救急車を呼ぶ判断基準を救急現場19年の視点で徹底解説
はじめに|その一言が、すべての始まりになる
夜中。
家の中は静かで、テレビも消え、家族は眠っている。
そんな時間に、親が突然こう言ったらどうしますか。
「なんだか……胸が苦しい」
救急車を呼ぶべきか。
それとも、少し様子を見てもいいのか。
実際に多くの人が、
「大げさかもしれない」
「救急車を呼ぶほどではないかも」
と迷います。
しかし、救急現場ではこの“迷いの時間”が命を左右する場面を、何度も目にしてきました。
この記事では、
医療の専門知識がないご家族でも、その場で判断できる基準を、
できるだけわかりやすく、順を追って解説します。
📘 いざというときの救急・応急手当ガイド
夜中や休日など、すぐに医療機関へ相談できない場面で、
「救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいのか」を
一般の方向けにわかりやすく解説している一冊です。
専門用語が少なく、イラストも多いため、
家族で事前に目を通しておくことで、
いざというときの判断材料になります。
🌡 非接触型 体温計(夜間・救急時対応)
夜中に体調が急変した際、
起こさず・触れずに体温を確認できる体温計です。
胸の苦しさに加えて、
発熱・冷や汗・体温低下がないかを把握することで、
119番通報時の情報整理にも役立ちます。
🫁 パルスオキシメーター(血中酸素濃度測定)
息苦しさや呼吸の異変があるときに、
血中酸素濃度(SpO₂)を数値で確認できる機器です。
高齢の家族がいる家庭では、
状態を客観的に把握する補助情報として役立ちます。
ただし、数値に関わらず苦しさがある場合は、
迷わず医療機関や救急要請を優先してください。
※本記事で紹介している書籍・物品は、
診断や治療を目的としたものではありません。
胸の苦しさや体調異変がある場合は、
使用の有無に関わらず、医療機関の受診や119番通報を優先してください。
結論|「胸が苦しい」は、基本的に救急要請してよい

最初に、はっきりお伝えします。
夜中に親が「胸が苦しい」と訴えた場合、
救急車を呼ぶ判断は“間違い”ではありません。
むしろ、
呼ばなかったことで後悔するケースのほうが、圧倒的に多いのが現実です。
胸の苦しさ以外にも、
突然あらわれる危険な症状はいくつかあります。
片側のしびれや力が入りにくいときに考えるべき対応については、
こちらの記事で詳しく解説しています。
▶︎ 突然「片側だけ」しびれる…救急車を呼ぶべき危険サインを救急隊が解説 — TETSU十郎/救急救命士/防災士
なぜ「胸の苦しさ」は軽く考えてはいけないのか
胸の中には、次のような生命維持に直結する臓器があります。
- 心臓
- 大動脈などの大血管
- 肺
これらのどこかに異常が起きると、
短時間で命に関わる状態になることがあります。
救急現場でよく遭遇するのは、次の病気です。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 大動脈解離
- 肺塞栓症
これらに共通する特徴があります。
最初の症状が、意外なほど軽いことがある
「少し苦しいだけ」
「我慢できる程度」
この段階で様子を見てしまい、
数時間後に状態が急変するケースは珍しくありません。
夜中に症状が出ること自体が危険サイン
「昼間なら様子を見るのに、夜中だと不安になる」
これは感覚的に正しいです。
理由は単純です。
- 夜中は体が安静状態
- 活動していないのに症状が出た
→ 身体の内側で異常が起きている可能性が高い
特に、
睡眠中に目が覚めるほ「今すぐ救急車を呼ぶべきか迷う」
そんなときに家族がやるべき行動を、
救急要請後の流れも含めてまとめた記事があります。
▶︎ 救急隊が到着するまでに、家族がやってほしいこと — TETSU十郎/救急救命士/防災士
どの胸の苦しさは、注意が必要です。
【最重要】今すぐ119番を考える判断基準
ここからは、
その場でチェックできる具体的なポイントを解説します。
次の項目のうち、
1つでも当てはまれば、迷わず119番を検討してください。
📘 いざというときの救急・応急手当ガイド
夜中や休日など、すぐに医療機関へ相談できない場面で、
「救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいのか」を
一般の方向けにわかりやすく解説している一冊です。
専門用語が少なく、イラストも多いため、
家族で事前に目を通しておくことで、
いざというときの判断材料になります。
🌡 非接触型 体温計(夜間・救急時対応)
夜中に体調が急変した際、
起こさず・触れずに体温を確認できる体温計です。
胸の苦しさに加えて、
発熱・冷や汗・体温低下がないかを把握することで、
119番通報時の情報整理にも役立ちます。
🫁 パルスオキシメーター(血中酸素濃度測定)
息苦しさや呼吸の異変があるときに、
血中酸素濃度(SpO₂)を数値で確認できる機器です。
高齢の家族がいる家庭では、
状態を客観的に把握する補助情報として役立ちます。
ただし、数値に関わらず苦しさがある場合は、
迷わず医療機関や救急要請を優先してください。
※本記事で紹介している書籍・物品は、
診断や治療を目的としたものではありません。
胸の苦しさや体調異変がある場合は、
使用の有無に関わらず、医療機関の受診や119番通報を優先してください。
① 胸の苦しさが「初めて」または「いつもと違う」
- これまで経験したことがない
- 持病の症状と感覚が違う
救急現場では、
「いつもの症状だと思った」という言葉を何度も聞きます。
しかし、
“いつもと違う”と感じた時点で、別の病気の可能性があります。
② 冷や汗・吐き気・息苦しさを伴っている
次の症状があれば、要注意です。
- 冷や汗が出る
- 吐き気、嘔吐
- 呼吸が苦しい
- 顔色が悪い
これらは、
心臓に強い負担がかかっているサインであることがあります。
③ 痛みや違和感が10分以上続いている
- しばらく休んでも消えない
- 良くなったり悪くなったりを繰り返す
心筋梗塞や狭心症では、
痛みが断続的に続くことがあります。
「一瞬よくなったから大丈夫」と判断するのは危険です。
④ 痛みが胸以外に広がる
- 左肩
- 左腕
- 首
- 背中
- あご
これらへの放散痛は、
心臓由来の症状として知られています。
⑤ 高齢、または持病がある
次に当てはまる場合、
症状が軽く見えても注意が必要です。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 喫煙歴
- 心臓病の既往
特に高齢者は、
強い痛みを感じにくいことがあります。
「様子を見る」はいつまで許されるのか

多くの人が迷うポイントです。
結論から言います。
夜中に起きて訴える胸の苦しさは、基本的に様子見しません。
理由は以下の通りです。
- 安静時に出現している
- 自然軽快する保証がない
- 悪化した場合、対応が遅れる
救急現場では、
「朝まで待てばよかったと思ったことは一度もない」
という家族の声を何度も聞いています。
救急車を呼ぶ前に家族がやるべきこと
119番をする前後で、
家族が気をつけるべきポイントをまとめます。
無理に動かさない
- トイレに行かせる
- 自分で車に乗せる
これらは、
心臓への負担を一気に増やす行為です。
食べ物・飲み物を与えない
- 水
- 食事
- 自己判断での薬
医療処置の妨げになる可能性があります。
落ち着いて119番に伝える
完璧でなくて大丈夫です。
- いつから
- どんな症状か
- 今どうなっているか
わかる範囲で伝えれば、
指令員が適切に対応してくれます。
「救急車を呼びすぎでは?」という不安について
よく聞かれる疑問です。
しかし、はっきり言えます。
救急車は「重症と確定した人」のためではありません。
「重症かもしれない人」のためのものです。
結果的に軽症だったとしても、
その判断は間違いではありません。
救急隊は、どういう視点で見ているのか
救急隊は、
「呼ばれた理由」ではなく
**「今、危険かどうか」**を見ています。
- 症状
- バイタルサイン
- 経過
それを評価するのが仕事です。
遠慮は必要ありません。
胸の苦しさだけでなく、
意識・呼吸・循環に関する異変は、
家族が迷いやすいポイントです。
教科書的な説明だけでなく、
現場での“考え方”を解説した記事もあります。
▶︎ 国家試験だけでは足りない?現場で「本当に差が出る」解剖生理の考え方 — TETSU十郎/救急救命士/防災士
よくある質問(Q&A)
Q. 痛みが一時的に治まったら大丈夫?
A. いいえ。
一時的に軽くなる病気もあります。評価は必要です。
Q. 夜中で病院が開いていない場合は?
A. そのための救急医療です。
迷わず119番してください。
Q. 本人が「大丈夫」と言っている場合は?
A. 本人の判断が正しいとは限りません。
家族の判断が重要です。
【ここだけ覚えて】
最後に、これだけは覚えてください。
- 夜中の「胸が苦しい」は軽視しない
- 初めて・いつもと違う → 119番
- 迷ったら呼んでいい
おわりに|その判断が、命を守る

この記事は、
救急現場で19年間、実際に起きた無数の事例をもとに書いています。
「呼びすぎだった」と後悔する人より、
「呼ばなかった」と後悔する人のほうが、
はるかに多い。
その現実を、
一人でも多くの人に知ってほしい。
あなたの判断が、
大切な家族の命を守ります。
このブログでは、
救急現場で実際に多かった「家族が迷った場面」を中心に、
一般の方にもわかりやすく解説しています。
命を守る判断をテーマにした他の記事も、
あわせて参考にしてください。
▶︎ 救急・防災に関する記事一覧
https://tetsujurofire.com/
🧠 参考リンク(胸痛・救急車判断)
✅ 「胸の痛み・胸の苦しさで救急要請が必要な症状」
- 英NHS(胸の痛みが治まらない/圧迫感・痛みが広がる・呼吸困難など、救急要請推奨)
👉 https://www.nhs.uk/symptoms/chest-pain/ nhs.uk - 英語圏の救急ガイド:突然の胸痛は救急要請のサイン(持続・悪化・関連症状あり)
👉 https://www.healthdirect.gov.au/chest-pain ヘルスダイレクト - Mayoclinic(急な胸痛・説明のつかない胸痛は911要請)
👉 https://www.mayoclinic.org/first-aid/first-aid-chest-pain/basics/art-20056705 Mayo Clinic - アメリカ心臓協会:胸痛・呼吸困難・意識低下などで緊急通報
👉 https://www.heart.org/en/health-topics/house-calls/when-to-call-911 www.heart.org
📘 いざというときの救急・応急手当ガイド
夜中や休日など、すぐに医療機関へ相談できない場面で、
「救急車を呼ぶべきか」「様子を見てよいのか」を
一般の方向けにわかりやすく解説している一冊です。
専門用語が少なく、イラストも多いため、
家族で事前に目を通しておくことで、
いざというときの判断材料になります。
🌡 非接触型 体温計(夜間・救急時対応)
夜中に体調が急変した際、
起こさず・触れずに体温を確認できる体温計です。
胸の苦しさに加えて、
発熱・冷や汗・体温低下がないかを把握することで、
119番通報時の情報整理にも役立ちます。
🫁 パルスオキシメーター(血中酸素濃度測定)
息苦しさや呼吸の異変があるときに、
血中酸素濃度(SpO₂)を数値で確認できる機器です。
高齢の家族がいる家庭では、
状態を客観的に把握する補助情報として役立ちます。
ただし、数値に関わらず苦しさがある場合は、
迷わず医療機関や救急要請を優先してください。
※本記事で紹介している書籍・物品は、
診断や治療を目的としたものではありません。
胸の苦しさや体調異変がある場合は、
使用の有無に関わらず、医療機関の受診や119番通報を優先してください。


