」