「こんな症状で救急車を呼んでいいのだろうか」
「もう少し様子を見れば良くなるかもしれない」
「夜中に救急車を呼ぶのは大げさではないか」
急な体調不良を前にすると、救急車を呼ぶことをためらってしまう人は少なくありません。
しかし、救急医療では「もう少し様子を見よう」と待ったことが、治療開始の遅れにつながる場合があります。
特に注意したいのが、
- 意識がおかしい、反応が悪い
- 突然の強い胸痛や息苦しさ
- 突然、顔や手足の片側が動かしにくくなった
- ろれつが回らない、言葉が出ない
- 突然の激しい頭痛
などです。
こうした症状がある場合には、「病名が分からないから」と119番をためらう必要はありません。
一般の方が、自宅で心筋梗塞や脳卒中などを正確に診断することは困難です。
大切なのは病名を当てることではなく、
「緊急性の高い可能性がある症状か」
という視点で判断することです。
この記事では、救急現場で起こり得るケースをもとに、
- なぜ救急車を呼ばずに後悔することがあるのか
- どんな症状なら119番を考えるべきなのか
- 救急車を呼ぶべきか迷ったときはどうすればいいのか
を、一般の方にも分かりやすく解説します。
※この記事に登場するケースは、特定の傷病者の実例をそのまま掲載したものではありません。個人が特定されないよう、救急現場で経験し得る状況や一般的な事例をもとに再構成しています。
最初に結論|119番と#7119はどう使い分ける?
救急車を呼ぶか迷ったときは、まず次の3段階で考えてください。
明らかな緊急症状がある
→ 119番
緊急性があるか判断できず、救急車を呼ぶべきか迷う
→ 利用できる地域では#7119などの救急相談
危険な症状がなく、状態が安定している
→ かかりつけ医への相談や自力受診などを検討
突然の麻痺や言語障害、強い胸痛、強い呼吸困難、意識の異常などがある場合には、#7119への相談より119番を優先します。
一方、
「救急車を呼ぶほどなのか判断できない」
「今すぐ病院へ行った方がいいのか分からない」
という場合には、実施地域であれば救急安心センター事業「#7119」に相談する方法があります。
大切なのは、
「何でも119番する」
「迷惑をかけないよう、できるだけ我慢する」
という二択にしないことです。
緊急性が高いと考えられる症状では119番。
判断に迷う場合には救急相談。
この使い分けを知っておくだけでも、いざというときの迷いを減らせます。
※#7119は全国一律で利用できるわけではありません。利用できる地域や時間帯をあらかじめ確認してください。
救急車を呼ばずに後悔につながり得る5つのケース
救急現場では、最初から誰が見ても重症だと分かる傷病者ばかりではありません。
会話ができる。
歩くことができる。
本人も「大丈夫」と言っている。
それでも、時間が経過してから状態が悪化したり、医療機関で重大な病気が判明したりすることがあります。
ここからは、救急車を呼ぶ判断が遅れやすい5つのケースを紹介します。
「どの時点で判断を変える必要があったのか」
という視点で読んでみてください。
ケース① 「胸が少し苦しい」だけだと思って様子を見た
状況
60代の男性。
夕食後から「胸が重い」「なんとなく苦しい」と訴えていました。
激しく胸を押さえているわけではなく、会話もできています。
本人も、
「少し休めば良くなる」
「救急車を呼ぶほどじゃない」
と話していました。
家族も本人の言葉を聞き、しばらく自宅で様子を見ることにしました。
ところが胸の違和感は改善せず、冷や汗や気分不良も出現。
状態が悪化したため119番通報となり、医療機関で緊急治療が必要な心疾患が疑われました。
どこで判断を変えるべきだった?
注意したいのは、
「激痛ではないから大丈夫」
と判断してしまうことです。
心筋梗塞などの急性冠症候群では、必ずしも耐えられないほどの胸痛だけが現れるわけではありません。
胸の圧迫感や締め付け感、不快感として感じることもあり、
- 冷や汗
- 吐き気
- 息苦しさ
- 顔色不良
などを伴うこともあります。
突然の胸部症状にこうした症状が加わっている場合には、痛みの強さだけで判断せず119番を考えてください。
このケースのポイント
「痛みが強くない=重症ではない」とは限りません。
突然始まったか、普段とは違うか、冷や汗や息苦しさなどを伴っていないかを見ることが重要です。
ケース② 「手がしびれるだけ」と思って朝まで待った
状況
50代の女性。
夜になって突然、片方の手にしびれを感じました。
痛みはなく、意識もあり、普通に会話することができています。
本人は、
「寝方が悪かったのかな」
「肩こりかもしれない」
と考え、そのまま様子を見ることにしました。
ところが翌朝になっても症状は改善せず、さらに片側の手足の動かしにくさや話しにくさが出現。
医療機関を受診したところ、脳卒中が疑われました。
どこで判断を変えるべきだった?
しびれは、姿勢による神経の圧迫など比較的軽い原因でも起こります。
しかし、
- 突然発症した
- 体の片側だけに症状がある
- 片方の腕や脚に力が入りにくい
- 顔の片側が動かしにくい
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい
といった症状がある場合には、脳卒中を疑う必要があります。
脳卒中では治療開始までの時間が重要です。
突然の片側の麻痺や言葉の異常がある場合には、「朝まで様子を見る」のではなく119番を考えてください。
症状が一度治っても放置しない
脳への血流が一時的に悪くなり、麻痺や言語障害などが出現したあと改善する一過性脳虚血発作(TIA)があります。
突然の麻痺や言語障害などがあった場合には、症状が改善したからといって放置しないことが重要です。
ケース③ 「熱があるだけ」と思っていた子どもの様子が変わった
状況
幼い子どもが夜から発熱。
熱は高いものの、最初は水分を飲むことができ、保護者との受け答えもできていました。
「子どもは熱を出すことも多いし、朝まで様子を見よう」
と考えていました。
ところが時間が経つにつれて、
- 呼びかけへの反応が悪くなった
- ぐったりしている
- 水分がほとんど取れない
- 呼吸の様子がおかしい
といった変化が現れ、119番通報となりました。
「何度の熱か」だけで判断しない
子どもの発熱では、体温の数字だけで救急車が必要かどうかを判断することはできません。
重要なのは全身状態です。
特に、
- 意識がおかしい
- 呼びかけへの反応が悪い
- 呼吸が苦しそう
- 顔色や唇の色が悪い
- けいれんが続いている
- 明らかにぐったりしている
などがあれば、緊急性を考える必要があります。
子どもは自分の症状を正確に説明できないことがあります。
そのため、保護者が感じる「いつもとの違い」も重要な情報になります。
ただし、「いつもと違う」というだけですべて119番が必要という意味ではありません。
意識・呼吸・顔色・けいれんなどの危険な症状がある場合には119番を考え、救急車が必要か判断に迷う場合には、#8000などの小児救急電話相談を利用する方法があります。
ケース④ 「腹痛と嘔吐だから胃腸炎だろう」と考えた
状況
成人男性。
夜になって腹痛と嘔吐が出現しました。
本人も家族も、
「食べ過ぎたのかもしれない」
「胃腸炎だろう」
と考え、自宅で休んでいました。
しかし、腹痛は徐々に強くなり、何度も嘔吐。
水分を取ることも難しくなり、さらに顔色が悪くなってきたため119番通報となりました。
「胃腸炎だろう」と決めつけない
腹痛や嘔吐のすべてで救急車が必要なわけではありません。
一方、腹痛を起こす病気には、
- 消化管穿孔
- 腸閉塞
- 急性虫垂炎
- 胆道系疾患
- 急性膵炎
- 大動脈に関係する疾患
など、緊急治療が必要になるものもあります。
特に、
- 突然発症した激しい腹痛
- 今まで経験したことのない強い痛み
- 意識がおかしい
- 冷や汗や明らかな顔色不良
- 吐血や血便
- 呼吸が苦しい
- 痛みが急速に悪化している
といった場合には、単なる胃腸炎と自己判断せず119番を考えてください。
ケース⑤ 「一度倒れたけれど、意識が戻ったから大丈夫」
状況
家族と話していた成人男性が、突然その場に倒れました。
しばらくすると意識が戻り、
「ちょっと立ちくらみしただけ」
「もう大丈夫」
と話しています。
会話もできるようになったため、救急車は呼ばず休ませることにしました。
しかし、その後再び意識を失いました。
「意識が戻った=原因が解決した」ではない
一時的に意識を失うことを失神といいます。
失神にはさまざまな原因があり、比較的危険性の低いものもあれば、不整脈など心臓に関係する病気が原因になっている場合もあります。
特に、
- 運動中に突然倒れた
- 胸痛や動悸を伴う
- 息苦しさがある
- 短時間に繰り返している
- 意識が十分に戻らない
- けいれんとの区別が難しい
- 転倒して頭などを強く打った
といった場合には注意が必要です。
また、倒れている人を発見したときに最も重要なのは、「失神かどうか」を判断することではありません。
まず反応と呼吸を確認します。
反応がなく、普段どおりの呼吸がない、または呼吸しているか判断できない場合には、119番通報とAEDの手配を行い、胸骨圧迫を開始してください。
なぜ人は救急車を呼ぶのをためらってしまうのか
5つのケースに共通しているのは、最初から「救急車を呼ばない」と決めていたわけではないことです。
多くの場合、
「まだ話せている」
「まだ動ける」
「少し待てば良くなるかもしれない」
「本人が大丈夫と言っている」
といった理由から、判断が先延ばしになります。
さらに、
「救急車を呼んで軽症だったら申し訳ない」
「夜中だから朝まで待ちたい」
という気持ちが加わることもあります。
ここからは、119番をためらいやすい理由を5つに整理します。
理由① 「まだ動けるから大丈夫」と考える
重症というと、
「意識を失って倒れている」
「激痛で動けない」
「明らかに呼吸が苦しい」
といった状態を想像するかもしれません。
しかし、重篤な病気でも発症直後には歩いたり会話したりできる場合があります。
「歩ける」「話せる」だけで緊急性を判断せず、突然の麻痺や言葉の異常、胸部症状、強い息苦しさ、意識状態の変化などを確認することが重要です。
理由② 「もう少し様子を見よう」と考える
すべての体調不良ですぐ119番する必要はありません。
しかし、緊急性の高い可能性がある症状まで「様子見」にしてしまうことには注意が必要です。
突然の片側の麻痺や言語障害、強い胸痛、強い呼吸困難、意識の異常、突然の激しい頭痛などがある場合には、「朝まで待ってみよう」と判断せず119番を考えてください。
理由③ 「救急隊に迷惑をかけたくない」と考える
救急車には限りがあるため、適正利用は重要です。
しかし、
「適正利用=できるだけ119番を我慢すること」
ではありません。
明らかな緊急症状がある場合には、「迷惑をかけたくない」という理由だけで119番を控える必要はありません。
緊急性が判断できない場合には、#7119などの救急相談を利用する方法があります。
理由④ 「夜中だから朝まで待とう」と考える
夜間や休日は、
「朝になったら病院へ行こう」
と考えやすくなります。
しかし、病気の緊急性は時間帯によって変わるわけではありません。
脳卒中や急性心筋梗塞など、早期の治療が重要な病気は夜間にも発症します。
明らかな危険症状がある場合には、時間帯を理由に朝まで待たないことが重要です。
理由⑤ 本人が救急車を嫌がっている
本人が、
「救急車は呼ばなくていい」
「大丈夫だから」
と拒否する場合、家族は判断に迷うかもしれません。
本人の意思は大切です。
一方、意識状態が悪い、会話が成立しないなど、本人が状況を十分に判断できない可能性がある場合もあります。
また、会話ができることだけで緊急性の高い病気を否定することはできません。
明らかな危険症状がある場合には、「本人が大丈夫と言っている」という理由だけで判断しないことが重要です。
救急車を呼ぶ?迷ったときは3段階で考える
では、実際に自分や家族が急変したときは、どう判断すればよいのでしょうか。
すべての病気や症状を覚える必要はありません。
まずは次の3段階で考えてください。
① 危険な症状がある → 119番
② 緊急性を判断できない → #7119などへ相談
③ 危険な症状がなく状態が安定している → 自力受診などを検討
順番に説明します。
① 危険な症状がある → 119番
次のような症状がある場合には、#7119などへの相談を挟まず119番を考えてください。
意識
- 呼びかけても反応しない
- 意識がおかしい
- 普段どおりの受け答えができない
- 突然意識を失った
呼吸
- 呼吸が明らかに苦しそう
- 突然、強い息苦しさが出た
- 普段どおりの呼吸をしていない
- 顔色や唇の色が明らかに悪い
脳卒中を疑う症状
- 突然、顔の片側が動かしにくくなった
- 突然、片方の腕や脚に力が入らなくなった
- 突然ろれつが回らなくなった
- 突然言葉が出なくなった
- 突然の激しい頭痛
胸部症状
- 突然の激しい胸痛
- 胸が締め付けられる、圧迫される感じ
- 胸部症状とともに冷や汗が出る
- 胸部症状とともに強い息苦しさがある
- 意識状態の変化を伴う
その他
- 大量に出血している
- けいれんが続いている
- 重いアレルギー症状で呼吸が苦しい
- 大きな事故や高所からの転落などで重傷が疑われる
こうした症状では、
「#7119に聞いてから決めよう」
と考えるのではなく、119番を優先します。
② 緊急性を判断できない → #7119などへ相談
明らかな危険症状はないものの、
「救急車を呼んだ方がいいのだろうか」
「今すぐ病院へ行くべきなのだろうか」
「朝まで待っても大丈夫なのだろうか」
と判断に迷うことがあります。
このようなときに利用できるのが、救急安心センター事業「#7119」です。
#7119では、急な病気やけがについて、
- 救急車を呼んだ方がよいのか
- 今すぐ医療機関を受診した方がよいのか
- どこを受診すればよいのか
などについて相談できます。
ただし、#7119はすべての地域で利用できるわけではありません。
住んでいる地域で利用できるか、あらかじめ確認しておくと安心です。
また、子どもの症状について判断に迷う場合には、#8000などの小児救急電話相談を利用できる場合があります。
③ 危険な症状がなく状態が安定している → 自力受診などを検討
危険な症状がなく、
- 意識が普段どおり
- 呼吸が安定している
- 症状が軽い
- 自力で安全に移動できる
- 急激に悪化していない
といった場合には、必ずしも救急車が必要とは限りません。
かかりつけ医への相談や、自力での医療機関受診などを検討できる場合があります。
ただし、
「歩けるから救急車は必要ない」
と単純に判断することはできません。
突然の麻痺や言語障害、胸部症状など、緊急性を疑う症状がある場合には、歩けていたとしても119番を考えてください。
自宅で経過を見る場合にも、症状が悪化したり、新しい症状が出たりした場合には判断を見直します。

病名ではなく「4つのポイント」を確認する
急な体調不良が起きると、
「心筋梗塞だろうか?」
「脳梗塞だろうか?」
「ただの胃腸炎だろうか?」
と病名を考えてしまいがちです。
しかし、一般の方が病名を診断する必要はありません。
迷ったときは、次の4つを確認してください。
① 意識
呼びかけに普段どおり反応していますか?
会話は成立していますか?
② 呼吸
普段どおり呼吸していますか?
明らかに苦しそうではありませんか?
自宅での体調確認に|MEDIKEN パルスオキシメーター ME031
パルスオキシメーターは、指先に装着して血中酸素飽和度(SpO₂)や脈拍数を確認する機器です。 日頃の体調管理や、呼吸状態を確認する際の補助として活用できます。
ただし、SpO₂の数値だけで救急車が必要かどうかを判断するものではありません。 強い息苦しさや意識状態の異常などがある場合には、測定値にかかわらず119番を考えてください。
③ 突然起きた症状ではないか
突然の麻痺。
突然の胸痛。
突然の呼吸困難。
突然の激しい頭痛。
「突然始まった」という情報は、緊急性を考えるうえで重要です。
④ 普段との違い
「いつもの頭痛と違う」
「いつもの息切れと違う」
「普段なら歩けるのに今日は立てない」
本人や家族だからこそ気づける変化があります。
ただし、「普段と違う」というだけですべて119番が必要という意味ではありません。
意識、呼吸、症状の内容、発症の仕方などと合わせて判断してください。
普段の血圧を知っておく|オムロン 上腕式血圧計 HCR-7104
家庭で普段から血圧を測定・記録しておくと、体調が悪くなったときに「いつもとの違い」を確認する参考になります。
ただし、血圧の数値だけで緊急性を判断することはできません。 突然の麻痺や言語障害、強い胸痛、呼吸困難、意識の異常などがある場合には、血圧測定を優先せず119番を考えてください。

「救急車を呼んで軽症だったら申し訳ない」と思う人へ
救急車を呼ぶことをためらう大きな理由の一つが、
「救急車を呼んで、たいした病気ではなかったら申し訳ない」
という気持ちです。
救急車には限りがあります。
緊急性の低い状況で安易に利用しないことは大切です。
一方、一般の方が救急車を呼ぶ前に、病気の重症度を正確に判断することは困難です。
ここで大切なのは、
「結果的に軽症だったか」
ではなく、
「119番した時点で緊急性を疑う症状があったか」
という視点です。
たとえば、突然ろれつが回らなくなり、片方の手足が動かしにくくなったため119番したとします。
医療機関で検査した結果、幸い重篤な病気ではなかったとしても、それだけで「救急車を呼ぶ必要はなかった」とは言えません。
119番した時点では、脳卒中などの緊急疾患を疑う症状があったからです。
最終的な診断だけで振り返るのではなく、その時点の症状で判断することが大切です。
救急車の適正利用とは「必要なときに利用すること」
救急車には限りがあるため、適正利用は重要です。
しかし、
「できるだけ救急車を呼ばない」
ことが適正利用なのではありません。
明らかな危険症状があれば119番。
緊急性を判断できなければ#7119などへ相談。
状態が安定していれば自力受診などを検討する。
つまり、先ほど紹介した3段階で使い分けることが大切です。
「何でも119番する」必要はありません。
同時に、
「迷惑をかけたくないから、危険な症状があっても我慢する」
必要もありません。
救急車を呼ばなかったことで後悔しないためにも、その時点の症状に応じて行動してください。
119番したら何を伝えればいい?
初めて119番するとき、
「何を話せばいいのか分からない」
と不安になるかもしれません。
しかし、必要な情報をすべて自分から説明する必要はありません。
119番すると、通信指令員から必要なことを順番に質問されます。
まず、
「救急です」
と伝えてください。
その後、
- 救急車が向かう住所
- 誰が具合悪いのか
- どのような症状なのか
- 意識や呼吸の状態
- 年齢や性別
- 通報者の名前や連絡先
などを確認されます。
分かる範囲で、通信指令員の質問に答えてください。
傷病者の状態によっては、救急車が到着するまでの間に応急手当の方法を案内されることもあります。
「うまく説明できないから119番できない」
と心配する必要はありません。
救急隊に伝えてほしいこと
救急隊が到着したとき、家族や周囲の人からの情報は重要です。
救急隊は、その人の普段の状態を知りません。
そのため、
「普段なら一人で歩けるのに、今日は突然立てなくなった」
「いつもより反応が鈍い」
「20時までは普通に会話していたのに、20時30分ごろから言葉が出にくくなった」
といった情報が判断材料になります。
可能であれば、次の内容を伝えてください。
- 何時ごろ症状に気づいたか
- 最後に普段どおりだったのは何時か
- 最初にどのような症状が出たか
- 突然だったか、徐々に悪化したか
- 意識を失ったことがあるか
- 症状が途中で改善したか
- 持病
- 普段飲んでいる薬
- アレルギー
- これまでに同じ症状があったか
すべてを完璧に覚える必要はありません。
分かる範囲で伝えるだけでも、救急隊が状況を把握するための手がかりになります。
医療情報をまとめておく|お薬手帳ケース
救急隊が到着したときには、持病や普段飲んでいる薬などの情報が重要になります。
お薬手帳や診察券などを普段から一か所にまとめておくと、急な体調不良の際にも準備しやすくなります。 家族にも保管場所を共有しておくと安心です。
特に覚えておきたい「最後に普段どおりだった時刻」
特に脳卒中が疑われる場合には、
「最後に普段どおりだったのはいつか」
という情報が重要です。
たとえば、
22時に寝室へ行ったときには普通だった。
翌朝6時に起こしに行ったところ、片方の手足が動かず、言葉もおかしかった。
この場合、「朝6時に発症した」とは限りません。
そのため、
- 症状に気づいた時刻
- 最後に普段どおりだった時刻
の両方を確認します。
発症時刻や症状の変化が分かる場合には、スマートフォンなどに記録しておくのも一つの方法です。
「20時10分ごろ、突然右手が動かしにくくなった」
といった簡単なメモでも役立ちます。
救急車が来るまでにできること
119番した後は、救急車が到着するまで傷病者の状態を観察してください。
特に、
- 意識に変化がないか
- 呼吸状態が変化していないか
- 症状が悪化していないか
- 新しい症状が出ていないか
を確認します。
余裕があれば、
- マイナ保険証や健康保険証
- お薬手帳
- 普段飲んでいる薬
- かかりつけ医の情報
などを準備しておくと、その後の対応に役立つ場合があります。
ただし、準備より傷病者の観察を優先してください。
状態が変化した場合には、通信指令員に伝え、その指示に従ってください。
反応がなくなったら「救急車を待つだけ」にしない
救急車を待っている間に、傷病者の状態が悪化することがあります。
特に注意が必要なのが、反応がなくなった場合です。
呼びかけても反応がなく、
「普段どおりの呼吸がない」
または、
「呼吸しているか判断できない」
という場合には、心停止の可能性があります。
この場合は、
- 119番通報
- AEDの手配
- 胸骨圧迫
を開始します。
すでに119番している場合には、通信指令員に状態が変化したことを伝えてください。
通信指令員から胸骨圧迫などの方法について指示を受けられる場合があります。
救急車が到着するまでに行われる応急手当が、傷病者の救命につながることがあります。
「呼ばなかった後悔」を減らすために家族でできること
急病が起きてから、
「救急車を呼ぶ?」
「もう少し待つ?」
と家族で話し合っていると、判断に時間がかかることがあります。
元気なときから、
「こういう症状なら119番する」
と家族で共有しておくのも一つの備えです。
たとえば、
- 意識がおかしい
- 呼吸がおかしい
- 突然の麻痺や言語障害
- 突然の強い胸痛
- 突然の激しい頭痛
などです。
そして、
「救急車が必要か判断できないときには#7119などへ相談する」
という選択肢も知っておきましょう。
救急車を呼ぶ判断も、防災と同じように、緊急事態が起きる前に考えておくことで迷いを減らせます。
まとめ|救急車を呼ばなかったことで後悔しないために
救急車を呼ばなかった人が、危険な状態を意図的に放置していたとは限りません。
「本人が大丈夫と言っている」
「もう少し様子を見たい」
「救急隊に迷惑をかけたくない」
「朝になったら病院へ行こう」
こうした判断が重なり、救急要請が遅れることがあります。
しかし、脳卒中や心疾患など、治療開始までの時間が重要になる病気があります。
だからこそ、覚えておきたいポイントは5つです。
① 「動ける・話せる=大丈夫」とは限らない
歩ける、会話できるという理由だけで、緊急性が低いとは判断できません。
② 突然起きた症状を軽視しない
突然の麻痺、言語障害、胸痛、呼吸困難、激しい頭痛などは重要なサインです。
③ 意識や呼吸がおかしい場合は119番を優先する
反応が悪い、普段どおりの呼吸ではないなどの場合には119番を考えてください。
④ 判断に迷う場合は#7119などを利用する
明らかな緊急症状はないものの、救急車を呼ぶべきか判断できない場合には、利用できる地域で#7119などへ相談する方法があります。
子どもの症状では、#8000などを利用できる場合もあります。
⑤ 病名を当ててから119番する必要はない
一般の方が自宅で病気を正確に診断することは困難です。
大切なのは、最終的な病名ではなく、その時点で緊急性を疑う症状があるかどうかです。
危険なサインがある場合には、ためらわず119番を考えてください。
関連記事|症状別に「救急車を呼ぶべき?」を確認する
症状ごとの判断について詳しく知りたい方は、関連記事も参考にしてください。
救急車を呼ぶか迷ったとき
→ #7119と119番の違い|救急車を呼ぶか迷ったときの使い分け
突然しびれた・片側がおかしい
一度意識を失った
動悸が続いている
けいれんした
立てない・歩けない
嘔吐や腹痛がある
食中毒が疑われる
吐血した
アナフィラキシーが疑われる
→ アナフィラキシーで救急車を呼ぶべき?エピペンと119番の判断
症状によって見るべきポイントは異なります。
迷ったときには、まず「意識」「呼吸」「突然の発症」「普段との違い」を確認してください。
参考情報
この記事では、一般の方が救急車を呼ぶか判断する際の参考として、主に以下の公的情報をもとに構成しています。
- 総務省消防庁「救急車利用マニュアル」
- 総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)」
- 厚生労働省「上手な医療のかかり方」
- 厚生労働省・関係機関による脳卒中、心疾患に関する啓発資料
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業(#8000)」
- 日本赤十字社などによる一次救命処置・応急手当に関する情報
※症状や経過には個人差があります。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断を行うものではありません。明らかな緊急症状がある場合は119番してください。

