血便が出たら救急車?119番する危険な症状と病院を受診する目安

血便が出たとき、最も重要なのは「血の色」だけではありません。

まず確認してほしいのは、

・どのくらい出血しているか
・出血が続いているか
・めまい、冷や汗、顔面蒼白などがないか
・意識状態に変化がないか
・強い腹痛を伴っていないか

という点です。

血便の原因には、痔や裂肛(切れ痔)のように比較的緊急性の低いものから、大腸憩室出血、虚血性大腸炎、消化性潰瘍など、早急な治療が必要になる病気まであります。

特に注意しなければならないのが、大量の消化管出血です。

消化管から大量に出血すると、血圧を維持できなくなり、脳や心臓など重要な臓器へ十分な血液を送れなくなる「出血性ショック」に陥ることがあります。

「便器が赤くなるほど大量に出血した」

「血便とともに、立っていられないほどふらつく」

「顔色が明らかに悪く、冷や汗が出ている」

「意識がもうろうとしている」

このような場合は、単なる痔などと自己判断せず、緊急性の高い消化管出血を考える必要があります。

また、便が黒くなる「黒色便・タール便」も重要です。

血液の混じった赤い便は一般に血便、血液が消化されて黒く粘稠になった便はメレナなどと区別されます。日本では「血便」「下血」という言葉が広い意味で使われることもあるため、本記事では一般の方に分かりやすいよう、赤い便だけでなく黒色便についても解説します。

この記事では、

・血便で119番通報を検討する症状
・すぐ病院へ行ったほうがよいケース
・自宅で様子を見られる可能性があるケース
・鮮血便、暗赤色便、黒色便の違い
・血便を起こす代表的な病気
・子どもや高齢者で注意する血便

について、順番に解説します。

「血便が出たけれど、救急車を呼ぶべきなのか」

「痔だと思うけれど、病院へ行ったほうがいいのか」

その判断材料として活用してください。

目次

【最優先】血便で119番通報を検討する危険なサイン

血便が出たからといって、すべてのケースで救急車が必要になるわけではありません。

一方で、消化管出血は短時間で状態が悪化することがあります。

消防庁の救急搬送に関する資料でも、消化管出血は急変する可能性を考慮する必要があり、大量出血やショック症状などは緊急度を判断する重要な所見とされています。

次のような症状がある場合は、119番通報を検討してください。

血便とともにショックを疑う症状がある

特に重要なのは、血便そのものより「全身状態」です。

・立っていられないほどのめまい、ふらつきがある
・立ち上がろうとすると倒れそうになる
・顔色が明らかに白い
・冷や汗が出ている
・手足が冷たい
・動悸や息苦しさが強い
・ぐったりしている
・受け答えがおかしい
・意識がもうろうとしている
・意識を失った

このような症状が血便と一緒にみられる場合、大量出血によって全身を循環する血液量が不足している可能性があります。

消化管出血では、出血による貧血や循環不全によって、めまい、顔面蒼白、冷感などが現れることがあります。

特に意識状態に異常がある、立つことができない、倒れてしまったといった場合は、自分で病院へ向かおうとせず119番通報を検討してください。

明らかに大量の出血がある

次のような場合も注意が必要です。

・便器の水が赤く染まるほど出血している
・大量の血液が排出された
・血の塊が混じっている
・血液だけが出るような状態になっている
・短時間に何度も大量の血便を繰り返している
・出血が止まらない

ただし、「便器が赤くなった=必ず大量出血」とは限りません。

少量の血液でも水に広がると多く見えることがあるため、見た目だけで正確な出血量を判断することは困難です。

そのため、

「どのくらい赤かったか」

だけではなく、

「繰り返しているか」

「めまいや冷や汗があるか」

「意識状態は普段と同じか」

など、全身状態と合わせて判断することが重要です。

大量の血便に加えて、めまい、冷や汗、顔面蒼白、意識状態の変化などがある場合は、119番通報を検討してください。

血便とともに激しい腹痛がある

血便に強い腹痛を伴う場合も注意が必要です。

・突然、激しい腹痛が始まった
・今まで経験したことがないほど痛い
・痛みが急速に悪化している
・お腹を触ると非常に痛がる
・お腹が硬く感じる
・血便と嘔吐を繰り返している
・ぐったりして動けない

血便と激しい腹痛の組み合わせでは、虚血性大腸炎などのほか、腸管の血流障害や重篤な腹部疾患が隠れている可能性があります。

病名を自分で判断する必要はありません。

重要なのは、

「血便+激しい腹痛」

という組み合わせ自体を危険サインとして考えることです。

痛みが非常に強い、急激に悪化している、意識状態がおかしいなどの場合は119番通報を検討してください。

血便だけでなく強い腹痛がある場合は、腹痛そのものの危険サインも確認しておきましょう。

腹痛で救急車を呼ぶ基準は?危険な腹痛の見分け方と受診の目安

黒い便とともに全身状態が悪い

「血便=赤い便」と考えがちですが、真っ黒な便にも注意が必要です。

イカスミやコールタールのような黒く粘り気のある便は「黒色便」「タール便」と呼ばれ、食道・胃・十二指腸など上部消化管からの出血でみられることがあります。

特に、

・黒い便が何度も出る
・黒い便とともにめまいがある
・冷や汗が出ている
・顔色が悪い
・動悸や息切れがある
・吐血もしている
・意識状態がおかしい

といった場合は、消化管から大量に出血している可能性があります。

黒い便だからといって必ず重症とは限りませんが、黒色便に全身状態の悪化を伴う場合は、119番通報を検討してください。

血液を固まりにくくする薬を服用している

抗凝固薬や抗血小板薬など、いわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用している人も注意が必要です。

これらの薬を服用していると、消化管から出血した際に出血が続いたり、重症化したりする可能性があります。

血便が出た場合は、

・服用している薬の名前
・最後に飲んだ時間
・血便が始まった時間
・血便の回数
・便の色

を確認しておくと、医療機関や救急隊へ状況を伝えやすくなります。

ただし、血便が出たからといって、抗凝固薬や抗血小板薬を自己判断で中止しないでください。

薬を中止することで、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まる場合があります。

対応については医師の指示を受けてください。

救急車を待つ間にすること

119番通報をした場合は、無理に歩き回らず、安全な場所で安静にして救急隊を待ちます。

めまいやふらつきがある人を、一人でトイレや玄関まで歩かせないでください。立ち上がった際に意識を失い、転倒する危険があります。

意識がある場合は、本人が楽な姿勢で安静にします。

嘔吐している場合や吐きそうな場合は、吐物を誤嚥しないよう注意してください。

また可能であれば、

・血便が始まった時間
・おおよその回数
・便の色
・腹痛の有無
・吐血の有無
・服用している薬
・持病

を確認しておくと、救急隊への情報提供に役立ちます。

便の写真を安全に撮影できる状況であれば、便の色や出血の状態を医療従事者へ伝える参考になることがあります。

ただし、写真を撮るために処置や119番通報を遅らせる必要はありません。

最優先するのは、傷病者の安全確保と、必要な場合の119番通報です。

血便が出たときの受診目安|病院に行くタイミング

血便が出たものの、

「救急車を呼ぶほどなのか分からない」

「今すぐ病院へ行くべきなのか」

「少し様子を見てもいいのか」

と迷う人も多いと思います。

血便の緊急度は、血の色だけでは判断できません。

出血量、回数、腹痛の程度、めまいや冷や汗などの全身症状、年齢、服用している薬などを合わせて判断することが重要です。

ここでは、受診の目安を3段階に分けて解説します。

① 119番通報を検討する

次のような場合は、前述したとおり119番通報を検討してください。

・大量の血便が続いている
・血便とともに立っていられないほどのめまいやふらつきがある
・顔面蒼白や冷や汗がある
・意識がもうろうとしている
・一度意識を失った
・血便と激しい腹痛がある
・黒色便とともに全身状態が悪い
・吐血もしている

重要なのは、「血が出た」という事実だけではなく、その人の全身状態です。

見た目の出血量がそれほど多くなくても、意識状態がおかしい、立つことができない、明らかに顔色が悪いなどの症状があれば、緊急性が高い可能性があります。

早めに医療機関を受診する

119番通報を検討するほどの症状がなくても、次のような場合は放置せず、早めに医療機関を受診してください。

・血便を繰り返している
・出血量が増えてきた
・黒く粘り気のある便が出た
・血便と腹痛や下痢を伴っている
・発熱を伴っている
・軽いめまいやふらつきがある
・痛みのない血便を繰り返している
・便に血が混じる状態が続いている
・抗凝固薬や抗血小板薬を服用している
・血便の原因が分からない

特に黒色便は、食道・胃・十二指腸などからの出血によって起こることがあります。

「黒いけれど元気だから大丈夫」と自己判断せず、医療機関へ相談してください。

また、血便に腹痛や下痢、発熱を伴う場合には、感染性腸炎や虚血性大腸炎など、痔以外の病気も考える必要があります。

症状が強い場合や悪化している場合は、診療時間を待たず救急外来への受診も検討します。

条件によっては経過をみられる場合もある

次のような場合は、緊急性が比較的低い可能性があります。

・硬い便を出したあとに少量の鮮血が付いた
・トイレットペーパーに少量の血が付いた
・排便時に肛門付近の痛みがあった
・出血は1回だけで、その後は止まっている
・腹痛、発熱、めまいなどの症状がない
・普段と変わらず生活できている

例えば、便秘で硬い便を出した際に肛門が傷つく「裂肛(切れ痔)」では、便の表面やトイレットペーパーに鮮やかな赤い血が少量付着することがあります。

ただし、

「鮮やかな赤色だから痔」

とは限りません。

大腸や直腸からの出血でも鮮血便になることがあります。

一度止まったとしても血便を繰り返す場合や、原因がはっきりしない場合は医療機関を受診してください。

血便は何科を受診する?

血便の原因が分からない場合は、消化器内科・消化器科などへの受診が一つの選択肢です。

肛門の痛みや痔が疑われる場合には肛門科などで診察を受けることもできます。

ただし、大量出血や意識障害、強いめまい、激しい腹痛などがある場合は「何科へ行けばいいか」を考えることよりも、緊急性の判断を優先してください。

夜間や休日で判断に迷う場合には、地域によって利用できる救急相談窓口もあります。

緊急性が高いと感じた場合は119番通報を検討してください。

血便の「色」は重要な手がかりになる

血便が出たとき、多くの人が最初に気にするのが「血の色」ではないでしょうか。

便に混じった血液の色は、出血している場所や、血液が消化管内にとどまっていた時間などによって変化します。

大まかなイメージとしては、

食道・胃・十二指腸など

黒色便・タール便になりやすい

小腸・大腸

暗赤色〜赤色の便になることがある

直腸・肛門付近

鮮やかな赤色になりやすい

と考えることができます。

ただし、これはあくまで目安です。

血液の色だけで出血部位を特定することはできません。

出血量が多かったり、腸管内を急速に通過したりすると、上部消化管からの出血でも赤い血便として排出されることがあります。

逆に、出血してから排出されるまでの時間によって、血液の色が暗くなることもあります。

そのため、

「赤いから痔」

「黒いから胃」

と自分で病気を決めつけないことが重要です。

鮮血便|鮮やかな赤色の血

鮮血便とは、鮮やかな赤色の血液が便に付着したり、便と一緒に排出されたりする状態です。

比較的、肛門や直腸など出口に近い場所からの出血でみられやすい特徴があります。

裂肛(切れ痔)

硬い便などによって肛門の皮膚が傷つき、出血します。

・排便時に肛門が痛い
・便の表面に血が付く
・トイレットペーパーに鮮血が付く

といった症状がみられることがあります。

痔核(いぼ痔)

肛門付近の血管などが腫れた状態です。

排便時に鮮血が出ることがあり、場合によっては便器が赤く見えることもあります。

痛みがほとんどないケースもあるため、

「痛くないから痔ではない」

とも、

「鮮血だから痔に違いない」

とも言い切れません。

大腸憩室出血

大腸の壁にできた袋状のくぼみである「憩室」から出血する病気です。

突然、痛みをほとんど伴わず血便が出ることがあり、出血量が多くなる場合があります。

「腹痛はないのに突然まとまった血が出た」という場合にも注意が必要です。

大腸がん・直腸がんなど

大腸や直腸の腫瘍から出血し、便に血が混じることがあります。

出血が少量だったり、痔と区別しにくかったりする場合もあります。

血便を繰り返している場合は、「痔だと思う」という理由だけで放置しないことが重要です。

暗赤色便・粘血便|赤黒い血や粘液が混じる便

血液が便と混ざり、暗い赤色や赤褐色に見えることがあります。

また、腸の粘膜に炎症が起きる病気では、血液だけでなく粘液が混ざった「粘血便」がみられることがあります。

虚血性大腸炎

大腸への血流が一時的に低下し、腸の粘膜に炎症や傷害が起こる病気です。

腹痛、下痢、血便などがみられます。

突然の腹痛に続いて血便が出る場合には、痔だけではなく腸の病気も考える必要があります。

感染性腸炎

細菌などによる腸炎でも血便がみられることがあります。

・腹痛
・下痢
・発熱
・吐き気や嘔吐
・血便

などを伴う場合があります。

特に腸管出血性大腸菌(O157など)では、水様性下痢や腹痛に続いて血便がみられることがあります。

血便に下痢を伴っている場合は、下痢の回数や全身状態から救急車が必要か判断することも重要です。

下痢で救急車を呼ぶべき?119番する症状と自宅で様子を見られる目安

血便だけでなく、尿量が極端に減る、意識状態がおかしい、出血しやすくなるなどの症状が現れた場合は、重篤な合併症の可能性があるため速やかな受診が必要です。

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎やクローン病などでは、腸管に慢性的な炎症が起こります。

血便や粘血便、下痢、腹痛などを繰り返すことがあります。

症状が長期間続いている場合や、良くなったり悪くなったりを繰り返している場合には、医療機関で原因を調べることが重要です。

黒色便・タール便|真っ黒で粘り気のある便

真っ黒で粘り気があり、コールタールのように見える便を「黒色便」「タール便」と呼びます。

食道・胃・十二指腸などから出血すると、血液が消化管内で変化することで黒い便として排出されることがあります。

代表的な原因として、

・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・食道・胃静脈瘤からの出血
・胃などの腫瘍からの出血

などがあります。

ただし、便が黒いからといって、すべてが消化管出血とは限りません。

鉄剤などの薬や、一部の食品などによって便が黒くなることもあります。

そのため重要なのは、

「黒い便が出たか」

だけではなく、

・普段飲んでいる薬
・便の性状
・繰り返しているか
・めまいやふらつきがないか
・顔色が悪くないか
・吐血していないか

などを合わせて確認することです。

黒色便に加えて、めまい、冷や汗、顔面蒼白、意識状態の変化、吐血などがある場合は、119番通報を検討してください。

「血の色だけ」で緊急度を決めない

ここまで3種類の便について説明しましたが、最も重要なのは「色だけで判断しない」ことです。

鮮血便でも大量出血になることがあります。

黒色便でも、出血量や全身状態によって緊急度は異なります。

血便が出たときは、

① 出血量と回数
② 血液や便の色
③ 腹痛の有無と程度
④ めまい・冷や汗・顔面蒼白の有無
⑤ 意識状態
⑥ 吐血の有無
⑦ 服用している薬

を確認してください。

そして何より、

「血便+全身状態の悪化」

がある場合は、便の色にかかわらず緊急性が高い可能性があります。

年齢・状況によって注意したい血便

血便の原因や緊急度は、年齢や持病、服用している薬によっても異なります。

特に、

・乳幼児
・高齢者
・抗凝固薬や抗血小板薬を服用している人

では、血便以外の症状にも注意が必要です。

子どもの血便|特に乳幼児は「普段との違い」に注意

子どもの血便には、便秘による裂肛(切れ痔)のような比較的よくみられる原因もあります。

一方で、乳幼児では腸重積症など、早急な診断・治療が必要な病気が隠れていることがあります。

子どもは自分の症状をうまく説明できないため、血便の色や量だけでなく、

・機嫌が極端に悪い
・突然激しく泣く
・泣いたあと一度落ち着き、再び激しく泣く
・ぐったりしている
・顔色が悪い
・嘔吐している
・お腹を痛がる
・食事や水分がとれない
・尿が極端に少ない

など、「いつもと違う様子」がないか確認することが重要です。

腸重積症

腸重積症とは、腸の一部が隣接する腸管の中へ入り込んでしまう病気です。

乳幼児に多くみられ、腸管の血流が障害されることがあるため、早期の診断と治療が重要です。

代表的な症状として、

・突然の腹痛や激しく泣く
・嘔吐
・血便や粘血便
・ぐったりする

などがあります。

血液と粘液が混じった便が「いちごジャム状」と表現されることもあります。

ただし、ここで非常に重要なのは、

「いちごジャム状の血便が出るまで待たない」

ということです。

腸重積症では、腹痛・嘔吐・血便などの典型的な症状が最初からすべてそろうとは限りません。

「一定の間隔で突然激しく泣く」

「しばらくすると落ち着くが、また激しく泣く」

「嘔吐を繰り返す」

「普段より明らかに元気がない」

といった症状がある場合には、血便が出ていなくても医療機関への受診を検討してください。

さらに、ぐったりして反応が悪い、顔色が著しく悪い、意識状態がおかしいなどの場合は、119番通報を検討してください。

感染性腸炎

細菌などによる感染性腸炎でも、子どもに血便がみられることがあります。

特に、

・強い腹痛
・頻回の下痢
・血便
・発熱
・嘔吐

などを伴う場合には注意が必要です。

腸管出血性大腸菌(O157など)による感染症では、激しい腹痛や水様性下痢、血便などがみられることがあります。

さらに一部では、溶血性尿毒症症候群(HUS)という重篤な合併症を起こすことがあります。

血便や下痢に加えて、

・尿が極端に少ない
・顔色が悪い
・ぐったりしている
・意識状態がおかしい

などの変化がみられた場合は、速やかな医療機関への受診が必要です。

嘔吐を繰り返している場合は、脱水や意識状態など、嘔吐に伴う危険な症状にも注意が必要です。

嘔吐で救急車を呼ぶべき?119番する症状と自宅で様子を見られる目安

便秘・裂肛(切れ痔)

子どもでも、硬い便によって肛門が傷つき、少量の鮮血が付くことがあります。

典型的には、

・硬い便を出した
・排便時に痛がった
・便の表面に少量の鮮血が付いた
・トイレットペーパーに少量の血が付いた

といった状態です。

ただし、血便を繰り返している、出血量が増えている、腹痛や発熱などを伴っている場合には、「切れ痔だろう」と自己判断せず受診してください。

高齢者の血便|「痛くないから大丈夫」とは限らない

高齢者では、血便の原因として大腸憩室出血や虚血性大腸炎、大腸の腫瘍など、さまざまな病気が考えられます。

特に注意したいのが、

「腹痛がないのに血便が出た」

というケースです。

大腸憩室出血などでは、強い腹痛を伴わず突然血便がみられることがあります。

そのため、

「お腹が痛くないから大丈夫」

とは判断できません。

また、高齢者では、心臓病や脳血管疾患などの治療のため、抗凝固薬や抗血小板薬を含む複数の薬を服用していることがあります。

血便が出た場合には、

・出血量と回数
・便の色
・めまいやふらつき
・冷や汗
・顔色
・意識状態
・腹痛
・普段服用している薬

を確認してください。

抗凝固薬・抗血小板薬を服用している人

心房細動、脳梗塞、心筋梗塞などの治療や予防のため、

・抗凝固薬
・抗血小板薬

を服用している人がいます。

これらは血栓ができるのを防ぐ重要な薬ですが、消化管出血が起きた場合には出血が持続したり、重症化したりする可能性があります。

血便が出た際には、薬の名前が分かるように、

・お薬手帳
・薬の現物
・服薬情報が確認できるアプリ

などを準備しておくと、救急隊や医療機関へ正確な情報を伝えやすくなります。

重要なのは、血便が出たからといって薬を自己判断で中止しないことです。

抗凝固薬や抗血小板薬を突然中止すると、本来予防していた血栓症の危険性が高まる可能性があります。

中止や再開については、必ず医師の判断を受けてください。

血便で病院を受診するときに伝えること

血便で受診した場合、医師は「血が出た」という情報だけでなく、出血の状態や随伴症状などから原因を絞り込んでいきます。

可能であれば、次の情報を整理しておきましょう。

いつから血便が出ているか

「今日の朝から」

「3日前から毎日」

「1週間前に一度出て、今日また出た」

など、最初に血便を確認した時期を伝えます。

何回くらい出たか

1回だけなのか、何度も繰り返しているのかは重要な情報です。

時間とともに回数や出血量が増えている場合も伝えてください。

血液の色

・鮮やかな赤色
・暗い赤色
・赤黒い
・真っ黒

など、できる範囲で伝えます。

「赤ワインのようだった」

「真っ黒で粘り気があった」

など、具体的な表現も参考になります。

血液の混じり方

血液が、

・トイレットペーパーだけに付いた
・便の表面に付いていた
・便の中に混ざっていた
・血液や血の塊が出た
・便器の水が赤くなった

など、どのような状態だったかを伝えます。

血便以外の症状

特に、

・腹痛
・下痢
・発熱
・嘔吐
・吐血
・めまい
・ふらつき
・冷や汗
・動悸
・息苦しさ
・意識を失った

などの症状がないか確認してください。

持病と服用している薬

特に、

・抗凝固薬
・抗血小板薬
・痛み止め
・鉄剤

などを使用している場合は伝えましょう。

薬の名前を覚えていなくても、お薬手帳や薬そのものがあれば確認できます。

便の写真は診察の参考になることがある

血便は、医療機関を受診した時点ですでに流してしまっていることが多く、医療従事者が実際の便を確認できない場合があります。

安全に撮影できる状況であれば、スマートフォンで便の写真を残しておくと、

・便の色
・血液の量のおおよその印象
・血液と便の混ざり方
・黒色便かどうか

などを確認する参考になることがあります。

ただし、写真だけで原因疾患や出血量を確定できるわけではありません。

また、大量出血や意識状態の異常などがある場合は、写真を撮ることより119番通報や安全確保を優先してください。

血便が出たときに「やってはいけないこと」

血便を見ると、

「痔だと思うから少し様子を見よう」

「薬を飲めば治るだろう」

と考えてしまうことがあります。

しかし、自己判断によって受診が遅れることには注意が必要です。

「いつもの痔」と決めつける

痔がある人でも、大腸やその他の消化管から出血する病気を別に発症する可能性があります。

そのため、

「もともと痔がある=今回の血便も痔」

とは限りません。

特に、

・以前と出血の仕方が違う
・血便を繰り返している
・出血量が増えた
・便通の変化が続いている
・腹痛や体調不良を伴う

といった場合には、医療機関で原因を確認することが重要です。

市販の痔の薬だけで長期間様子を見る

痔の薬で症状が軽くなったとしても、血便の原因そのものが痔であるとは限りません。

血便を繰り返している場合は、市販薬だけで長期間様子を見るのではなく受診を検討してください。

抗凝固薬・抗血小板薬を自己判断で中止する

血便を見ると、

「血液をサラサラにする薬のせいではないか」

と考えて薬を中止したくなるかもしれません。

しかし、これらの薬は脳梗塞や心筋梗塞などを予防する目的で処方されていることがあります。

自己判断で中止せず、医師へ相談してください。

自分で車を運転して病院へ向かう

血便とともに、

・めまい
・ふらつき
・冷や汗
・強い動悸
・意識が遠のく感じ

などがある場合、自分で車を運転するのは危険です。

移動中に意識状態が悪化する可能性があります。

全身状態が悪い場合は、自分で運転せず119番通報を検討してください。

「検査があるかもしれない」と自己判断で極端な飲食制限をする

元気な人まで一律に、

「血便が出たら絶食」

「水分も飲んではいけない」

とする必要はありません。

必要な検査や処置、飲食制限は、症状や病態によって異なります。

一方、大量出血や激しい腹痛などで緊急受診する場合には、検査や処置が必要になる可能性があります。

このような場合は、医療機関や救急隊から飲食について指示を受けた場合、その指示に従ってください。

特に意識状態が悪い人や、嘔吐を繰り返している人へ無理に飲食させないようにしてください。

「血便=必ず絶食」と自己判断するのではなく、その人の状態と医療従事者の指示に合わせることが大切です。

血便で病院を受診すると、どんな検査をする?

血便で医療機関を受診した場合、いきなり全員が内視鏡検査を受けるわけではありません。

医師はまず、

・血圧
・脈拍
・呼吸状態
・意識状態
・顔色
・腹痛の有無
・出血の量や回数
・便の色
・服用している薬
・これまでの病気

などを確認します。

特に重要なのは、消化管からの出血によって全身の循環状態が悪化していないかを確認することです。

検査の内容や順番は、出血量、全身状態、疑われる病気などによって異なります。

問診・診察

まず、

「いつから血便が出ているのか」

「何回くらい出たのか」

「どのような色だったのか」

「腹痛や下痢はあるのか」

「めまいや意識消失はなかったか」

などを確認します。

腹部の診察に加えて、必要に応じて肛門や直腸の診察が行われることもあります。

直腸指診では、肛門から指を入れて、直腸内の血液の有無や腫瘤などを確認することがあります。

ただし、直腸指診だけですべての出血原因が分かるわけではありません。

血液検査

血液検査では、

・ヘモグロビンなどによる貧血の評価
・炎症反応
・血小板
・血液凝固に関する項目
・腎機能
・肝機能

などが、病状に応じて確認されます。

ただし、急性の出血では、発症直後のヘモグロビン値だけで実際の出血量を正確に判断できないことがあります。

そのため、血液検査の数字だけではなく、血圧、脈拍、意識状態、出血の経過などを合わせて評価します。

③ CT検査

出血の状況や腹痛の有無などによっては、CT検査が行われることがあります。

造影CTでは、消化管のどこから出血している可能性があるのかを調べたり、腸管の炎症や血流障害などを評価したりすることがあります。

どの検査を最初に行うかは、患者さんの状態によって異なります。

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

黒色便や吐血などがあり、食道・胃・十二指腸からの出血が疑われる場合には、上部消化管内視鏡検査が検討されます。

内視鏡では出血源を直接確認でき、病変によってはその場で止血処置を行うこともできます。

例えば、

・クリップによる止血
・薬剤を用いた処置
・熱凝固などによる止血

などが行われることがあります。

ただし、

「黒色便が出たら必ず胃カメラ」

という意味ではありません。

患者さんの全身状態や出血状況などを評価したうえで、医師が必要な検査を判断します。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸からの出血が疑われる場合には、下部消化管内視鏡検査が行われることがあります。

大腸の中を直接観察することで、

・大腸憩室
・大腸がん
・大腸ポリープ
・炎症性腸疾患
・その他の出血源

などを確認します。

出血源が確認できた場合には、病態に応じて内視鏡による止血処置が行われることもあります。

ただし、鮮血便だから必ず大腸カメラを最初に行うとは限りません。

大量出血などでは、全身状態を安定させる処置やCTなどが優先される場合もあります。

血便の治療は「原因」と「重症度」で変わる

血便そのものが病名ではありません。

治療は、何が原因で出血しているのかによって大きく異なります。

例えば、

・裂肛や痔核への治療
・感染性腸炎への治療
・大腸憩室出血などに対する内視鏡的止血
・消化性潰瘍などに対する内視鏡的止血や薬物治療
・炎症性腸疾患への治療
・腫瘍に対する治療

などがあります。

大量出血によって循環状態が悪化している場合には、点滴などによる循環管理や、必要に応じて輸血などが行われることもあります。

内視鏡で止血が困難な場合などには、カテーテルを用いて出血している血管を塞ぐ治療や、外科的治療が検討されることもあります。

「血便を止める薬を飲めば終わり」というものではなく、出血の原因を確認し、その原因に応じた治療を行うことが重要です。

血便を予防するためにできること

すべての血便を生活習慣だけで予防できるわけではありません。

大腸がん、炎症性腸疾患、大腸憩室出血など、日常生活だけでは防ぐことが難しい病気もあります。

そのため、

「食生活を改善すれば血便を防げる」

と考えるのは適切ではありません。

一方で、便秘や硬い便による裂肛、痔の悪化を防ぐという意味では、日頃の排便習慣を整えることが役立つ場合があります。

便秘を防ぐ

便秘によって硬い便が続くと、排便時に肛門へ負担がかかり、裂肛などの原因になることがあります。

日常生活では、

・適切な水分摂取
・食物繊維を含むバランスのよい食事
・適度な運動
・便意を我慢しすぎない

などを心がけます。

ただし、持病などによって水分や食事の制限を受けている人は、主治医の指示を優先してください。

長時間いきみ続けない

排便時に強くいきみ続けたり、長時間トイレに座り続けたりすると、肛門周囲へ負担がかかります。

排便がうまくいかない場合に、無理に長時間いきみ続けないことも大切です。

40歳以上は大腸がん検診も忘れずに

血便とは別に、40歳以上では大腸がん検診について知っておくことも重要です。

日本では、大腸がん検診として40歳以上を対象に、便潜血検査を年1回行うことが推奨されています。

便潜血検査は、肉眼では分からない便中の血液を調べる検査です。

大腸がんなどを早期に発見するための重要な検診の一つです。

ただし、ここで注意してください。

「すでに目で見える血便が出ている人」は、症状のない人を対象とした検診だけで済ませるのではなく、医療機関へ相談することが重要です。

また、

「40歳を過ぎたら全員が大腸カメラを受けなければならない」

という意味でもありません。

大腸内視鏡検査が必要かどうかは、症状、便潜血検査の結果、家族歴などを踏まえて医師が判断します。

血便を繰り返すなら「痔だろう」で終わらせない

血便でよくある自己判断の一つが、

「自分は痔があるから、今回も痔だろう」

というものです。

確かに、痔核や裂肛は血便・肛門出血の原因になります。

しかし、痔がある人が大腸の病気を発症しないわけではありません。

特に、

・血便を何度も繰り返す
・以前より出血量が増えている
・血液が便の中に混ざっている
・便通の変化が続いている
・腹痛や下痢などを伴っている
・体調の変化がある

といった場合には、一度医療機関で原因を確認することが大切です。

「痔がある」という事実だけで、血便の原因を決めつけないようにしてください。

まとめ|血便で重要なのは「色」だけではなく全身状態

血便が出ると、便器の中の血液を見て驚くと思います。

しかし、救急車を呼ぶべきか判断するときに最も重要なのは、

「赤いか、黒いか」

だけではありません。

出血量、出血の持続、腹痛、そして全身状態を確認することが重要です。

最後に、この記事のポイントを整理します。

血便+全身状態の悪化は119番通報を検討する

血便に加えて、

・立っていられないほどのめまい・ふらつき
・冷や汗
・顔面蒼白
・強い動悸や息苦しさ
・意識状態の変化
・意識消失
・激しい腹痛

などがある場合は、緊急性の高い消化管出血などの可能性があります。

119番通報を検討してください。

大量の血便や繰り返す出血にも注意する

便器が赤くなるほどの出血、血液や血の塊が何度も出る、短時間に血便を繰り返すといった場合は注意が必要です。

特に全身状態の悪化を伴う場合は、119番通報を検討してください。

黒色便・タール便も消化管出血のサインになる

真っ黒で粘り気のある便は、食道・胃・十二指腸などからの出血でみられることがあります。

鉄剤などによって便が黒くなる場合もありますが、原因が分からない黒色便を自己判断で放置しないでください。

特にめまい、冷や汗、顔面蒼白、吐血などを伴う場合は緊急性が高い可能性があります。

鮮血だからといって「痔」と決めつけない

裂肛や痔核では鮮やかな赤い血がみられることがあります。

しかし、大腸や直腸からの出血でも鮮血便になる場合があります。

血便を繰り返す場合は医療機関へ相談してください。

子どもは血便が出る前の症状にも注意する

乳幼児の腸重積症では、血便が最初からみられるとは限りません。

突然激しく泣くことを繰り返す、嘔吐する、ぐったりするなど、普段と明らかに違う状態があれば早めの受診が重要です。

血便を写真に残すことが診察の参考になる場合がある

安全に撮影できる状況であれば、便の色や血液の混じり方が分かる写真は診察時の参考になることがあります。

ただし、写真撮影のために119番通報や受診を遅らせないでください。

血便は、痔など比較的緊急性の低い原因から、消化管からの大量出血など緊急性の高い病態まで幅広い原因で起こります。

だからこそ、

「血が出た=救急車」

でも、

「鮮血=痔だから大丈夫」

でもありません。

血便を見たときは、

「どのくらい出ているか」

「繰り返しているか」

「腹痛はあるか」

「めまい・冷や汗・顔色不良・意識状態の変化はないか」

を確認してください。

血便とともに全身状態が悪化している場合は、119番通報を検討してください。

血便と同じように、突然「血が出た」ときに救急車を呼ぶべきか迷いやすい症状が血尿です。

血尿が出たら救急車?119番する危険な症状と病院を受診する目安

参考文献・資料

本記事は、以下の公的機関・医学系学会が公開する資料・診療ガイドライン等を参考に、一般の方が救急要請や受診の必要性を判断する際の参考となるよう構成しています。診断や治療は個々の状態によって異なるため、実際の対応は医師・救急隊などの指示を優先してください。

1. 消防庁「救急搬送における重症度・緊急度判断基準等に関する検討資料(消化管出血)」
消化管出血の急変、大量出血、ショック症状、腹壁緊張など、救急時の緊急度判断の参考。

2. 日本消化器内視鏡学会「ガイドライン・提言」
非静脈瘤性上部消化管出血における内視鏡診療ガイドライン(第2版)など、消化管出血の内視鏡診療の参考。

3. 日本消化器内視鏡学会「急性下部消化管出血の内視鏡診療に直結するエビデンスを創出する研究会」
急性血便・下部消化管出血の初期評価、再出血リスク、CT・内視鏡診療などの参考。

4. 日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン」
出血性胃潰瘍・十二指腸潰瘍など、上部消化管出血の原因・治療に関する参考。

5. 厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」
O157などによる激しい腹痛、水様性下痢、血便、HUSの症状や受診に関する参考。

6. 厚生労働省「大腸がん検診」
40歳以上を対象とする年1回の便潜血検査など、大腸がん検診に関する参考。

7. 日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン」
潰瘍性大腸炎・クローン病の症状、診断、治療に関する参考。

※参考資料は記事作成・医学的確認のために参照したものです。本記事は一般向けの情報提供を目的としており、個別の診断・治療を代替するものではありません。