やけどをしたら、まず何をすればいい?
「熱湯が手にかかった。」
「フライパンに触れてしまった。」
「子どもがお茶をこぼしてしまった。」
やけど(熱傷)は、家庭内で起こりやすいけがの一つです。
特に小さなお子さんや高齢者では、軽いやけどと思っていても重症化することがあり、適切な応急処置が重要です。
一方で、
- 氷で冷やした方がいい?
- 水ぶくれは潰した方がいい?
- どのくらい冷やせばいい?
- 病院へ行くべき?
など、迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、救急救命士の視点から、
- やけどをした直後に行う応急処置
- 病院を受診する目安
- 119番を呼ぶべきケース
- やってはいけないこと
について、わかりやすく解説します。
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やけど(熱傷)とは?
やけど(熱傷)とは、熱や薬品、電気などによって皮膚やその下の組織が損傷した状態をいいます。
原因にはさまざまなものがあります。
- 熱湯
- お茶や味噌汁
- フライパン・鍋
- ストーブ
- アイロン
- 花火
- 蒸気
- 電気
- 薬品(酸・アルカリなど)
家庭内では、熱い飲み物や熱湯によるやけどが特に多く、小さなお子さんではテーブルクロスを引っ張って熱いものをこぼしてしまう事故も少なくありません。
やけどの深さによって重症度は異なる
やけどは、皮膚がどこまで損傷しているかによって重症度が異なります。
Ⅰ度熱傷(軽いやけど)
皮膚の表面だけが傷ついた状態です。
主な症状
- 赤くなる
- ヒリヒリ痛む
- 水ぶくれはできない
日焼けもⅠ度熱傷に含まれます。
Ⅱ度熱傷
皮膚の少し深い部分まで傷ついた状態です。
主な症状
- 水ぶくれができる
- 強い痛みがある
- 赤く腫れる
家庭で最も多いのがこのタイプです。
Ⅲ度熱傷
皮膚のさらに深い部分まで損傷した重症のやけどです。
主な症状
- 白色や黒色になる
- 皮膚が硬くなる
- 神経まで損傷すると痛みを感じにくくなる
重症熱傷の可能性があるため、速やかに医療機関での治療が必要です。
やけどをしたら最初に行うこと
やけどの応急処置で最も重要なのは、できるだけ早く流水で冷やすことです。
やけどは、熱源から離れた後もしばらく熱が皮膚の奥へ伝わり続けます。
そのため、早く冷やすことで皮膚へのダメージを軽減できる可能性があります。
流水で20分程度を目安に冷やす
やけどをしたら、できるだけ早く流水で冷やしましょう。
水道水程度の冷たい流水で、20分程度を目安に冷やすことが推奨されています。
流水が難しい場合は、水で濡らしたタオルを交換しながら冷やす方法もあります。
ただし、広範囲のやけどでは、冷やしすぎによる低体温にも注意が必要です。
衣服は無理に脱がせない
熱湯によるやけどでは、服の上から流水で冷やすことが基本です。
無理に衣服を脱がせると、
- 水ぶくれが破れる
- 皮膚まで一緒にはがれる
ことがあります。
衣服が皮膚に張り付いている場合は、無理に脱がせず、そのまま冷やして医療機関を受診しましょう。
アクセサリーは早めに外す
指輪や腕時計、ブレスレットなどは、腫れが強くなる前に外しておきましょう。
やけどによる腫れで外せなくなると、血流が悪くなる原因になることがあります。
救急救命士から伝えたいこと
救急現場では、「もっと早く冷やしていれば症状が軽く済んだかもしれない」と感じることがあります。
一方で、適切に流水で冷やしたうえで受診し、重症化を防げたケースも少なくありません。
やけどをしたら、まず流水で冷やす。
この基本を知っているだけでも、やけどによるダメージを減らせる可能性があります。
病院を受診する目安
やけどは、小さなものでも深さや部位によっては医療機関での治療が必要になります。
「少し赤くなっただけだから大丈夫」と自己判断せず、次のような場合は受診を検討しましょう。
水ぶくれができた
水ぶくれができている場合は、Ⅱ度熱傷の可能性があります。
水ぶくれには傷口を保護する役割があるため、自分で潰さないようにしましょう。
破れてしまうと細菌感染のリスクが高くなります。
顔・手・足・陰部・関節のやけど
次の部位は、やけどの範囲が小さくても受診をおすすめします。
- 顔
- 手
- 足
- 陰部
- 関節
これらの部位は日常生活への影響が大きく、適切な治療が必要になることがあります。
広い範囲をやけどした
やけどの範囲が広い場合は、体液が失われたり感染のリスクが高まったりします。
特に、
- 子ども
- 高齢者
- 持病のある方
では重症化しやすいため注意が必要です。
白色・黒色になっている
皮膚が
- 白っぽい
- 黒く焦げている
- 革のように硬い
場合は、深いやけど(Ⅲ度熱傷)の可能性があります。
見た目ほど痛みが強くないこともありますが、これは神経まで損傷しているためです。
早急に医療機関を受診してください。
痛みが強い、または数日たっても改善しない
痛みや赤みが強くなる場合や、数日たっても改善しない場合は感染している可能性もあります。
自己判断せず、医療機関を受診しましょう。

119番を呼ぶ目安
やけどの中には、救急車での搬送が必要となるケースもあります。
次のような場合は、迷わず119番へ通報してください。
呼吸が苦しい
火災や爆発などで受傷した場合は、煙や熱い空気を吸い込んだ可能性があります。
- 呼吸が苦しい
- 声がかすれる
- すすが口や鼻についている
などの症状がある場合は、気道熱傷の可能性も考えられるため緊急性が高い状態です。
広範囲のやけど
腕や脚だけでなく、
- 胸
- お腹
- 背中
など広い範囲をやけどした場合は、重症熱傷の可能性があります。
意識がおかしい
- 呼びかけへの反応が悪い
- ぐったりしている
- 意識を失っている
場合は、やけど以外の原因も含めて緊急の対応が必要です。
感電によるやけど
電気によるやけどは、見た目以上に体の内部が損傷していることがあります。
また、不整脈など命に関わる状態を引き起こすこともあるため、医療機関での評価が必要です。
やってはいけない応急処置
「昔からこうしていた」という方法が、現在では推奨されていないこともあります。
正しい知識を身につけておきましょう。
氷を直接当てる
氷を直接当てると、冷えすぎによって皮膚のダメージが悪化することがあります。
流水や水道水程度の冷たい水で冷やすようにしましょう。
保冷剤を直接当てる
保冷剤も非常に温度が低いため、凍傷を起こす可能性があります。
直接皮膚へ当てることは避けましょう。
水ぶくれを潰す
水ぶくれは傷口を守る役割があります。
針で刺したり、自分で潰したりすると感染の原因になります。
歯磨き粉・味噌・油などを塗る
昔からの民間療法として知られていますが、効果は確認されていません。
むしろ感染や診察の妨げになるため、何も塗らず流水で冷やしましょう。
子どものやけどで特に注意すること
子どもは大人より皮膚が薄いため、短時間でも深いやけどになりやすい特徴があります。
特に、
- 熱湯
- カップラーメン
- ポット
- 炊飯器の蒸気
- アイロン
などによる事故は家庭内で多く発生しています。
子どものやけどは、大人では軽く済むような熱さでも重症化することがあります。
迷った場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
救急救命士から伝えたいこと
救急現場では、「冷やして様子を見ていたら、水ぶくれが大きくなってしまった」「最初は軽いと思っていたが、翌日になって痛みが強くなった」というケースも少なくありません。
やけどは、受傷直後だけでなく、その後の経過も重要です。
応急処置をした後も、症状が悪化したり、不安がある場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。
やけどを予防するために家庭でできること
やけどは、日頃のちょっとした工夫で防げる事故も少なくありません。
特に小さなお子さんがいるご家庭では、「熱いものに触れさせない環境づくり」が大切です。
熱い飲み物や料理は子どもの手が届かない場所へ
子どもはテーブルクロスや炊飯器のコードを引っ張ったり、テーブルに手を伸ばしたりすることがあります。
次のようなものは、手の届かない場所へ置きましょう。
- 熱いお茶やコーヒー
- 味噌汁
- カップラーメン
- 鍋料理
- 電気ケトル
調理中は子どもを近づけない
料理中は、
- フライパン
- 鍋
- 油
- 蒸気
など、やけどの危険がたくさんあります。
抱っこをしながら調理することも、熱いものがこぼれてしまう危険があるため注意が必要です。
アイロンやストーブは使用後も注意
アイロンやヘアアイロン、ストーブは、電源を切った後もしばらく高温です。
十分に冷めるまでは、子どもの手が届かない場所に置きましょう。
花火やバーベキューでは目を離さない
夏場は花火やバーベキューによるやけども増えます。
子どもだけで花火を持たせず、大人が近くで見守るようにしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. やけどはどのくらい冷やせばいいですか?
流水で20分程度を目安に冷やしましょう。
できるだけ早く冷やし始めることで、皮膚へのダメージを軽減できる可能性があります。
Q. 氷や保冷剤で冷やしてもいいですか?
氷や保冷剤を直接当てることはおすすめできません。
冷えすぎによって皮膚を傷つけることがあるため、水道水程度の冷たい流水で冷やしましょう。
Q. 水ぶくれは潰した方が治りやすいですか?
いいえ。
水ぶくれは傷口を保護する役割があります。
自分で潰すと感染の原因になるため、そのままの状態で医療機関へ相談してください。
Q. 軟膏を塗った方がいいですか?
まずは流水で十分に冷やすことが最優先です。
自己判断で軟膏を塗る前に、やけどの深さや範囲を確認し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
Q. 救急車を呼ぶか迷ったら?
次のような場合は、119番への通報を検討してください。
- 広範囲のやけど
- 呼吸が苦しい
- 顔や首のやけど
- 感電によるやけど
- 意識がおかしい
判断に迷う場合は、一人で悩まず医療機関や地域の救急相談窓口へ相談しましょう。

まとめ
やけどは、家庭内で誰にでも起こり得る身近なけがです。
しかし、受傷直後の対応によって、その後の経過が変わることもあります。
この記事のポイントを振り返りましょう。
- やけどをしたら、できるだけ早く流水で20分程度を目安に冷やす
- 氷や保冷剤を直接当てない
- 水ぶくれは潰さない
- 顔・手・足・陰部・関節のやけどは受診を検討する
- 広範囲のやけどや呼吸が苦しい場合は119番へ通報する
- 子どもや高齢者は重症化しやすいため、早めの受診を心掛ける
やけどは、「少しくらいなら大丈夫」と自己判断してしまいがちなけがです。
一方で、適切な応急処置と早めの受診によって、重症化や後遺症を防げる可能性があります。
万が一のときに慌てないよう、ぜひ今回の記事の内容を覚えておいてください。
監修・執筆
この記事は、救急救命士としての知識と経験をもとに、熱傷診療ガイドラインや公的機関の情報を参考に作成しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。やけどの深さや範囲、受傷状況によって必要な治療は異なります。症状が重い場合や判断に迷う場合は、速やかに医療機関を受診、または119番へ通報してください。
【参考文献】
- 日本赤十字社「熱傷(やけど)」
- 応急手当、冷却方法、受診の目安など。
- Mindsガイドラインライブラリ「熱傷診療ガイドライン〔改訂第3版〕(日本熱傷学会)」
- 熱傷の重症度評価、初期対応、専門施設への搬送基準。
- Mindsガイドラインライブラリ「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―熱傷診療ガイドライン(第3版)」
- 日本皮膚科学会による最新の熱傷診療ガイドライン。
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