救命講習とは?種類・内容・受講方法を救急救命士がわかりやすく解説

はじめに

突然、目の前で家族や友人、職場の同僚が倒れたら、あなたは落ち着いて行動できますか。

「119番通報をすれば大丈夫」と思う方も多いかもしれません。しかし、救急隊が現場へ到着するまでには一定の時間がかかります。その間に傷病者の命をつなぐのは、その場に居合わせた人による応急手当です。

心停止では、一刻も早く胸骨圧迫やAEDによる対応を開始することが重要であり、その知識や技術を身につけるために行われているのが救命講習です。

「医療の知識がないから難しそう」「自分には関係ない」と思っている方もいるかもしれませんが、救命講習は一般市民を対象としており、学生から高齢者まで誰でも受講できます。

この記事では、救命講習とはどのような講習なのか、なぜ受講することが大切なのか、そして講習ではどのようなことを学ぶのかを、救急救命士の視点からわかりやすく解説します。

🚑 救急救命士国家試験・学習教材おすすめ

国家試験対策から現場応用まで、“救急救命士”を目指す方・指導する方のための教材を紹介します。

🛠 学習を深めるヒント

  • テキストを「読む」より「つくる」:章末まとめを自分で図解・カード化すると理解が定着します。
  • 間違いの振り返り:問題集は“なぜ間違えたか”を書き出して次に活かしましょう。
  • 反復教材を活用:Deru-Qや〇×問題集は、通勤・休憩時間の“繰り返し”用に。
  • 模試形式の練習:本番同様に時間を計り、“試験モード”の集中力を養う。
  • 気分転換教材を1冊:語呂・イラスト系参考書を加えて「継続しやすい環境」をつくる。

救命講習とは?

救命講習とは、突然の病気やケガで倒れた人に対し、救急隊が到着するまでに必要な応急手当を学ぶ講習です。

全国の消防本部をはじめ、日本赤十字社や自治体などが実施しており、医療従事者だけではなく一般市民を対象に開催されています。

講習では、座学だけではなく、人形やAEDトレーナーを使用した実技を通して、実際に体を動かしながら学びます。

知識を身につけるだけではなく、「いざという時に行動できること」を目的としている点が、救命講習の大きな特徴です。


なぜ救命講習が必要なのか

救急医療では、「最初の数分間」が傷病者の命を左右することがあります。

特に心停止では、心臓が血液を送り出せなくなるため、脳や全身へ酸素が届かなくなります。

119番通報を行えば救急隊が出動しますが、到着までには時間が必要です。その間に何も行われなければ、傷病者の状態はさらに悪化する可能性があります。

一方で、その場に居合わせた人が胸骨圧迫を開始し、AEDを使用することで、救命につながる可能性が高まることが知られています。

救命講習は、この「救急隊が到着するまでの時間」を支えるための知識と技術を学ぶ講習です。


救命講習を受けるメリット

落ち着いて行動できる

突然、人が倒れる場面に遭遇すると、多くの人は何をすればよいのか分からず、時間だけが過ぎてしまいます。

しかし、救命講習を受講していれば、

  • 周囲の安全を確認する
  • 傷病者の反応を確認する
  • 119番通報を依頼する
  • AEDを持ってきてもらう
  • 胸骨圧迫を開始する

という基本的な流れを理解しているため、慌てずに行動しやすくなります。


大切な人を守ることにつながる

救命処置が必要になるのは、駅や商業施設だけではありません。

実際には、自宅で家族が突然倒れるケースも少なくありません。

もし目の前で家族や友人が心停止になった場合、最初に対応するのは近くにいるあなたかもしれません。

救命講習で学んだ知識や技術は、そのような場面で大切な人の命を守る力になります。


AEDを使うことへの不安が少なくなる

街中や学校、スポーツ施設、駅などにはAEDが設置されています。

しかし、

  • 操作方法が分からない
  • 間違えてしまいそう
  • 本当に自分が使っていいのか不安

という理由で使用をためらう人も少なくありません。

救命講習では、AEDトレーナーを使って実際の操作を体験できます。

一度でも操作を経験しておくことで、緊急時にも落ち着いて対応しやすくなります。


災害時にも役立つ

地震や台風などの大規模災害では、救急隊の到着が通常より遅れる場合があります。

そのような状況では、地域住民同士で助け合う「共助」が非常に重要になります。

救命講習で学ぶ胸骨圧迫やAEDの使用方法、止血法、気道異物除去などは、災害時にも役立つ知識と技術です。


医療従事者でなくても受講できる?

もちろん受講できます。

救命講習は、医療従事者ではなく一般市民を対象として開催されている講習です。

医療の専門知識がなくても理解できる内容となっており、消防職員や指導員が実技を交えながら丁寧に説明してくれます。

実際に受講される方は、

  • 学生
  • 会社員
  • 子育て中の保護者
  • 高齢者

などさまざまで、「初めて参加した」という方も少なくありません。

「もしもの時に役立てたい」という気持ちがあれば、誰でも安心して受講できます。

この続きでは、「救命講習では何を学ぶのか」を中心に、胸骨圧迫・AED・人工呼吸・気道異物除去・止血法などを詳しく解説していきます。

救命講習では何を学ぶ?実際の講習内容をわかりやすく解説

救命講習では、「救急隊が到着するまでに一般市民が実施できる応急手当」を中心に学びます。

講習は座学だけではなく、実技が中心です。

人形やAEDトレーナーを使用しながら、実際の現場を想定して繰り返し練習するため、初めて受講する方でも実践的な知識と技術を身につけることができます。

ここでは、多くの消防本部で実施されている救命講習の主な内容を紹介します。


周囲の安全確認と反応の確認

傷病者を発見したら、まず確認するのは自分自身の安全です。

交通事故現場や火災現場など、危険な場所へ不用意に近づくと、救助する人まで負傷してしまう可能性があります。

周囲の安全を確認したら、傷病者に近づき、肩を軽くたたきながら大きな声で呼びかけます。

反応がなければ、周囲の人へ協力を求め、

  • 119番通報
  • AEDの手配

を依頼します。

この最初の対応が、その後の救命活動につながります。


呼吸の確認

反応がない場合は、呼吸を確認します。

講習では、「普段どおりの呼吸」があるかどうかを短時間で確認する方法を学びます。

心停止では、「死戦期呼吸」と呼ばれる途切れ途切れの異常な呼吸がみられることがあります。

この呼吸を正常な呼吸と勘違いしてしまうと、胸骨圧迫の開始が遅れてしまう可能性があります。

救命講習では、このような呼吸の特徴についても学びます。


胸骨圧迫(心臓マッサージ)

胸骨圧迫は、救命講習の中でも最も重要な実技の一つです。

心停止では心臓が血液を送り出せなくなるため、胸骨圧迫によって脳や全身へ血液を送り続ける必要があります。

講習では、

  • 手を置く位置
  • 約5~6cm押す深さ
  • 1分間に100~120回のテンポ
  • 胸がしっかり戻るまで圧迫を解除すること
  • 中断を最小限にすること

などを、人形を使って繰り返し練習します。

実際に体験すると想像以上に体力を使うため、正しい姿勢や力のかけ方も学ぶことができます。


AED(自動体外式除細動器)の使用方法

AEDは、心停止の原因となる一部の危険な不整脈に対して電気ショックを行う医療機器です。

駅や学校、商業施設、スポーツ施設など、多くの場所に設置されています。

「操作が難しそう」と感じる方もいますが、AEDは音声ガイダンスに従って操作できるよう設計されています。

講習では、

  • AEDの持ってきてもらい方
  • 電源の入れ方
  • パッドの貼り方
  • 電気ショック前の安全確認
  • ショック後の対応

などを実際に体験しながら学びます。


人工呼吸

人工呼吸も救命講習で学ぶ内容の一つです。

人工呼吸では、気道を確保したうえで、傷病者へ息を吹き込みます。

ただし、一般市民による救命処置では、人工呼吸が難しい場合や実施をためらう場合は、胸骨圧迫を継続することが重要とされています。

講習では、人工呼吸の方法だけでなく、そのような考え方についても説明があります。


気道異物除去

食べ物や異物が喉に詰まる「窒息」は、乳幼児だけでなく高齢者にも多くみられます。

窒息は短時間で命に関わることがあるため、迅速な対応が必要です。

講習では、

  • 窒息のサイン
  • 背部叩打法
  • 腹部突き上げ法(対象者に応じた方法)

などを学びます。

食事中や家庭内で起こりやすい事故だからこそ、多くの方に知っていただきたい内容です。


止血法

出血への対応も救命講習で学びます。

出血量が多い場合には、短時間で命に関わることがあります。

講習では、

  • 清潔なガーゼやタオルなどで傷口を直接圧迫する方法
  • 圧迫を継続することの重要性
  • 救急隊へ引き継ぐまでの対応

などを学びます。


回復体位

傷病者に呼吸があり、嘔吐による窒息の危険がある場合などには、「回復体位」をとることがあります。

回復体位とは、傷病者を横向きに寝かせて気道を確保する方法です。

講習では、安全に体位を変える方法についても実技を通して学びます。


実技中心だから初めてでも安心

救命講習は、講師の説明を聞くだけでは終わりません。

人形やAEDトレーナーを使って実際に体験しながら学ぶため、初めて受講する方でも理解しやすい内容になっています。

分からないことがあれば、その場で質問することもできるため、「難しそう」と心配する必要はありません。

実際に体を動かして学ぶことで、緊急時にも落ち着いて行動できる自信につながります。

救命講習の種類・受講方法・費用を解説|よくある質問にも回答

救命講習にはいくつかの種類があり、対象者や学ぶ内容が異なります。

「どの講習を受ければいいの?」「費用はかかる?」「一人でも参加できる?」など、受講前に気になる疑問を持つ方も多いでしょう。

ここでは、救命講習の種類や受講方法、よくある質問について解説します。


救命講習の種類

消防本部によって名称や講習内容は一部異なる場合がありますが、多くの地域では次のような救命講習が実施されています。

普通救命講習Ⅰ

一般市民を対象とした最も基本的な救命講習です。

主な内容は、

  • 心肺蘇生法(CPR)
  • AEDの使用方法
  • 気道異物除去
  • 止血法

などです。

初めて受講する方は、まず普通救命講習Ⅰの受講がおすすめです。


普通救命講習Ⅱ

普通救命講習Ⅰよりも実技時間が長く、より実践的な内容を学びます。

一定の頻度で応急手当を行う可能性のある方などを対象として開催されることがあります。


普通救命講習Ⅲ

乳児や小児に対する応急手当を中心に学ぶ講習です。

小さなお子さんがいる家庭や、保育士、幼稚園・学校関係者などにおすすめです。


上級救命講習

普通救命講習よりも幅広い内容を学ぶ講習です。

心肺蘇生やAEDだけでなく、

  • 傷病者の観察
  • 外傷への対応
  • 搬送方法
  • さまざまな応急手当

などについても学習します。

時間は長くなりますが、より深く応急手当を学びたい方に適しています。


救命講習はどこで受けられる?

救命講習は、全国の消防本部や消防署で定期的に開催されています。

また、日本赤十字社や自治体、一部の企業・学校などでも実施されることがあります。

開催日時や申込方法は地域によって異なるため、お住まいの消防本部のホームページで確認するのがおすすめです。


受講料はかかる?

多くの消防本部では、一般市民向けの救命講習を無料で開催しています。

ただし、地域によっては教材費などが必要になる場合もあるため、申し込み前に確認しておくと安心です。


修了証はもらえる?

所定の講習を修了すると、多くの消防本部では修了証が交付されます。

修了証は講習を修了したことを証明するもので、一定期間ごとに再受講し、知識や技術を見直すことが推奨されています。


よくある質問

一人でも参加できますか?

救命講習の受講条件は、地域の消防本部によって異なります。一人から申し込みできる地域もあれば、一定人数以上での申し込みが必要な地域もあります。 また、定期開催の講習に個人で参加できる場合もあります。受講を希望される際は、お住まいの地域を管轄する消防本部へ事前にお問い合わせください。


医療の知識がなくても大丈夫ですか?

問題ありません。

救命講習は一般市民向けに実施されているため、専門的な知識がなくても理解できる内容になっています。


子どもでも受講できますか?

消防本部によって対象年齢は異なりますが、中学生や高校生を対象とした講習を開催している地域もあります。

また、学校の授業として救命講習を実施している場合もあります。


体力に自信がなくても受講できますか?

受講できます。

胸骨圧迫は体力を使う処置ですが、講習では正しい姿勢や体重のかけ方も学ぶため、無理のない範囲で実技を行うことができます。


一度受講すれば十分ですか?

応急手当の知識や技術は、時間が経つと忘れてしまうものです。

また、救命に関するガイドラインは改訂されることもあります。

そのため、一度受講して終わりではなく、定期的に再受講することで知識や技術を維持することが大切です。


救急救命士から伝えたいこと

私は救急現場で、多くの傷病者とそのご家族に接してきました。

その中には、救急隊が到着する前に周囲の人が胸骨圧迫やAEDを実施していたことで、その後の救命につながったケースもあります。

一方で、「何をすればいいか分からず見ていることしかできなかった」と話される方も少なくありません。

救命講習を受講したからといって、すべての命を救えるわけではありません。

しかし、正しい知識と技術を身につけておくことで、緊急時に勇気を持って最初の一歩を踏み出せる可能性は高まります。

その一歩が、大切な家族や友人、そして目の前にいる誰かの命をつなぐことにつながるかもしれません。


まとめ

救命講習は、医療従事者だけが受ける講習ではなく、誰でも受講できる実践的な応急手当の講習です。

講習では、心肺蘇生法やAEDの使用方法をはじめ、気道異物除去や止血法など、日常生活や災害時にも役立つ知識と技術を学ぶことができます。

「もしもの時」は、いつ訪れるか分かりません。

だからこそ、いざという時に大切な人や目の前の命を守るためにも、一度救命講習を受講してみてはいかがでしょうか。

🚑 救急救命士国家試験・学習教材おすすめ

国家試験対策から現場応用まで、“救急救命士”を目指す方・指導する方のための教材を紹介します。

🛠 学習を深めるヒント

  • テキストを「読む」より「つくる」:章末まとめを自分で図解・カード化すると理解が定着します。
  • 間違いの振り返り:問題集は“なぜ間違えたか”を書き出して次に活かしましょう。
  • 反復教材を活用:Deru-Qや〇×問題集は、通勤・休憩時間の“繰り返し”用に。
  • 模試形式の練習:本番同様に時間を計り、“試験モード”の集中力を養う。
  • 気分転換教材を1冊:語呂・イラスト系参考書を加えて「継続しやすい環境」をつくる。

参考文献

  1. 総務省消防庁『応急手当WEB講習(e-ラーニング)』
  2. 総務省消防庁『応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱』
  3. 日本蘇生協議会『JRC蘇生ガイドライン2025』
  4. 厚生労働省『AED(自動体外式除細動器)の適正配置に関する資料