「急に右手だけしびれる」
「顔の左側がピリピリして感覚が変」
「片足だけ力が入りにくい」
こうした症状が突然出たとき、多くの人がこう思います。
「ちょっと様子を見よう」
「疲れのせいかな」
「寝違えただけかもしれない」
しかし、“片側だけのしびれ” は、場合によっては 命や後遺症に直結する危険なサイン です。
救急現場では、「もっと早く呼んでくれれば…」というケースを何度も見てきました。
この記事では、
救急隊の視点 から
- 片側だけのしびれが危険な理由
- すぐ救急車を呼ぶべき症状
- 様子見してよいケースとの違い
- 119番通報時に伝えてほしいポイント
- 家族が気づくべきサイン
を、専門用語を使いすぎず、一般の方にもわかるように 解説します。
片側のしびれの原因として最も多いのが「脳梗塞」です。
脳梗塞は症状が軽く見えても、時間とともに急激に悪化することがあります。
発症の仕組みや初期症状、治療の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 脳梗塞とは?症状・原因・救急要請の判断を救急隊が解説
https://tetsujurofire.com/2025/12/09/cerebral-infarction/
「片側だけのしびれ」が特に危険な理由

まず大切なのは、
しびれが“片側だけ”に出ているかどうか です。
なぜ「片側」だと危険なのか?
人の脳は、左右で役割が分かれています。
- 右の脳 → 左半身をコントロール
- 左の脳 → 右半身をコントロール
そのため、
- 右手・右足・右顔面だけ
- 左手・左足・左顔面だけ
といった 体の半分に偏った症状 は、
脳のトラブル(特に脳卒中) を強く疑うサインになります。
救急隊が現場で最も警戒する訴えの一つが、
「急に体の片側がおかしくなった」 という言葉です。
代表的な原因:脳卒中(脳梗塞・脳出血)
脳卒中とは?
脳卒中は大きく分けて3種類あります。
- 脳梗塞:血管が詰まる
- 脳出血:血管が破れる
- くも膜下出血:動脈瘤などが破れる
このうち、片側のしびれで始まることが多い のが脳梗塞・脳出血です。
脳梗塞の特徴
- 高齢者に多い
- 高血圧・糖尿病・心房細動がある人は要注意
- 朝起きたら症状が出ていることも多い
脳梗塞は、痛みがないことも多い ため、
「しびれているだけ」と軽く考えられがちです。
しかし実際には、
- 数時間以内に治療できれば後遺症を防げる
- 時間が経つほど脳細胞は死んでいく
という、時間との勝負の病気 です。
救急隊が即「脳卒中疑い」と判断する症状
次の症状が 一つでも当てはまれば要注意 です。
① 顔の左右差がある
- 笑ったときに片側だけ口角が下がる
- 「イー」と言うと顔が歪む
これは 顔面神経麻痺 の可能性があります。
② 片腕・片脚だけ力が入らない
- 物を落とす
- ペットボトルのフタが開けられない
- 立ち上がると片脚に力が入らない
救急隊は、両腕を前に出してもらうテスト を行います。
片方だけ下がる場合、脳卒中を強く疑います。
③ 片側だけしびれ・感覚が鈍い
- 触られても感覚が違う
- ピリピリ、ジンジンする
- 正座後のしびれとは明らかに違う
「左右で感覚が違う」 という訴えは非常に重要です。
④ ろれつが回らない・言葉が出ない
- 言いたい言葉が出てこない
- 言葉がはっきりしない
- 人の話が理解できない
本人は気づいていなくても、
周囲が違和感に気づくことが多い症状 です。
⑤ 突然発症した
- 数分〜数時間で急に出現
- 何の前触れもなかった
「突然」はキーワードです。
徐々にではなく、急に 起こる症状は危険度が高いです。
「しびれだけなら大丈夫」は危険な誤解
次世代フィットネスバンドVRTX現場で本当に多いのが、
「しびれだけだから様子を見ていた」
というケースです。
実際の現場でよくある話
- 朝、片手がしびれていた
- 昼になっても治らない
- 夜になって言葉が出なくなった
こうして 数時間〜半日遅れて通報 されることがあります。
しかし脳梗塞の治療には、
- 発症から 4.5時間以内 など
- 厳しい時間制限
がある治療も存在します。
迷ったら早めに救急車
これが、救急隊として一番伝えたいことです。
「救急車を呼ぶほどなのか分からない」
そう感じて通報をためらう方は少なくありません。
実際に救急隊が現場で「これだけは伝えてほしい」と感じるポイントを、別の記事でまとめています。
👉 救急隊が本音で教える|119番通報で本当に伝えてほしい5つのこと
救急隊が本音で教える 119番通報で「本当に」伝えてほしい5つのこと — TETSU十郎/救急救命士/防災士
様子を見てもよい「しびれ」との違い

もちろん、すべてのしびれが救急ではありません。
ポイントは 左右差と発症の仕方 です。
比較表(目安)
| 危険なしが多い | 危険な可能性 |
| 両手両足が同時にしびれる | 片側だけ |
| 正座・寝姿勢後 | 突然発症 |
| 数分で改善 | 改善しない |
| 首や腰を動かすと変化 | 動かしても変わらない |
※迷ったら「危険側」で判断してください。
家族が気づくべきサイン(本人は気づかない)
脳卒中では、本人が異常に気づかない ことも多いです。
家族や周囲の人が気づくポイントは、
- 受け答えが遅い
- 話がかみ合わない
- 表情が左右で違う
- 歩き方がおかしい
「なんか変だな」と感じたら、
遠慮せず救急車を呼んでください。
119番通報で伝えてほしいこと
通報時は、次の点を落ち着いて伝えてください。
- いつから症状が出たか(時刻)
- どこが、どちら側がしびれるか
- 言葉が出にくい・力が入らないなどの有無
- 本人の年齢
- 持病(高血圧・心臓病など)
特に 「何時頃から」 はとても重要です。
「呼んでよかった」と思ってほしい
救急隊は、
- 軽症だった
- 結果的に大きな病気でなかった
という理由で、
「呼ばれて困ることは一切ありません」。
むしろ、
「呼ぶのが遅れた」
ことの方が、
本人・家族・医療者すべてにとってつらい結果になります。
まとめ|片側のしびれは“体からのSOS”

最後に、大切なポイントをもう一度。
- 片側だけのしびれは要注意
- 突然発症・左右差は危険サイン
- 迷ったら救急車
- 早ければ後遺症を防げる
あなたや、あなたの大切な人のために、
この知識を「覚えておくだけ」でも意味があります。
ぜひ、家族や周囲の人とも共有してください。
本記事の内容は、救急現場での経験と、厚生労働省・日本脳卒中学会などの公的情報をもとに作成しています。
症状に不安がある場合は、自己判断せず、早めに医療機関や救急相談窓口に相談してください。
脳卒中に限らず、急病や事故は「家族がどう動くか」で結果が大きく変わります。
救急隊が到着するまでに、家族ができる行動をまとめた記事も参考にしてください。
👉 救急隊が到着するまでに家族がやってほしいこと【保存版】
救急隊が到着するまでに、家族がやってほしいこと — TETSU十郎/救急救命士/防災士
参考URL
■ 厚生労働省|脳卒中に関する情報
脳卒中の基礎知識・症状・予防について
👉 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html
■ 日本脳卒中協会
一般向けに非常に分かりやすい解説
👉 https://www.jsa-web.org/
■ 日本脳卒中学会|脳卒中とは
医学的に正確で信頼性が高い
👉 https://www.jsts.gr.jp/
■ 総務省消防庁|救急車の適正利用
「迷ったら相談・通報してよい」根拠になる
👉 https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate_use/
■ FAST(脳卒中の早期発見)について
顔・腕・言葉・時間の考え方
👉 https://www.stroke.or.jp/


